特定非営利活動法人 こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ代表理事。東京学芸大学教育学部卒業後、サラリーマンを経て、2014年に特定非営利活動法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダを設立。保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭(美術)、高校教諭(美術)の資格を持つ。全国各地で開かれる映画「こども哲学~アーダコーダのじかん~」自主上映会にて親子から大人同士までを対象にした哲学対話を実践している。著書に「自信がもてる子が育つ こども哲学 ―"考える力"を自然に引き出す―」(ワニブックス)など。
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年長 2019年1月17日の記事
答えのないテーマについて子ども同士で対話をする「こども哲学」。前編では、特定非営利活動法人 こども哲学・おとな哲学 アーダコーダの設立者で代表理事を務める川辺洋平さんに、こども哲学が「聞く・話す・待つ」力を育てる活動であること、子どもによって好みのアプローチが違うことなどをお伺いしました。後編では引き続き川辺さんに、こども哲学の具体的なやり方を教えていただきます。
保育士の資格も持っている川辺さんは、子どもの発達段階に合わせて「こども哲学」の進め方を変えているそう。
「年長児は、お友達の話を聞く楽しみを感じられる子もいますが、やはりまだ自分の意見を聞いてもらいたいと思う子が多いです。自分のママと友達の何人かで話しているなら、基本的にはママに聞いてもらいたい。ただ、子ども同士での対話が楽しめる子どももいるので、ルールを厳密にせず、楽しんで対話することが大切です。例えば、ビスケットを食べながら『おいしいってどんなこと?』をテーマに話すなど、共通体験を元に子どもから出てきた疑問について話してみると、対話がより楽しいものになります」(川辺さん)
また、年長児向けには、十分に遊んでから対話に入るのがポイントだそう。
「私の場合は、まず体が温まってポカポカになるくらい遊びます。『この大人は自分の遊びに入った』という事実があると、子どもの方も『大人に付き合ってあげてもいいよ』という気分になるんです。たくさん遊んだ後に、『さっき赤い実を見つけた子がいたね。すっぱそうって言ったけど、かじったことがあるの?』といった問いかけから対話がスタートすることもあります」(同)
15分ほど対話をしたら、休憩を挟むのがめやす。話し足りずにしゃべり続ける子どもがいれば、そのまま続けることもあり、休憩をした子どもが興味深そうに戻ってきて、もう15分対話するというパターンもよくあるとか。
小学校に上がり、授業中に手を挙げて発言する習慣がつくと、対話の形もバリエーションをつけられるようになるとのこと。
「コミュニティボールというものを使って、ボールを持っている人だけが話す、というルールを設けることが多いです。それにより、他の子どもが話し終わるのを待てるようになります。授業として取り入れている学校では、1年の初めにみんなでさまざまな色の毛糸を巻いてコミュニティボールを作り、それを1年間使います。『自分のクラスのボールだ』という愛着が湧き、ボールが学級のアイデンティティを表すようになります」(同)
時間は、学校の授業に合わせた45分ほどが上限。前後に説明を入れたり、対話の進め方を子どもと大人で相談することもあるのだそう。
「幼児でも小学生でも共通ですが、できれば地べたに座って対話する方がいい。もちろん椅子でも大丈夫ですが、椅子を動かしたり、足をブラブラさせたりする子どももいるので、リラックスして床に座れる方がいいと思います」(同)
こども哲学をやろうとする場合、大人がファシリテーション(司会・進行)をするケースが多いもの。どんなコツがあるのでしょうか。
「もっとも簡単でラクにやれる“究極の”方法は、大人自身が『私は何も知らない』ということを理解することです。例えば子どもが『水はどうして氷るの?』と聞いてきたとき、『確かに知らないな』と思えるかどうか。ファシリテーター自身が、好奇心、探求心を持っていると気づき、それを表に出すことが大事です」(同)
もうひとつ、大切なポイントがあるとのこと。
「共感できる意見に共感しすぎないよう気を付けてください。ついつい、『こんなことを考えるなんて〇〇くん、すごい』と大きくうなずいたり、褒めたりしてしまいがちですが、それは結果的に子どもの意見をコントロールすることになる。子どもは大人に感心されることを意識して発言するようになってしまいますから、『本当にそうかな?』とか『私もそう思う』といったシンプルな反応でよいのです」(同)
こども哲学は、一方的に教えるものではなく、子どもが対話を通して自ら考え、感じていく活動です。この記事を書いている私自身がこども哲学の活動をしていますが、子どもが考える楽しさに芽生えていく様子は何度見てもうれしいもの。さらには、大人である私たちが、毎回たくさんの気づきを子どもからもらっています。
学校教育ではなかなかない「正解のない疑問についてじっくり考える」という体験。ぜひ、近くのイベントに足を運んだり、家庭で取り入れたりしてみてください。
(取材・執筆:栃尾江美)
特定非営利活動法人 こども哲学・おとな哲学 アーダコーダ代表理事。東京学芸大学教育学部卒業後、サラリーマンを経て、2014年に特定非営利活動法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダを設立。保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭(美術)、高校教諭(美術)の資格を持つ。全国各地で開かれる映画「こども哲学~アーダコーダのじかん~」自主上映会にて親子から大人同士までを対象にした哲学対話を実践している。著書に「自信がもてる子が育つ こども哲学 ―"考える力"を自然に引き出す―」(ワニブックス)など。
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