塩谷 京子(しおや きょうこ)
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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生活・しつけ
年長 2018年3月7日の記事
もうすぐ4月ですね。年長の子どもを持つ親にとっては、小学校入学を前に、大きな期待と一抹の不安や焦りも感じている時期ではないでしょうか。一方、子どもたちはどのような気持ちで入学を心待ちにしているのでしょう? 今回は、元小学校の教員であり、大学の客員准教授として活躍されている塩谷京子先生に、入学前の親と子それぞれの心情や過ごし方について教えていただきました。
いよいよ小学生になるということで、親にとっても子どもにとっても、ちょっと特別な気持ちが生まれてきている時期ですよね。まず、子どもたちの心の中はどのような気持ちでしょうか。
「もうすぐ小学生だ!というドキドキはもちろんあるでしょう。ただし、子どもは年齢が小さければ小さいほど、『今』を見ています。先のことは、あまり考えられません。小学生になるということは、幼稚園や保育園でも言われていますし、周囲からの声がけもあって、ある程度意識はしています。ただ、実際に経験していないことなので、未知の世界であり、イメージがわかないというのが本音でしょう。つまり、1年生になることを具体的に想像できないのです。
ですから、入学式後のことよりも、まずは目の前のこと、残りわずかとなった園での生活や卒園式に目を向けさせてほしいと思います」(塩谷先生)
卒園式が終わったら、その延長線上に入学式があるのだと塩谷先生。仲の良い友達や先生と離れるのが寂しいなど、「今」の子どもの気持ちを大切にしてほしいのだそう。
「残りの園生活を120%楽しんで過ごせるように、『卒園する前にやっておきたいことはないかな?』などと話をするのもいいですね。写真を撮ったり、お友達とたくさん遊んだりして過ごし、卒園式を迎えてほしいです。先に待っている小学校に意識を向けるのではなく、まずは園での一日一日を大切に、笑顔で過ごすことが第一。そして、卒園式後に『さあ、次は1年生だね!』と気持ちを切り替えても、十分日にちはあります。子どもの気持ちをそぞろにして、先へと気持ちを急く必要はありませんよ」(同)
一方で、ママたちはいろいろと「1年生に向けて準備をしなきゃ!」と焦ってしまいがちです。
「やはり、いろいろなところから入ってくる情報の多さが原因のひとつでしょう。園でも『1年生になるまでに、○○はできるようになっておいてください』などと言われますよね。また、小学校の一日入学などでも、そのような話を聞いてきたのではないでしょうか」(同)
確かに、学校から身につけておいてほしいチェックリストなどをもらいました。また、ママ友との会話からも、「○○ができないと、小学校生活になじめないらしいよ」というようなことが話題にのぼります。
「あまりにたくさんの情報があって、全部できないと小学校でうまくやっていけないのでは?と不安になってしまいますよね。でも、その不安を子どもに押し付けるのはどうでしょうか。子どもたちは、入学に向けて期待がどんどん膨らんでいます。ランドセル、新しいお友達、運動場も広い、勉強もがんばるんだ!とワクワクしているのに、親が不安になっている様子を耳で聞いたり、肌で感じたりすると、その気持ちがしぼんでしまいかねません。卒園式と入学式を最大の楽しみにしてあげてほしいと思います」(同)
では、親が抱える不安要素は、具体的にどう解決していけばいいでしょう?
「ママたちが入学前に子どもにできてほしいと願うことといえば、先生の話を座って聞ける、ひらがなが読み書きできる、給食は残さず食べる、自分の準備は自分でするなどでしょうか。これらは、『集団生活でみんなに迷惑をかけないようにする』ために、最低限必要なことですよね。
でも、成長のスピードには個人差があります。そもそも、子どもは同じように成長しません。小学校入学前の子どもなら、なおさらです。
たとえば、偏食が多い子にとって好き嫌いなく食べられるようにすることは、とても大変なことです。入学までに偏食をなくす!と思っても、なかなか難しいでしょう。でも、もともとなんでも食べる子にとっては、『給食を残さず食べる』ということは、まったく苦ではないことですよね。できることには、個人差があるのです」(同)
どうしても、他の子ができていてわが子ができないことばかりに目が行ってしまいます。成長のスピードや順番には個人差がある、と捉えればいいでしょうか。
「極端な話、今の時代はAI(人工知能)が助けてくれることもたくさんありますよね。たとえば掃除が苦手でも、ロボットが掃除してくれるでしょう? どんなことでもできるに越したことはないけれど、できないからといって目くじらを立てて注意し続けるのはどうかな?という話です。それよりも、できていることをより伸ばしていくことに目を向けてみてはどうでしょうか」(同)
そう考えると、気持ちがラクになります。入学前にクリアしなくてはいけない項目でできないものがあっても、そこまで気に病む必要はないのですね。
「そんな気持ちでママにはどんと構えていてほしいですね。まずは、卒園式に向けて『今』を全力で楽しむ! これが、小学校入学に向けた準備の第一段階です」(同)
卒園・入学前の心の中は親と子どもで少し違っていて、まずは目の前にある卒園式に向けて、悔いのないように毎日を過ごすことが大切だということがわかりました。次回は、入学前の子どもに向けた効果的な声がけの方法について伺います。
(取材・執筆:水谷映美)
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塩谷 京子(しおや きょうこ)
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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