筑波大学大学院心身障害学研究科修了。筑波大学助手などを経て、現在、金沢大学人間社会研究域学校教育系教授。専門は言語障害教育。主な著書『学齢期吃音の指導・支援 ICFに基づいたアセスメントプログラム 改訂第2版』(学苑社、 2014)等。
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生活・しつけ
年長 2018年11月8日の記事
言葉がどもってしまう「吃音(きつおん)」。多くの場合は自然に治ることが多いようですが、もしも子どもに吃音が見られたら、どう対応していけばいいのでしょうか。吃音についての基本情報をお伺いした前回に引き続き、今回は、家庭での対応や声がけについて、吃音や言語障害を専門とされている金沢大学の小林宏明先生に詳しく教えてもらいました。
吃音(きつおん)自体は、2歳半から4歳くらいに出始める子が多いとのことですが、年長くらいの年齢になると、周りの接し方にも少し注意が必要になると小林先生。
「それまでは、吃音で話していても、自分も周りもあまり気づかない場合が多かったのが、年中や年長くらいになると、少しずつ気づき出す子が増えてきます。たとえば、『どうして、そんな話し方なの?』と質問されたり、時には話し方を真似されたりしてからかわれることも。そうなると、これまでは自分自身あまり気にしていなかったのに、次第に気になって話すことが苦痛になってくる子も少なくありません。
また、就学がきっかけで吃音が気になりだすということも多々あります。幼稚園や保育園の間はずっと同じ友達だったけれど、小学校入学を機に新しい世界に進むわけですよね。それまでの経緯を知らない子もたくさんいますし、学校で音読や日直当番が始まることも、子ども自身が吃音を気にしだすきっかけのひとつになるようです」(小林先生)
では、子どもに吃音がみられたら、どう対応していけばいいでしょうか。小林先生いわく、次の4つの点を意識するといいのだそうです。
1.症状が良いときも悪いときも、接し方を変えない
「吃音は、良いときと悪いときの波があるのが特徴です。治ったかな?と思ったら、また出てくるということはよくあります。まずは、『症状に波がある』ということを理解しておきましょう。吃音の症状があまり出ていないときは『また出てくるかもしれない』、症状が悪いときは『次第に改善するだろう』と大らかに捉え、毎回対応に変化がないようにすることが大切です」(同)
実は、筆者の娘も吃音があるのですが、治ったかな?と思うくらい良くなったかと思えば、すごく症状がキツく出たりの繰り返しです。常に同じように接することが大切なのですね。
2.「もう一度」「ゆっくり」と声がけしない
「吃音があるからといって、環境や子育て方法、しつけの方針を変える必要はありません。ただし、言葉が出てこないときに、それを責めたり、もしくは『もう一回言ってごらん』『ゆっくり話してみて』と話し方を変えるように促すことはやめましょう。『慌てないで』ということも同様です。小さな子どもは、どうしたらゆっくり話せるかということ自体がわからないものです。話し方のことを指摘されると、話の腰を折られてしまって、あまり良い気はしませんよね。子どもが気持ちよく話すことを尊重しましょう」(同)
ちなみに、子どもが言いたいことを親が先取りして言うことについては、「子どもがうまく言葉が出てこなくて困っている場合は、先取りして声をかけてもいいでしょう」とのことでした。あくまでも、子ども自身の話したい気持ちを遮らないようにすることがポイントのようです。
3.親自身がゆっくり、間を空けながら話す
「たとえば、子どもにもっとゆっくり話させたい場合は、お母さん自身がゆっくり話すことをおすすめします。間を取りながら、慌てないでゆっくり話しかけることで、子どももゆっくり話すことができます。とはいえ、一日中心がけようとすると大変でしょうから、お風呂の時間や夜眠る前などの1日10分から15分くらいで構いませんので、子どもとじっくり向き合って関わる時間を作ってみてください」(同)
肩や背中に手を置くなどスキンシップを取りながら、ゆったりと話す時間が作れるといいかもしれませんね。
4.きょうだいがいる場合は、順番に話を聞く機会を作る
「きょうだいが多いほど、『僕が!』『私が!』と先を争うように話すことが多いものですが、吃音がある子どもは、『早く話さないと聞いてもらえない』と焦ってしまい、余計に吃音が出てしまうケースがあります。そこで、一人ずつ順番に発言の機会を与えるのはひとつの手です。吃音がある子だけを特別扱いをする必要はなく、順番に話を聞くよ、慌てなくても大丈夫だよ、と伝えられればOKです」(同)
ちなみに、きょうだい間での会話を心配するお母さんも多いですが、小学生以上のお兄ちゃんやお姉ちゃんであれば、『まだ小さくてうまくお話できないことがあるから、最後まで聞いてあげようね。真似しないであげてね』と一言いっておけば、うまく対応してくれるでしょう、とのことでした。
最後に、子どもに吃音があることで悩んでいるママたちに、何かメッセージをお願いします。
「吃音は、話したいことがたくさんあるけれど言葉がついていかないときに出やすいものです。たとえば、園や学校であったことを家で話すとき、順を追って話す難しさに加えて、誰と何をしたかなど一から詳しく説明しなくてはいけないため、子どもは自分の力を最大限に使って話します。そんなときに、吃音が出やすいのです。
親御さんのなかには『外では吃音があまり出ないのに、家でよく出るのは何か家庭内の環境が悪いのでは』と悩まれる方もいますが、決してそうではありません。吃音は、緊張して話すときも出やすいですが、リラックスしていろいろと話したいときにも出やすいものなのです。あまり思いつめず、もしも何か困ったことがあれば、園や学校の担任の先生に相談すると、いろいろと配慮してもらえることが多いですよ」(同)
たとえ吃音があったとしても、子どもが「話すことが楽しい」と感じられて、ママ自身も気にしすぎないことが一番なのですね。もしも何か不安なことがあれば、耳鼻科や小児科、療育センターなど、言語聴覚士がいる専門機関に相談してみましょう。
(取材・執筆:水谷映美)
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