大手エンタメ情報誌の映画担当を経てフリーランスのエンタメライターに。2003年、2007年に女児を出産した後、日本初の子どものための映画サイト「こども映画プラス」の立ち上げに関わる。長女が年少の頃から10年以上映画館、テレビ、DVDなどで子どもと映画を鑑賞しながら、“親子の映画の楽しみ方”“映画で子どもの好奇心や知識、語彙力、コミュニケーション力がどのように育つのか”を研究し続けている。
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週末・その他
小学1年生 2019年1月18日の記事
新しいことに挑戦したい! そんなママを応援する映画3選
親子の会話がはずむ、年長児とママのための映画ガイド【第16回】
年が明けて「今年は何か新しいことを始めてみようかな」と考えている方も多いのではないでしょうか。そろそろ仕事を始めてみたい、何か習い事を始めてみたい、子どもと一緒に勉強を始めてみるのもいいかも…! そんな気持ちを応援してくれるような、新しいことにチャレンジする女性たちを描いた映画3本をご紹介します。
●料理好きの主婦が人気料理研究家に「ジュリー&ジュリア」
今から60年ほど前、敷居の高かったフランス料理を一般家庭に紹介し、アメリカの食卓に革命をもたらしたといわれる人気料理研究家、ジュリア・チャイルド。ベストセラーとなった彼女の料理本のレシピをすべて再現し、毎日ブログにアップすることで人気ブロガーとなった現代のOL、ジュリー・パウエル。料理を通して夢を叶えた二人の女性の物語を、過去と現在を織り交ぜて描いていく作品です。
1949年、夫の転勤でパリに住むことになったアメリカ人の主婦、ジュリア。食べることが大好きなジュリアは、名門料理学校、ル・コルドン・ブルーに通い始めます。慣れないフランス語に苦戦し、男性ばかりの料理学校で邪険に扱われるなか、家で一晩中タマネギの切り方を練習するなど人一倍努力を重ね、持ち前のガッツと明るさで異国での困難を乗り越えていくジュリア。そして、卒業後に友人たちと料理教室を始めた彼女に、英語でフランス料理を紹介するレシピ本を出版する話が持ち上がります。
そこから半世紀が経ったアメリカ。作家の夢を諦めて忙しく働くアラサーの公務員、ジュリーは冴えない毎日を変えるため、ジュリアが記した524のレシピを365日かけて作り、そのプロセスをブログにアップすることにします。もともとあまり料理が得意でなかったジュリーは、オーブン料理を焦がしたり、シンクをつまらせてしまったりと失敗ばかりで、協力してくれる夫にも八つ当たり…。それでも「私は何をやっても中途半端」と言っていたジュリーが人気ブロガーになり、遂には出版の話が舞い込みます。
始めるときはワクワクするけど、続けるのは努力が必要。でも諦めずに続けていけば新しい道が開けてくる。料理で人生を変えた二人の女性の姿から学べることがたくさんあります。何より自分の好きなこと、夢中になれることを見つけることが大切なのだと気づかされる本作。失敗を恐れないジュリアとジュリーの姿は、何か始めてみたい、と思うママを勇気づけてくれるはずです。
<データ>
■2009年/2時間3分/アメリカ/監督・脚本:ノーラ・エフロン 出演:メリル・ストリープ エイミー・アダムス スタンリー・トゥッチ クリス・メッシーナ
●“石垣島ラー油”誕生物語「ペンギン夫婦のつくりかた」
“食べるラー油”ブームの先駆けとなり、8か月待ちになることもあった大ヒット商品「石垣島ラー油」を生み出した夫婦の、実話をもとにしたお話です。
