現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
▼ホームページ http://kyon55.in.coocan.jp/
【小学1年生】と【年長】ママのお役立ち情報を配信!
学校・まなび
年長 2018年9月19日の記事
来春の小学校入学に向けて、年長のうちにどんな準備をしておいたらいいのかは、ママたちの大きな関心事です。前回は、さまざまな「体験」が学びの基礎になることをお伝えしました。今回は、子どもの語彙を増やして国語力や言葉の理解力を高めるための「親子での会話」のポイントについて、元小学校の教員であり大学の客員准教授として活躍されている塩谷京子先生に教えていただきました。
先々に向けて、今のうちから少しでも子どもの語彙量を増やしたい、国語力を高めたいと思うママは多いものですが、何か対策はありますか。
「何より大切にしてほしいのが、子どもとの『会話』です。
小学校低学年くらいまでの年齢は耳が非常に良く、目から入る情報よりも耳から得ている情報量がはるかに多いことをご存じですか? まずは、子どもたちが日常生活で触れる言葉の数を増やしてあげることが大切です。言葉はすべての学びのおおもとになるもので、語彙が増えることによって、理解力が上がるからです。
私たちは、普段使っている会話の中でさまざまな言葉を省略しがちです。そこで、ただ『暑いね』と言うだけではなく、『今日はうだるような暑さだね』とどのような暑さなのかを表現するなど、意識的にママたちが使う言葉を増やしていってほしいと思います」(同)
あまり難しい言葉は使わない方がいいかなと思っていましたが、耳にすることで語彙量が増え、理解力が高まっていくのですね。意識してみます。
子どもから、わからない言葉の意味を質問されることも多いのですが、どう説明したらよいのか、いつも悩んでしまいます。
「極論を言えば、単語の意味を無理に説明する必要はありません。そのかわり、その言葉を文章の中で何回も使ってください。
たとえば、『見事』という言葉の意味を聞かれたとします。『ビックリするくらい完璧な様子』などと言い換えて説明するのも良いですが、そこで終わらず、文章の中に『見事』という言葉を入れて使ってみましょう。つまり、言葉自体の説明よりも、その言葉が入った文章を例としていくつか挙げることが効果的です。
『この絵の細かい模様は、とってもキレイだね。本当に見事だね』『テストで100点を取ったの? お見事!』というような例文を言ってみせることで、ただ単語を覚えるのではなく、使い方や背景まで理解できます」(同)
言葉を理解するというよりも、身に付くというイメージですね。
「それから、子どもが質問してきた言葉を、その後も意識的に使うこともおすすめです。スポーツニュースを見ていてサッカーのゴールシーンが流れたら、「わ! あのシュート見事だね!」といった具合です。すると、子どもは言葉の意味や使い方を自然と習得することができるでしょう」(同)
使い方が間違っている場合も多いのですが、そんなときはどう修正してあげたらよいでしょうか。
「子どもは新しい言葉、難しい言葉を使いたがるものですよね。もしも使い方が間違っていたら、『それは違うよ』と頭から否定するのではなく、『難しい言葉を知ってるね! こうやって使うといいよ』と正しい使い方を教えてあげるといいですね」(同)
例文を考えることで、ママの方も勉強になりますね!
さらに、「体験」が学びの基礎になるという点について前回お伝えしましたが、そこに言葉が結びつくことで、より子どもの大切な基礎力が養われていくのだとか。
「耳で聞き知った言葉は『体験』が加わることで初めて、イメージを持った言葉として使うことができます。
たとえば、『バケツをひっくり返したような雨』という表現はよく使われますが、『バケツ』という物の名前を知っていても、実際にバケツをひっくり返すとどのような勢いで水が出てくるのか、そしてどれくらい激しく降る雨のことを表現するのかは、体験したことがないとわかりませんよね。言葉として知っているだけでは、実際に使っていくことは難しいのです。
小学校に入り、知識が増えると、なぜ?どうして?という不思議や疑問も生じます。小さな頃は「なぜ」を具体的に言葉で表すのが難しかったものですが、さまざまな体験を通して言語化していけると、抱いた疑問をパパやママに質問することができ、解決につなげていけますよね。より理解も深まりますし、もっともっと疑問が膨らんでいくかもしれません。楽しみながら、学ぶ意欲も増していくでしょう。
そういった意味で、より多くの言葉に触れること、そしてたくさんの体験をすること、この2つが掛け合わさることが、就学後も子どもの学びの意欲の根底となっていくのだと思います」(同)
ちなみに、語彙力を高めるために、小学生になったら子ども用の国語辞典を買い与えて自分で調べる癖をつけさせたほうがいいかな?と考えていたのですが、「まずは耳からたくさんの言葉が入っていかないと、いきなり辞典は難しいでしょう」と塩谷先生。年少から小学校低学年の子どもたちは主に耳から語彙を習得するので、親や周りの大人たちが使う言葉や家庭内の会話こそが入学に向けての基礎力を身に付ける上でとても重要だということがわかりました。
次回は、基本的な生活習慣や集団ルールを身に付けるために大切なことについて、引き続き塩谷先生に教えていただきます。
(取材・執筆:水谷映美)
関連記事はこちら
★家庭でできる年長児の入学準備[その1]ひらがなの練習 前編
毎週木曜にメルマガ発信中!
ご登録はこちらから↓
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
▼ホームページ http://kyon55.in.coocan.jp/
『ママノート』ツイッターやっています!フォローいただけたら幸いです。