佐藤 和紀(さとう かずのり)
常葉大学 教育学部 初等教育課程 専任講師 。
上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭・主任教諭を経て現職。この間、東北大学大学院博士課程後期に編入学。文部科学省「情報通信技術を活用した教育振興に資する調査研究」パフォーマンス評価検討委員、同 学校における ICT 環境整備の在り方に関する有識者会議 効果的なICT 活用検討チーム委員、同 次世代の教育情報化推進事業「情報教育の推進等に関する調査研究」企画検討委員等を務める。
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小学1年生 2017年7月28日の記事
これからの親に必要な「ITリテラシー」を紹介していく連載の4回目は「教育のICT化」について。文部科学省では、2020年までに小中学校で1人1台の情報端末(タブレットなど)を導入することを目標に掲げています。勉強はどう変わっていくのでしょうか。家庭ですべきことは? 常葉大学教育学部初等教育課程 専任講師の佐藤和紀さんに聞きました。
2020年までに整備されるという1人1台の情報端末。「鉛筆で書かなくていいの?」という疑問を持つ親も多いのではないでしょうか。
「そういう質問を受けることもあります。説明するより、親御さんに体験してもらうほうがいいと思っています。保護者会で『資料を作ってプレゼンをする』という課題を出して実際にやってもらったことがあります。資料を作るのも大変で、人前で話すことも躊躇する保護者の方もいました。ところが、慣れている子どもたちはすいすいとこなしてしまうわけです。情報端末というツールを使うことで、操作しているだけではなく、人前でプレゼンするプレッシャーの中、わかりやすい資料を準備して、さらに順序立てて話をすることなど、幅広く学んでいるのだと理解していただけます」
鉛筆で書く勉強はもちろん必要ですが、それ以外にツールを使うことで伸びていく分野がたくさんあるのですね。
ところが、「自宅だけで使っていると『消費』に偏ってしまう」と佐藤さんは言います。つまり、動画を見たりゲームをしたりといった「コンテンツの消費」ばかりになってしまうそう。
それを避けるためには、「学校や塾などでクリエイティブなことを教わると、自宅でもやるようになる」のだとか。「クリエイティブなこと」とは、実際にプログラミングをするのはもちろん、動画や写真などを利用して何かをつくり出すような創造性の高い活動のことです。現代社会には、クリエイティブな人材が求められています。子どもにクリエイティブな思考を身につけさせたいのであれば、「どう使うか?」を教える機会が必要なのですね。
「クリエイティブなこと」を子どもたちに身につけてもらうために、どんな授業や課題があるのでしょうか?
「私が小学校で教えていたときには、例えば、修学旅行先である日光について、これから行く人のためのガイドブックを作る課題を出したことがあります。行く前から情報収集をするのはもちろん、修学旅行中も情報を集めたり写真を取ったりして、自分たちのオリジナルコンテンツをつくっていきます。iPadで作ってもらいましたが、旅行雑誌などを分析して文字の大きさやフォント、デザインなどにもこだわってもらいました。デザインへのこだわりは、「相手意識をもつ」ことにつながります」(佐藤さん)
「また、6年生の社会科では、冬休みの宿題として歴史年表を制作してもらいました。アプリはあえて自由。プレゼンテーション用のPowerPointを使う人もいれば、書類作成のWordもありました。それを印刷して、壁に貼り出しました」(佐藤さん)
このように、iPadなどを使って、自分で工夫を凝らし、それをみんなにわかりやすいように表現するという経験が大切なのですね。
学校でどのように実装するかは、まだ具体的に決まっていない部分も多く、学校ですべての台数を用意するのか、BYOD(Bring Your Own Device)といって、家庭で用意したものを学校に持っていくのか、各自治体等で検討が重ねられています。では、今後は各家庭にも、タブレットやパソコンなどがあったほうがいいのでしょうか?
「1人1台といっても、学校でしか使えないというケースも考えられますので、できれば自宅にもタブレットなどの情報端末を用意するに越したことはないでしょう。そうすれば、学校で学んだことを自宅でもできますから」
また、情報端末にはタブレットが有力なようですが、キーボードのあるパソコンの方がいい、ということはないのでしょうか?
「タブレットはキーボードをタイプしなくても使いこなせますし、操作が簡単なので覚えやすい。操作方法を教えることにさほど時間を費やさなくて済みますから、使い始めはタブレットの方が向いています。ただ、私たちがデスクワークの仕事でキーボードが使えないのは、もはや考えられませんよね。そう考えると、小学校の中高学年くらいからはキーボード入力ができるようになるのが望ましいでしょう」
まずは操作方法が難しくないタブレットからスタートし、やりたいことが増えて来る頃にキーボード付のパソコン、と移行していくのがよさそうです。
教育のICT化は、単にこれまでのような学習をタブレットやパソコンを使って行うのではなく、クリエイティブな感性を育てる新しい学びに活用していくということなのですね。子どもに与えても動画を見るばかり……という心配もありますが、上手に活用するためには、大人がある程度導いてあげることが大切のようです。
(取材・文:栃尾江美)
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