現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
▼ホームページ http://kyon55.in.coocan.jp/
【小学1年生】と【年長】ママのお役立ち情報を配信!
学校・まなび
年長 2018年9月12日の記事
年長の子どもを持つママたちにとって、「来年から小学生」と意識する機会が少しずつ増えてくるこの時期。そこで、小学校に入ったらどんなことをするのか、また入学までに準備しておきたいことについて、元小学校の教員であり、大学の客員准教授として活躍されている塩谷京子先生に全4回にわたり教えていただきました。第1回では、小学校でのさまざまな学びの基礎となる「体験」について、詳しくお伝えします。
幼稚園や保育園のときと違って、小学校では授業がありますし、集団生活のルールもしっかりと決められていると感じます。その分、子どもがうまく順応していけるか不安なママも多いと思うのですが…。
「幼稚園や保育園は、園によってカリキュラムも違いますし、方針もそれぞれですよね。もちろん子どもによって出来ることにも差があります。そんなさまざまな園から子どもたちを迎えるにあたって、小学校側も、子どもたちが学校生活を楽しく過ごせるような基盤をしっかり整えていますので、あまり不安に感じなくて大丈夫ですよ」(塩谷先生)
そう言ってもらえると安心です。具体的には、どのような工夫がされているのでしょうか?
「学習内容も、4月から夏休み前までにかけては、比較的ゆっくりと予定が組まれており、一気に勉強が進んでいくということはありません。また、『生活』といって、校庭でシャンボン玉を作って遊んだり、学校の中や校外を探検したりするなど、理科的な体験と社会科的な体験を双方含んで繋いでいくような内容の授業もあります。まずは学校になじめるよう、そして勉強することや小学校に行くのが楽しみになるような工夫がされているのです」(同)
子どもたちがなじめるように学校側が体制を整えてくれているとはいえ、授業についていけるよう早めに勉強の準備を始めたほうがいいのかな?と気になっているママも多いと思います。何か今から入学に向けて準備すべきことはありますか。
「実は、小学校の勉強は日々のたくさんの遊びの延長線上にあり、幼稚園や保育園で体験してきたことこそが、小学校に入ってからの学びの基礎になるのです。そこで、より多くの体験ができるようなきっかけづくりや環境づくりを、まずは整えてあげてほしいと思います」(同)
具体的には、どのようなことを意識すればいいでしょうか。
「子どもの好きなジャンルで、幅広い経験に触れさせてあげることです。
子どもが好きなこと、興味関心があるジャンルってありますよね。たとえば、電車が好きな子であれば、普段から駅や線路沿いまでお散歩をして電車を見に行くことが多いかもしれません。そこで次は、『電車の写真がたくさん載っている本を見に行こうか!』と図書館に誘ってみてはどうでしょうか。電車や新幹線を題材にした映画があれば映画館に行ってみる、また鉄道博物館などの施設に足を運んでみるのもいいですね。『電車』という子どもが興味を持っていることを軸足にすることで、無理なくより幅広い世界に触れさせることができます。
一方で、興味関心があることに、時間を気にせず思い切り没頭させてあげることもおすすめです。体験のバリエーションを増やすと同時に、好きなジャンルをとことん深めていくことも貴重な財産となっていきます」(同)
ほかにも、「その季節でしか味わえないことやイベント、お家でのお手伝い、友達との遊び、アウトドアなど、毎日の中でのさまざまな体験が、国語・算数・生活(理科・社会)・図工・家庭科・体育などあらゆる学習に興味を持つきっかけとなり、土台となっていきます。だからこそ、たくさんの体験を惜しまずさせてあげてほしいと思います」と塩谷先生。遊びを通して得た体験が小学校に入ってからの学習の基盤となるとわかれば、少しでもいろいろな体験をさせたい!と思えますね。
イベントや旅行などのお出かけを含め、できるだけたくさんの体験をさせたいとは思うものの、時間的に難しいという家庭もあると思います。そんなときは、どうしたらいいでしょうか?
「実際に体験できないことは、『疑似体験』をすることです。たとえば本を読む、読み聞かせをすることで、子どもたちはさまざまなことを疑似体験できます。本の中でなら、普段は行けない外国や宇宙、過去や未来にだって行けますよね。今後小学校の授業で出てくることや先生が話すことと、実際の体験もしくは疑似体験が結びつくと、より興味を持って学習に取り組めるのではないでしょうか。きっと、学びの楽しさへと繋がっていくことでしょう」(同)
さらに、「物語を読むことで、感情を疑似体験することもできます」と塩谷先生。たとえば、欲しかった物をプレゼントしてもらったときの「うれしい」、何かを成し遂げたときの「うれしい」、お友達を助けたときに「ありがとう」と言われて「うれしい」など、「うれしい」気持ちにもバリエーションがあるということを子どもは知ることができるのだとか。そう考えると、読み聞かせをすることが、これまで以上に意味がある大切なものだと感じ、よりたくさんの本を一緒に読みたいなと思えてきますね!
45分間もある小学校の授業時間、飽きずに机の前に座っていられるかも気になるところですが、「子どもは興味が持てることであれば、何分でも座って集中していられますよ」と塩谷先生。
「植物を育てる体験をしてきた子は、生活の授業に興味を示すでしょうし、物を組み立てることが好きで夢中になって取り組んだ経験がある子は、算数や図工の時間がより楽しく感じられるでしょう。机の前に座る練習をするのではなく、入学前からいろいろな体験をしておくことで、無理強いすることなく、学校での勉強が楽しめると思いますよ」(同)
小学校に入ると、宿題や学校の行事、さらには習い事などで一気に忙しくなりますが、年長のうちは、まだ比較的時間があります。何かを先取りで勉強しておくことよりも、積極的に多くの体験をさせることに意識を向けたいですね。次回は、子どもの語彙力を高めるための「親子の会話」について、引き続き塩谷先生に教えていただきます。
(取材・執筆:水谷映美)
関連記事はこちら
毎週木曜にメルマガ発信中!
ご登録はこちらから↓
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
▼ホームページ http://kyon55.in.coocan.jp/
『ママノート』ツイッターやっています!フォローいただけたら幸いです。