筑波大学大学院心身障害学研究科修了。筑波大学助手などを経て、現在、金沢大学人間社会研究域学校教育系教授。専門は言語障害教育。主な著書『学齢期吃音の指導・支援 ICFに基づいたアセスメントプログラム 改訂第2版』(学苑社、2014)等。
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生活・しつけ
年長 2018年11月7日の記事
年長時期の子どもの間で意外に多いのが、言葉がどもってしまう「吃音(きつおん)」です。小学校への入学を考えると、新しい友だちとの出会いが増え、また音読の宿題などもあるため、少し不安に思っているママもいるのではないでしょうか。そこで今回は、吃音や言語障害を専門に研究されている金沢大学の小林宏明先生に、吃音とは何かを詳しく教えてもらいます。
「吃音(きつおん)」という言葉が耳慣れない人も多いかと思います。まずは「吃音」がどのようなものかを教えてください。
「『吃音』とは、言葉がどもることを言います。言葉が出始めたばかりの1歳代ではあまり見られず、言葉数が増えてくる2歳半から4歳くらいに出始めるケースが多いようです。幼児の場合は、だいたい20人に1人くらいに吃音が見られると言われていますので、皆さんの周りにも何人か吃音がある子どもがいるのではないでしょうか。それくらい、珍しい症状ではありません。
代表的な言語症状としては、次の3種類があります。
1.語音を繰り返す
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼく」「そ、そ、そ、それで」
2.語音を引き伸ばす
「ぼーーくが」「そーーれで」
3.言葉が詰まる
「…ぼく」「…それ…で」
また、1と2がミックスしている、つまり語音を繰り返したり・伸ばしたりが合わさって出る場合もあります。あまり力が入っておらず『ぼぼぼぼくね』という状態は症状として軽く、『ぼ・ぼ・ぼ・ぼくね』というように力が入った話し方の場合は、少し吃音の症状が重いと言われる場合が多いです」(小林先生)
吃音が出るきっかけや原因には何が考えられますか。
「『特に思い当たることがない』『気づいたら吃音があった』というように、吃音が出た時期が特定できない場合がほとんどです。ただし、なかには地震などの災害に遭った後や、何かショックな出来事をきっかけに吃音が出てきたというお子さんもいます」(同)
ということは、原因が何かは、ハッキリとわかってはいないのですね。
「そうですね。頭の中に話したいことがたくさんあって、言葉の理解力や言語力はあるけれど、実際に口に出して表現する力が追いつかず、吃音になる場合があると考えられます。ですが、ハッキリした原因などはわかっていません。
なお、もともと持っている“吃音になりやすい素質”のようなものがあり、そこに環境的な要因が重なり合うことで吃音が出てくるケースもあると考えられています」(同)
では、吃音は成長とともに治るものと考えていいのでしょうか。
「一般的には、幼児期に吃音が出ていても、7~8割程度は年長から小学校低学年くらいまでの間に解消される、いわゆる自然治癒するとされています。残りの2割くらいのケースは、その後も吃音が残っていく可能性がありますが、専門機関で相談したり、小学校で吃音について配慮した環境を作ってもらったりすることで、症状が軽減していくことも多く見られます」(同)
もしも自分の子どもに吃音があると気づいたら、早めに専門家に相談した方がいいでしょうか。相談するのが遅いほど治りも遅くなるということはありますか。
「子ども自身が、吃音によって話すことに対する苦手意識を持っていたり、何か辛い思いをしたりしているようであれば、早めに相談したほうがいいかもしれませんね。また、保護者の方の不安な気持ちを解消できるという意味でも、一度専門機関にかかってもいいと思います。どうしたらいいかわからず不安に思いながら過ごすよりも、専門機関に相談して安心できれば、その後の育児もストレスなくできるのではないでしょうか。
それから、親御さんが良かれと思ってしていた言動が、実は逆効果だったりする場合もあります。それを後で知って『あのときこう声がけしていれば…』と後悔する方もいらっしゃいますので、親子ともに気になった時点で、まずは専門機関に相談してみてはいかがでしょうか。
吃音の相談先としては、お住まいの市町村の発達相談の窓口や、医療機関であれば、耳鼻科・小児科・療育センターなど、言語聴覚士がいる施設などが挙げられます」(同)
必ずしもすぐに専門機関に行く必要はないそうですが、もしも何か気になることがある場合は、不安を取り除く意味でも、一度専門医がいる施設や医療機関を訪ねてみてもいいかもしれませんね。次回は、実際に自分の子どもに吃音が見られたときの家庭での対応や声がけについて、引き続き小林先生に伺います。
(取材・執筆:水谷映美)
筑波大学大学院心身障害学研究科修了。筑波大学助手などを経て、現在、金沢大学人間社会研究域学校教育系教授。専門は言語障害教育。主な著書『学齢期吃音の指導・支援 ICFに基づいたアセスメントプログラム 改訂第2版』(学苑社、2014)等。
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