末永 蒼生(すえなが たみお)
色彩心理研究家。『子どものアトリエ・アートランド』、『色彩学校』主宰。
アート&セラピー色彩心理協会会長。
美術活動のかたわら日本児童画研究会で子どもの絵の心理を研究し、1966年に『子どものアトリエ・アートランド』を開設。子どもの心を育てる自由表現の場を提供し、親に対しては絵を通しての子育てカウンセリングを行なっている。
著書:『答えは子どもの絵の中に』、『絵が伝える子どもの心とSOS』(講談社
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生活・しつけ
年長 2014年11月10日の記事
お子さんに画用紙や画材(クレヨン、色鉛筆など)をわたすと、目を輝かせて絵を描くのではないでしょうか。大人から見ると「何を描いているんだろう…?」と思うような不思議な絵もありますよね。
子どもが自由に描いた絵には、今の気分や欲求が表現され、ときには心のSOSのサインを示していることがあるといいます。色彩心理研究家、『子どものアトリエ・アートランド』主宰の末永蒼生さんにお話を伺いました。
●子どもが描いた絵は“心の言葉”
末永 「お子さんは、わがままを言ったり甘えたりしてお母さんを困らせることはありませんか?その場でなだめてみても、なかなかお子さんの気持ちが落ち着かないこともありますよね。
『どうして○○をするの?』と聞いても、小さな子は自分の気持ちを上手に言葉で説明できません。だから、育児で壁にぶつかり、『子どもが求めていることがわからない』と悩んでしまうこともあるはずです。
そこで、親御さんへ子育てのヒントをくれるのが『子どもが描いた絵』です。お子さんが絵を描くときに無意識的に選ぶ色は、今、心が欲している栄養とも言えます。
どのような色を選び、何を描いたかを見れば、お子さんが心の根っこではどんなことを求めているかがわかるのです」
●色からわかる子どもの気分
末永 「子どもの絵から心の状態を見るときは、その絵が『自由に描かれたもの』であることが前提です。だから、『こう描きなさい』『この色を使いなさい』などと指示してしまうと、心の根っこにある感情・欲求が見えなくなってしまいます。
お子さんは、どんな色を選んで絵を描いていますか?お絵描き帳を見返したり、クレヨンが入った箱を見てどの色が一番減っているかなどをチェックしたりしてもいいですね。いろんな色を使うのではなく、1つの色を1か月以上使い続けていたら、何らかの感情を訴えている可能性があります。
大まかに言うと、暖色系(赤、黄色など)は意欲や活力がある外向的な状態。寒色系(緑、青など)は、リラックスしたい、じっくり静かに考えたい内向的な状態を示すことがあります。
色別に見る心理状態は……
●赤色:エネルギーの高さを示し、物事に対する好奇心や意欲があるときは赤色が選ばれます。
●黄色:幼児期によく使われる色です。『ママやパパが好き。もっと甘えたい』という欲求を示しているのかもしれません。
●緑色:ゆったりした気分でいたいとき、疲れているときやリラックスしたいときなどに安らぐ色です。
●青色:空色のような明るい青色は、さわやかな気分。鮮やかな青色なら思考力が働いているとき。紺色のような深い青色は、何かにプレッシャーを感じ一人で頑張るときかもしれません。
●紫色:紫色は暖色の赤と寒色の青を混ぜてできる色。『激しい感情を出したいけど、ちょっと我慢している』など心の葛藤があるのかもしれません。また、体調不良から回復へ向かおうとするときにも紫色が気持ちいいようです。
●色彩、モチーフからわかるSOSのサイン
末永 「ここからは、子どもの絵が示している心のSOSのサインを挙げていきます。
●色使いが急に乏しくなった
いじめられているとき、強く叱られた後などは気分がしぼんでいるので、いろんな色を使っていたのに色使いが乏しくなることがあります。
とはいえ、一時だけかもしれないので、1か月ぐらい様子を見てください。
また、黒色をよく使うからといって、心配はいりません。幼稚園年長から小学生頃には、えんぴつ、黒ペンなどを好み、モノトーンの絵を描きたがることがあります。集中力や考える力がついてきているということです。
●重苦しい雲や雨、雪を描く
太陽や雲、雨など自然のモチーフの表現は、子どもの気分を比喩的に表すことがあります。
光り輝く太陽は、温かい愛情を感じられているとき。重くゴツゴツとして硬そうな雲、自分に向かって雨や雪を降らせていたら、何か辛いことがあったのかもしれません。
●対比的な色使いをする
黄と青、赤と青、黒と白など、対比的な配色をするときは、対比的な感情が心の中に生まれていることがあります。例えば、妹や弟が生まれ、『お兄ちゃんだからいい子でいたいけど、実はもっとお母さんに甘えたい、さびしい』と思っているときなどです。
一方、配色への好みは成長も表します。幼稚園や小学校で集団生活をするようになると、さまざまな配色表現がよく見られるようです。自分勝手に動くのではなく、友達との関係を理解したり、状況に合わせて感情をコントロールしようとする心の成長ととらえることもできます。
●直線、ギザギサ、とがっているものを描く
丸っこいものを描いているときは、リラックスして機嫌がいいときが多く、直線や三角、尖っている表現にこだわるときは真剣な心理を示す傾向があります。
●背景がなく、画面にポツンと人物を描く
画面の中央、または隅にポツンと1人だけ人物を描くときは、ひとりぼっちの気分かもしれません。『私を見て』という大事なメッセージであることもあります。また、周りに家族、友だちなど、何を描くかでその子がおかれている状況が感じられます。
ここで示した色やモチーフの意味は一般的な傾向なので絶対的なものではありません。これらのヒントを参考に、お子さんの甘えたい、リラックスしたいという気持ちに応えて、心のエネルギーを充電してあげてください」
何気なく選ぶ色やモチーフに、子どもの欲求が現れているのですね。
次回は、絵を描くことのメリットについて教えていただきます。
次回の記事はこちら
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末永 蒼生(すえなが たみお)
色彩心理研究家。『子どものアトリエ・アートランド』、『色彩学校』主宰。
アート&セラピー色彩心理協会会長。
美術活動のかたわら日本児童画研究会で子どもの絵の心理を研究し、1966年に『子どものアトリエ・アートランド』を開設。子どもの心を育てる自由表現の場を提供し、親に対しては絵を通しての子育てカウンセリングを行なっている。
著書:『答えは子どもの絵の中に』、『絵が伝える子どもの心とSOS』(講談社
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