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小学1年生 2018年10月19日の記事

2020年度から変わる小学校授業。家庭で必要な対応とは?【後編】

 

 

前回は、2020年度の新学習指導要領の完全施行で始まる英語の必修化について、その内容や目的などを現役小学校教諭の舟山由美子先生に伺いました。今回は、同じ年に必修化される「プログラミング教育」や、新しい授業に対して家庭でやっておくことなどについてお聞きします。

 

 

●各教科に横断的に取り入れられる「プログラミング教育」

 

前回取り上げた英語の授業のほか、2020年に必修化の方針が打ち出されているものに「プログラミング教育」があります。具体的にはどんなことを学ぶのでしょうか?

 

「『プログラミング的思考』とよばれるものを育成するため、コンピューターに意図した処理を行うよう“指示することができる”ということを体験させるもので、必ずしも『コーデイング(プログラムを作る方法)』を覚えることが目的ではないようです。むしろ、ある先生によれば『子どもたちが、ある目的を達成するための手続きについて、筋道をたてて考え、よりよい方法を考えられるようにしたい。そのための教材としてパソコンを使いましょう』というスタンスのようです。こうなると、算数科の目標である「筋道を立てて考えられる数学的思考力を高める」というねらいに近い印象がありますね」(舟山先生)

 

ちなみに、「プログラミング」という独立した教科ができるのではなく、例えば、算数の時間に図形を作図する、音楽の時間に音楽を作る、理科の時間に電気の性質や働きを学ぶ…など、各教科の特質に応じてプログラミング教育の取り組みを実施するようにとされているのだそうです。さらに言えば、どの教科や学年に取り入れるかは、各校に委ねられており、現状では指定研究校になっている学校などが先行的な実施をしている段階で、ほとんどの学校はこれから、といったところのよう。

 

「プログラミング教育は、新学習指導要領の中でも耳目を集める言葉なので、気になっている親御さんも多いと思いますが、学校では、パソコンの基本的操作(タイピングやソフトの使い方など)は行っても、その先何をするかの方針がはっきりしていなかったり、情報や事例を集めたりしている段階のようです」(同)

 

 

●ICT活用の背景にある「アクティブラーニング」とは

 

また、プログラミング教育と同じように、パソコンを使う印象があるのが「ICT授業」、つまり「情報コミュニケーション技術(Information and Communication Technology)」を活用した授業です。

 

「ICT授業として一般的なのは、デジタル教科書を使用したり、児童にタブレットやパソコンを持たせたりして授業を行うことです。国語・算数から体育・図工・音楽・総合的な学習まで、いまやどの教科でも使用しています。昔の、視聴覚教材が進化した形態といってよいかもしれません」(同)

 

写真や動画などの映像を始め、図書館の資料や児童の書いたものを拡大器やプロジェクターでスクリーンに表示したりするのもICTの活用と言えるのだそうです。

 

「プログラミング教育の必修化やICTの積極活用がいわれるのは、新学習指導要領のキーワードとなる『アクティブラーニング』に備えてのことでしょう」と舟山先生。

 

「アクティブラーニングとは、教師が一方的に教えるのではなく、児童が能動的・主体的に参加して、仲間と深く考えながら課題に取り組む学習法のこと。先生の話を受け身で聞く座学での学習と対極にあるものとされています。ICTの活用によって、児童が興味をもって自発的に学ぼうという意欲が出ることが期待されているのだと思います」(同)

 

舟山先生によれば、生徒の主体性という側面の一方で、いかにこどもの学びに向かう姿勢を引き出せるか、意欲的に学習に向かわせることができるのかという教師側の姿勢も、アクティブラーニングの重要な鍵になるようです。

 

 

●自ら学ぶ姿勢を育てるために、家庭でできること

 

とはいえ、今後の教育の流れとして、子どもたちの自ら学ぶ姿勢が重視されることは確か。そして、子ども自身が学校の授業に対して、自発性や積極性という「やる気」をもつためには、家庭での声かけや工夫も大切になると先生は言います。

 

「まずは、お父さんやお母さん自身が読書などで学ぶ姿を見せてほしいと思います。また、日常のニュースを見てわからないことを親子で一緒に調べるとか、社会で起きている問題をテーマに家族で話しをするとか、子どもの質問をもとに会話が広がるような環境を作ると良いでしょう。これらは低学年のうちからやっておくに越したことはありません」(同)

 

大切なのは、子どもだけに勉強しろというのではなく、学ぶことはいつでも必要であり、何かをわかったり、できるようになるのは楽しいものだと、自然な形で子どもに伝えること。まずは興味のあることからでも、親自身が学ぶ習慣をつけて、子どものお手本になれるといいですね。

 

 

●英語やプログラミングの習い事より、まず育てたい「2つの力」

 

英語やプログラミング教育の必修化というと、早期教育の教室などに通わなければいけないのかなと思う方もいるのではないでしょうか。これに対して舟山先生は、「少なくとも低学年のうちは、学習の先取り以上に、先を見通す力(段取りの力のようなもの)や日本語の力を育てることが大切」と言います。

 

「例えば、調べ学習の課題に取り組むとき、どのような見通しをもって、どんな段取りで行うかをわかっていないと、単にPCをいじっておしまい……ということになる可能性もあります。また、日本語の読解力がなければ教科書がしっかり理解できず、プログラムに求める機能の仕様書などもわかりません」(同)

 

では、先を見通す力や、日本語の力をつけるためにはどうしたらよいのでしょうか。舟山先生いわく「日常生活で基本的なことをしっかりと身につけることが重要」とのこと。

 

「朝のしたくなど、身の回りのことを自分でやることは、先の見通しを持って段取りを整える力を養うことにつながりますし、家族との豊かな会話は日本語の力を育みます。そしてこれには、家庭の力が欠かせません」(同)

 

また、アクティブラーニングの元となる「やる気」を育てるためには、好きなことだけでなく、苦手なことに対してねばり強く物事に取り組む姿勢も必要とのこと。そのためには、毎日規則正しい生活を送る、小さいうちからお手伝いをして家族の役割を担う、といったことも大事なのだとか。

 

「これからの時代に通用する技術や能力を身につけ、存分に活かしていくためにも、まずは毎日の生活を大切に過ごす、ということを意識していただければと思います」(同)

 

親としては、どうしても成績が気になるものですが、1年生のうちは、成長して社会に出た後に役立つ力を育てる時期と考えていきたいですね。そして、2020年以降はよりそうした力が身に付くように、学校の授業も変化していきそうです。

 

(取材・執筆:坂本洋子)

 

 

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