現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
▼ホームページ http://kyon55.in.coocan.jp/
【小学1年生】と【年長】ママのお役立ち情報を配信!
学校・まなび
年長 2018年10月1日の記事
小学校入学に向けて、年長の間に準備しておきたいことをお伝えするこの連載。第1回はさまざまな「体験」が学びの基礎になること、第2回は家庭内の「会話」が語彙力向上のカギになること、第3回では生活習慣や集団でのルールを身に付けるために大切な「順番」の意識についてご紹介しました。
最終回となる今回は、学習を進める上で必要となる基礎体力について、元小学校の教員であり大学の客員准教授として活躍されている塩谷京子先生に教えていただきました。
●「握る」「支える」力が身に付いていれば、すべての学習で困らない!
小学校に入っていろいろな授業を受ける前に、たとえば数字やひらがななど、最低限覚えておきたい知識とはどんなものでしょうか?
「年長のお母さんたちが一番気になるのがそこですよね。先に先にと進めておきたい気持ちはわかりますが、その前に身に付けておきたい大切なことがあります。それは、基礎的な体力です。
たとえば、鉛筆を持って文字を書くには、手に力が入らないとできません。つまり、鉛筆を『握る』力がとても大切だということです。
それから、背骨の周りの筋肉がしっかり発達していないと、正しい姿勢を保つことができませんよね。机の前に座っていても、すぐにダラっと姿勢が崩れてしまうのは、『支える 』力がついていないからだと考えられます」(塩谷先生)
正しい姿勢を長時間保つだけの筋力が無ければ、勉強にも集中できないということですね。そういえば、昔はHBやBの鉛筆がメインでしたが、最近は2Bの鉛筆を用意するように学校から言われます。これは、子どもたちの筆圧が弱くなっているからだと聞きました。
「その通りです。最近の子どもたちは、驚くほど筆圧がありません。握る力が弱いのです。いくら文字を知っていても、握る力が備わっていなければ、うまく書くことはできません。一定時間同じ姿勢を保つことが難しいという子も多いのが現状です。そのため、知識を身に付ける前に、健全な体と基礎体力を作っておくことが大切なのです」(同)
●遊び、お手伝い…日常生活の中で「体を使うこと」を意識しよう
基礎体力を身に付けるには、積極的にさまざまな遊びを体験させることが大切だと塩谷先生。
「たとえば、縄跳びは握る力、体を支えてジャンプする力が身に付きます。公園にあるアスレチックなどの遊具は、全身の筋力の発達を促します。そのほかにも、砂遊びならシャベルを握って砂を掘るので手首の運動になりますし、歩いたり走ったりすることだけでも十分な基礎体力が身に付きますよ。たくさんの遊びを通して、握る・体を支える力を養っていってほしいと思います」(同)
家の中でもできることはありますか?
「もちろんです。ブロックやパズル遊びは手先を動かす練習になります。それに、遊びに限らなくてもいいんですよ。たとえば、お手伝いだってそうです。お料理を一緒にしたり、食器を運んだりすることでも、握力や体を支える力を付けることに繋がります。外に行かなくても、家の中でできることはたくさんありますよ。日常生活の中でどれだけ体をしっかり使っているかがとても大切なのです」(同)
文字や数字などの知識を教える前に、さまざまな遊びや経験を通した体力作りを重視した方がいいということですね。
「知識は、必要な年齢になれば自然と頭に入っていきます。子どもたちの吸収力は素晴らしいですから。しっかりと鉛筆を握る力があり、正しい姿勢で座っていられる筋力があれば、あっという間に覚えられますよ!」(同)
●大人の姿を見せることで、子どもはコミュニケーション法を身に付けていく
最後に、学習面以外の不安点として「子どもが挨拶をしない」「返事をしない」といった声も耳にしますが、挨拶や返事も小学校で大切なことだと思います。そのような場合のアドバイスがあれば教えてください。
「先生の話を聞く、名前を呼ばれたらハイと返事をするなどは、すでに幼稚園や保育園で教えてもらっていることだと思います。ただ、言葉として知っていても、どんなときに使えばいいのかが、わからない場合があります。
人と人がコミュニケーションをとる際に、言葉は必要です。『ありがとう』という言葉を知っていても、どんなときに『ありがとう』と使ったらいいのかは、親や周囲の人の姿を見て覚えていくのです。
そして、子どもが使う場面を理解して実際に自分でも使えるようになるには、少し時間がかかります。『ありがとうって言わないといけないでしょ』などと教えるのではなく、お母さん自身が折にふれて『ありがとう』と言っていれば、自然に子どもも使えるようになると思いますよ」(同)
入学前に多くの知識を習得しておけば安心だと思いがちですが、その前に基礎的な体の作りや力を備えておくこと、そして親子での密なコミュニケーションが大切なのですね。
塩谷先生に教えていただいた「年長の間に身に付けておきたいこと」は、どれも難しいことではありませんでした。たくさん遊び、たくさんの経験をさせることこそが、楽しい小学校生活への第一歩。限りある年長の1年間を有意義に過ごしましょう!
(取材・執筆:水谷 映美)
関連記事はこちら
★年長でお片づけの習慣づけを!子どもが片付けやすい部屋づくり
毎週木曜にメルマガ発信中!
ご登録はこちらから↓
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
▼ホームページ http://kyon55.in.coocan.jp/
『ママノート』ツイッターやっています!フォローいただけたら幸いです。