東京でフリーライターをしている歩美は、カメラマンである中国人の夫、暁江(ギョウコウ・中国読みでシャオジャン)と旅行で訪れた石垣島に魅了され、移住することを決めます。歩美は沖縄料理店で、ギョウコウはウコン畑で働きながら、島の生活を楽しむ毎日。ある日、料理好きの二人は、島独自の食材を使ったラー油を作り、フリーマーケットで売ることを思いつきますが、売れたのはたった2個。しかし、仕方なく余ったラー油を周囲に配りまくったことがきっかけで大量注文が入り、知人・友人総出でラー油作りに励むことになり…。
移住を即決したり、ラー油を作って売ったり。アイデアをどんどん形にしていく歩美の行動力には驚かされますが、ポジティブな彼女の行動には“新しいことを始めるためのヒント”がたくさん詰まっています。ワクワクした直感を逃さないこと、わからないことは素直に人に聞くこと。歩美に押され気味なギョウコウも、真面目な性格とカメラマンの腕という強みを活かして島に馴染んでいきます。そんな二人だから島の人たちも惜しみなく協力してくれるのです。
これはラー油作りを始める物語でもあり、新しい土地で生活を始める物語でもあります。ちなみに、タイトルの「ペンギン夫婦」のペンギンは、実は二人の姓。なぜペンギンなのかも、本作を見てぜひ確かめてください。石垣島の自然にも癒され、南国の風が吹いているかのような心地よい気分になれる作品です。
<データ>
■2012年/1時間30分/日本/監督・脚本:平林克理/原案:辺銀愛理 出演:小池栄子 ワン・チュアンイー 深水元基 山城智二 藤木勇人
●おばあちゃんパワーで成功した“葉っぱビジネス”「人生、いろどり」
約半数が高齢者という過疎化しつつある小さな村を舞台に、料亭などで料理に使われる葉っぱを「つまもの」として販売するビジネスが、おばあちゃんたちの力で成功するまでを描いた、実話に基づく物語です。
徳島県の山間部にある小さな村、上勝町。特産のみかんが冷害で全滅し、村人の生活は苦しくなるばかり。そんな中、農協の若手男性職員の江田が、山や畑に生えている葉っぱや草を“料理のツマ”として売ることを提案します。皆の猛反対の中、小さな洋品店を営む花恵と、花恵に誘われた薫は家族に内緒で葉っぱビジネスに参加することにします。一方「黙ってオレの言うことを聞いてればいい」「お前は何もわかってない」と言う頭の固い夫たち。妻が新しいことを始めるのが面白くない、変化を嫌う男性たちとの対比も印象的です。
保守的な小さな村では新しいことを始めるのは簡単ではありません。初めて出荷した葉っぱは、まとめて10円の値しかつかずゴミ扱い。リサーチに行った料亭でもバカにされ悔しい思いもしますが、次第に熱意が伝わり、料亭からアドバイスを受けるように。ビジネスが軌道に乗り始め、他の女性たちが続々参加するようになっても、思わぬ妨害が入ったり、困難にも見舞われますが、それを乗り越えていく女性のたくましさに胸が熱くなります。
チャレンジ精神、継続する力、周りを巻き込む情熱。何もないと思うか、あるものを何か活かせないかと思うか。「笑われたって恥かいたって、そこらの石と同じにされるよりはマシ!」「私がいなくなっても誰かが種をまく。そうやって人生も仕事も続いていく」。人生を重ね経験を積んだおばあちゃんたちの姿やセリフが強く心に響きます。新しいことを始めるヒントだけでなく、人生のヒントにあふれた作品です。
<データ>
■2012年/1時間52分/日本/監督:御法川修 出演:吉行和子 富司純子 中尾ミエ 平岡佑太 藤竜也 村川絵梨 戸次重幸 キムラ緑子 大杉漣
紹介した3本はすべて実話をベースにした作品です。実現不可能なファンタジーではない、等身大の苦労や試行錯誤のエピソードには、何かを始めるときにぶつかる問題や、乗り越えるためのヒントがたくさんつまっています。始めることが決まっている人も、まだ子どもに手がかかるけどいつか始めたい、という人もきっと前向きなパワーをもらえるはず!
★連載「親子の会話がはずむ、年長児とママのための映画ガイド」