塩谷 京子(しおや きょうこ)
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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生活・しつけ
年長 2018年3月14日の記事
小学校入学を控えて、いろいろな準備に追われているママは多いですよね。これまで、親子それぞれの気持ちの違いや心構え、子どもへの効果的な声がけについて紹介してきました。今回は、入学前の準備としてもっとも大切な「子どもの中の芽生えに気づき、それを伸ばす」ということについて、引き続き元小学校の教員であり、大学の客員准教授として活躍されている塩谷京子先生に話を聞きました。
小学校入学に向けて、入学グッズなどの物理的な準備、チェックリストに載っているしつけ的なことの確認に加えて、もうひとつとても大切なことがあるのだと塩谷先生。それは、子どもたちの中の「芽生え」に目を向け、それを伸ばせるように親から働きかけることなのだとか。これから生きていく上で大切になる芽生えの数々が、この時期の子どもたちの中にあるのだそうです。
「実は、『幼児期の終わりまでに育ってほしい姿』というテーマで、国が10個の項目を掲げています。
1.健康な心と体
2.自立心
3.協同性
4.道徳性・規範意識の芽生え
5.社会生活との関わり
6.思考力の芽生え
7.自然との関わり・生命尊重
8.数量や図形、文字等への関心・感覚
9.言葉による伝え合い
10.豊かな感性と表現
※文部科学省 教育課程部会 幼児教育部会 報告資料より抜粋
この10の芽生えが、すべて入学前の子どもたちの中にあるのです。その芽生えをママが見つけて、認めて、共感することで、子どもはさらにその力を伸ばそうとします。入学までにその意欲を引き出してあげることが、子どもにとって今後の学校生活を送っていくための基盤になります。また親にとっても、子どもの芽生えに改めて目を向けることで、一人ひとりの特徴や個性がよく見えてくるのです」(塩谷先生)
なるほど! …と思いつつ、10の項目を見ていても、正直言ってなんだかわかったような、わからないような印象です。そのように塩谷先生に伝えたところ、次のような言葉が返ってきました。
「項目だけ眺めていてもピンと来ないかもしれませんね。たとえば、最近のお子さんの様子で、何か気づいたことや感動したことはありましたか?」(同)
筆者には小学1年生の息子と、保育所に通う2人の娘がいます。パッと思いついたのは、仕事で夫が不在だった週末に3人を連れて公園に行った帰り、「ママ、一人で3人連れて大変だったでしょう? 公園に連れていってくれてありがとう」と息子が労いと感謝の言葉をかけてくれたことです。これまでも、「ありがとう」などの言葉はかけてくれる子でしたが、相手の状況を見て、心配したり感謝したりできるのだな、それを言葉で伝えられるようになったのだなとうれしく思いました。
「それはまさに、自分の思いを状況に合った言葉で伝えることで、相手と心を通わせられるようになる『言葉による伝え合い』の芽生えですね。ほかには、どのようなことが思い出されますか?」(同)
保育所の給食の時間、おかわりしたかったのに数が足りなくて泣いていたお友達に、娘が自分のおかずをわけてあげたと保育所の先生から聞きました。家ではきょうだい喧嘩ばかりしていて、自分の物を人に譲るなんて考えられなかったので、とても驚きました。
「相手の気持ちを理解して、我慢したり自分の気持ちを切り替えたりできる『協同性』の芽生えのひとつですね」(同)
また、何かできないことがあると、何回でも練習して、できるようになるまで努力していると保育所の先生からよく聞きます。そういえば、「運動会のかけっこで○○ちゃんに勝ちたいから、走る練習がしたい!」と公園で何回も練習したことを思い出しました。
「それは、自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせながら努力する『健康な心と体』でしょう。素晴らしいことですね。さあ、どうですか? お子さんの中に、先に挙げた10の芽生えが、いくつもあることに気づきますよね」(同)
たしかに! 子どもの言動を一つ一つ振り返ってみると、10の項目に当てはまっている!と発見することができました。
幼稚園や保育園では、10の芽生えを意識した活動が積極的に盛り込まれているのだそう。積み木やブロック、かるたなどの遊びによって「数量や図形、文字などへの関心・感覚」を、畑で作物を育てたり収穫したりすることで「自然との関わり・生命尊重」を、絵本や紙芝居、劇などを通じて「言葉による伝え合い」を、というように、これらのことを子どもたちの中に芽生えさせるように促しているのです。
そして、入学前に芽生えたことは、その後どんどんと育っていき、これから一個人として成長するために必要な力となっていくのだと塩谷先生。
「これらの芽生えは、意識して子どもを見ていないとなかなか気づけません。でも、日々の子どもたちの言動を10項目に当てはめて見ていくと、『うちの子、最近これをよくやりだしたわ!』といったように、子どもの成長を具体的に感じることができるのではないでしょうか。得意なことが何かも見えてくるので、我が子の特徴や長所がよくわかると思いますよ」(同)
これまで、どうしてもできないことに目が行きがちでしたが、筆者自身も10項目に照らし合わせて我が子を見てみたら、「こんなこともできるようになった!」という気づきや感動ばかりでした。まさに、意識しなければそのまま通り過ぎていた子どもの成長や長所に気づくことができました。
そして、子どもの芽生えに気づいたら、さらにそれを伸ばしていく働きかけが大切なのだとか。次回は、子どもの芽生えをさらに伸ばすための「共感」についてお伝えします。
(取材・執筆:水谷映美)
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塩谷 京子(しおや きょうこ)
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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