埼玉県さいたま市にある小中高一貫校。4-4-4制の12年一貫教育や異学年齢学級など個性的なカリキュラムに特徴がある。
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学校・まなび
小学1年生 2018年10月2日の記事
「4-4-4」に学ぶ、子どもの発達に合わせた学習方法
子どもの心身の発達は4年単位で考えるとうまくいく【第1回】
小学校の6年間は、いわずと知れた一つの区切り。しかし、早い子になると10歳ごろに思春期を迎えたり、第二次性徴が始まったりと、小4から小5の間に大きな発達の区切りがあることも知られ始めています。
小1ママにとっては、まだまだ先の話かな…と思いつつも、小学校生活に慣れてきたこの時期だからこそ、我が子の先々の成長について気になる瞬間もあるのではないでしょうか。そこで今回は、通常の6-3-3制をとらず、子どもの心身の発達に合わせた4年ごとの区分で12年間一貫教育を行っている開智学園総合部(埼玉県さいたま市)に取材。第1回となる今回は、学習面における各段階での成長について、開智小学校の有田祐介先生にお聞きしました。
●小1~小4は好奇心と学びへの意欲を育てる時期
多くの公立校は、小・中・高の6-3-3という年数で区切られています。開智学園総合部が、この12年をあえて4年ごとに区切る「4-4-4制」を取っているのはなぜなのでしょうか。
「学習面、精神面における発達の大きな区切りが、10歳ごろと14歳ごろにあると考えているからです。そのため本校では、1~4年生(7~10歳)までの『プライマリー』、5~8年生(11~14歳)までの『セカンダリー』、9~12年生(15~18歳)までの『ターシャリー』の3つに分け、12年一貫教育を行っています」(有田先生)
それぞれの段階で発達にどんな違いがあるのか、学習面から教えていただけますか?
「小1から小4までにあたる『プライマリー』は、『読み・書き・計算』のような基礎学習と合わせて、好奇心や学びに対する意欲を育てることが重要。というのも、好奇心や学びへの意欲が、その後の学習の大切な基礎となるからです。
例えば、アサガオを育てるにしても、名前や生態など図鑑的な知識を身に着けることよりも、種を植えて『芽が出たよ!』と驚いたり、『葉っぱの形ってどうなっているんだろう?』『この花はなぜ紫色なんだろう? 他の色はないのかな?』などの疑問を持ったりできることを重要視しています」(同)
好奇心や学習意欲を伸ばすために、具体的にどんなことが行われているのでしょうか?
「この年代では『体験』をキーワードにおいています。座学にとらわれず教室の外に出かけていき、生活に密着した作業や遊びを通して学習を進めます。例えば、小3では農家の方の指導のもと、1年間かけて米作りを体験。農家の人々の暮らしを体験したり、田んぼにいる生き物と出会ったり、ご飯を炊いたり、わら細工をしたりと、実践的な探究からさまざまな学びを得ます。各学年に宿泊学習があるのも同じ意図です」(同)
小1~小4の時期は、お家でも長期休みなどを利用して、積極的にさまざまな体験をさせてあげたいですね。
●小5~中2は、体験を通して幅広く・深い知識を身に着ける時期
小5から中2にあたる「セカンダリー」では、学習面でどんな変化が訪れるのでしょうか。
「小5から中2までは、一生で一番記憶力がよく、また記憶が定着する時期と言われています。体験に基づいた、幅広くかつ深い知識を身につけさせたいですね。小4までに育くんだ好奇心や学習意欲が、深い知識を身につけるための基盤となります。
また、思春期の初め頃になると、抽象的な概念を理解できるようになります。『優しさとは何か』『愛とは何か』といった概念を操作し始めるため、今までの経験を言葉として理解できるようになるのです。さまざまな経験や知識を、自分の意見とともに『言語化』する力を身に着けていくのが、この時期ではないでしょうか。もちろん、ペーパーテストで求められるような学習能力もしっかり身に着けたいですね」(同)
小1~小4までに体験し、学習したことが、一段階レベルアップするのがわかります。開智学園の場合、具体的なカリキュラムにはどんな特徴があるのでしょうか。
「キーワードは『探究』。深い知識を身に着けるには、教師が一方的に知識を与えるのではなく、自らが行動して体験することが大切。そのため、小5では『磯』、小6では『地域』、中1では『森』をテーマにフィールドワークを行います」(同)
最終学年となる中2は、各自で探究テーマを設定。それぞれ仮説を立てて検証したり、調査計画を立ててフィールドワークに出かけたりして、最終的には探究結果をプレゼンテーションするのだそう。大学の研究室などに自分でアポイントを取り、学び方から学ぶのだと言います。
家庭でも、子ども自身が興味・関心のある分野に対して主体的に関われる環境づくりをしたいですね。ワークショップやイベント、サマースクールなどを一緒に探し、参加させてもいいかもしれません。
●中3から高3までは、専門分野を深く学ぶ時期
最後に、中3から高3までにあたる「ターシャリー」について教えてください。
「中3から高3までは、自分の進みたい未来に向けて専門分野を深く学ぶ時期。本学では、目前に控えた大学受験勉強を進めながら、高2までは探究型の学びも同時進行で行います。
高2のフィールドワークでは海外へ行き、高1までに積み上げてきた探究テーマについて現地の大学生にプレゼンテーションを行ったり、ともにディスカッションをしたりするんです」(同)
小4までの4年間で培った好奇心や学習意欲が、小5から中2までに身に着けるべき深い知識を呼び、自らの学びたいテーマを見つける力になる。そして中3からの4年間で、そのテーマをより深く学び、自分の将来につないでいく…。
公立校でも「せいかつ」の授業などは遊びの要素を含むものが多く、「ちゃんと“勉強”しなくていいの?」と感じている保護者の方もいるかもしれません。しかし小中高の12年間を見通すと、この時期の「楽しい学習」は5年先、10年先の学びにしっかりつながっていることがわかりました。4年ごとの発達に合わせた学習法は、どの家庭でも子どもの『好き』や『得意』を伸ばすヒントとして役立ってくれそうですね。
次回は4年区切りでとらえる「精神面の発達」について、引き続きお話しを伺います。
(取材・執筆:有馬ゆえ)
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