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生活・しつけ
小学1年生 2016年3月3日の記事
登園拒否が続く息子。入学してからが不安です
《きいて、教えて、舟山先生!》 社会的な生活を送るためのモデルが必要です
こんにちは、現役小学校教員の舟山由美子です。
今回は、“不登園”を続けている年長のお子さんの親御さんから、入学後の通学を心配するお便りが届いています。
Q. 7月から行事のとき以外、登園していません
今年の4月に新一年生男子を持つ母親です。
私は子どもが10ヶ月位から保育園に預けて働いています。主人が10年以上のうつ病なので働けたり、働けなかったりします。経済的に厳しいこともあり、私が平日フルタイムと休日にアルバイトをして生計を立てています。それでも足りないのですが。
子どもは3歳頃から登園拒否が多くなりました。主人がいるため2~3ヶ月程度なら休ませていました。しかし、年長組になり去年7月から休んでいます。その間に就学児健診で引っかかったので支援室に行ったり、市の保育課から連絡があったりしました。 保育園の先生と市の支援室の方の話だと、障害などはなく、知能検査もしなくてもいいかもと言われています。
家ではゲームしたり、テレビを見たり、好きな車のおもちゃで遊んだりしているようです。ただし、主人が面倒を見られるときと見られない時があるため、食事はあらかじめテーブルに置いておくと自分で食べています。
2月に遠足があったので、それに参加して3日間くらい園に行きました。休みを挟むと、今日は足が疲れているんだと言って、また行きませんでした。行かない理由は様々ですが、先生に見てもらうと友だちともうまくやっていると言います。来てしまえば楽しいようだということです。本人も今日はやっぱり楽しかった~と言っています。
生活リズムはきちんとつけています。お手伝いも率先してします。先生方には感受性が強く、先を見通して動く子だと言われました。お母さんを助けたいんだと思いますよと言ってくれました。
漠然と不安なのかなと思いますが、どう改善していけばいいのかわかりません。早く小学校に行きたいとランドセルをしょって行くのを楽しみしています。自分で帰れるというのが大きいみたいです。
アドバイスいただけると非常にありがたいです
ペンネームはなぼう
A.家庭以外の人とふれあい、社会の多様性を教えましょう
実質的に家計をお一人で支え、お子さんの成長を楽しみにがんばっておられるお母さんなのですね。それなのに、その大事なお子さんに就学前の「登園しぶり」の兆候があり、これが小学校に入ってからでも続くのでは……と思われています。
学校に行きたがらない子は、昔は「登校拒否」と言われ、今は「不登校」と呼ばれています。その児童・生徒への対応は、今と昔とでは変わっています。「登校拒否」と言われた時代は、その保護者(おもに母親)と担任だけが「何とかしよう」としていました。親が泣いている子を抱きかかえるようにして学校に連れて行ったり、担任が家まで迎えに行ったりしていました。
しかし、現在は様相が違います。担任だけがこの問題を抱え込まないように学校全体で取り組むように言われています。学校に配置されているスクールカウンセラーも対応するようになっています。学校の外に目を向けると、児童精神科医による診療もありますし、自治体やNPOの団体が、不登校児をサポートする《教室》を運営していることもあります。つまり、「不登校」という問題は『個人』の問題から『社会』の問題へと移行したのだと思います。それだけ、社会の中で「不登校」という課題を抱えている児童・生徒をフォローしなければならないという要請や必要性があるのだと私は思っています。
このように、ご相談者のお子さんの「登園しぶり」や「不登校」への不安は、お母さんだけが抱える問題ではないと思います。とはいうものの、では実際にはどうすればよいか分からず、結果的にお母さんだけが悩んでいるというのが実情です。
ここで、小学校の教員として「不登校」の児童を見てきて感じていることを述べてみますね。これはまったくの私見ですので、そのつもりでお読みいただきたいと思います。
不登校のお子さんといっても、その背景や課題もいろいろで、だからこそ『社会的』な問題になっているのだと思います。そんななかで、なんとなく共通しているなと私が感じている事柄があります。
1つめは、兄弟姉妹の中で1人が不登校だと、それが弟や妹に影響しやすいということです。これはなんとなくイメージできるでしょう。自分の兄や姉が学校に行かないでずっと家にいても(親とのあつれきがあるにしても)何とか生活しているのですから、自分も……と思ってしまうのかもしれません。
2つめは、お父さんの影が感じられないということです。お父さんが仕事でとても忙しい方であったり、お母さんがお父さんをあまりあてにしておられない、と感じることもあります。誤解のないように言っておきますが、お一人で子育てをしているお母さんをさしているのではなく、子どもの言動から『父性』の影響を感じられない、という意味です。『父性』というのは、社会の中で生きるときの方向性を示してくれる存在なのかもしれません(シングルマザーでも『父性』と『母性』を両方もって育てている方も多いです)。
この2つから感じるのは、「学校」という社会的な場所に、律儀に行かなければならないという必要感や空気感がその家庭にあるのか、ということなのだと思います。
ご相談者の場合はいかがでしょうか。お父さんが療養中とのことですが、お子さんは、生まれてからずっと、お家で過ごされているお父さんの姿を見て育っています。その分、お父さんにはいたわりの気持ちがあり、家計を支えるお母さんのがんばりを見て将来は助けたいと思っています。その気持ちは本当だと思います。ただ、そのためにはどうすればよいかという、目指すべき「モデル」像がないのではないでしょうか。
具体的なアドバイスとしては、その「モデル」となる第三者(家庭以外の人)と接する機会をあえて作るということです。ご相談者の親族や、お友だちの中で、そうした『父性』があると感じる方々(とそのご家族)と触れ合ってもらうのです。それは決して今のお父さんをないがしろにするということではなく、世間の広さや多様性を、子どもに教えるということです。そのうえで、今、自分が生きているのは、お父さんとお母さんがいるからだと感じてくれるようになったらうれしいですよね。
また「不登校」については、前述したように、児童精神医や心理カウンセラーのみなさんが、さまざまな臨床・研究をされておりますので、問題が深刻化しそうなときはぜひ専門家からの診療・助言・指導をお受けになってはいかがでしょうか。
毎日の生活を精一杯がんばっておられますが、物理的なことだけでなく、これからは子どもの心情面でも考えなければいけない時期になってくるということかもしれません。どうぞお身体には十分気をつけて子育てをなさってください。かならず助けてくれる方がおられると信じています。
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