絵本・児童書のライター。出版社勤務を経て、絵本紹介サイトなどで執筆。作家へのインタビューも行う。9歳、5歳、1歳を子育て中です。毎回、この時期ならではのおすすめの絵本を紹介していきます。
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学校・まなび
小学1年生 2019年1月8日の記事
漢字が苦手、不得意な子は、絵本でアプローチしてみよう
2学期から漢字の学習が始まり、家庭でも書き取りの宿題などを見る機会があると思います。1年生で習うのは「一」「二」「三」や、「手」「学校」など、比較的簡単な80字。ところが、わが子が思ったよりもつまずいているのを見て、心配されているママもいるかもしれません。そこで今回は、親子で楽しく漢字に慣れ親しむことができる本を3冊ご紹介します。「漢字」と聞いただけで逃げ出すような子も、「おっ?」と興味が持てる本ばかりです。
◆今回ご紹介する絵本
『かんじのえほん』(玉川大学出版部)
『漢字えほん』(戸田デザイン研究室)
『素敵な漢字』(講談社)
●「十くん探し」で漢字に親しむ『かんじのえほん』
『かんじのえほん』(灰島かり 文、小中大地 絵)は、女の子2人と男の子2人がテーブルでお絵描きをしている場面からはじまります。「ねえ、あたし、かんじでなまえかけるよ」と女の子が言い出して「川田まゆ」と名前を書いてみせました。「田」が名前に入っている子はもう1人いて、その子のお兄ちゃんがあらわれ、「田」は田んぼの形からできたんだよ、まんなかの「十」は田んぼの道なんだよと教えてくれます。
ところが「田」から真ん中の「十」が逃げだしちゃって……!?「かんじたんけんだん」の旗をかかげたお兄ちゃんを先頭に、子どもたちの「十くん探し」がはじまります!「川」があるところに行ってみたり、「木」の中に「十」を見つけたと思ったらまたどこかに行っちゃったり……。親しみやすいイラストを存分に生かしたおはなし絵本になっています。漢字が苦手な子も「十」を探しながら、漢字の世界で遊べますよ。
●どこから文字は生まれたの? 興味がわいてくる『漢字えほん』
『漢字えほん』(とだこうしろう 作・絵)は、1つの文字につき、その「漢字の成り立ち」が大きく美しく1つの絵で描かれているのが目を引く絵本。例えば「山」が「高くとがって重なる山を表した形」であることや、「空」が「『よこあな』と『おの』を合わせた形」であることなど、シンプルな色使いで、わかりやすく書かれています。
1つ1つの字の成り立ちをじっくり見ていくと、きっとわくわくするような想像が広がって、暗記だけではつまらない漢字の世界が、色鮮やかな世界に変わるかもしれません。小学校1・2年で習う最重要漢字を中心に、成り立ちだけでなく、書き順、使い方、音読み・訓読みも押さえられています。漢字が苦手な子も、漢字が好きな子も、どちらにもおすすめの絵本です。
●文字や絵を眺めるだけで楽しい『素敵な漢字』
ページを開くとぱっとパワフルな毛筆書体が目に飛び込んでくる『素敵な漢字』(五味太郎 著)は、五味太郎さんのイラストの可愛さもさることながら、1つの漢字が多面的な広がりをもつことをビジュアルで示してくれる画期的な絵本。音読み・訓読み・書き順・熟語の使用例と、それぞれにマッチしたイラストに加え、「海」=「SEA」のように英単語まで紹介。それぞれの字にまつわる豊かなイメージが、イラスト×漢字×英単語のコラボレーションで伝わってきます。
文字や言語の魅力に、作者が心底惚れ込んでいるといった雰囲気の、この面白さはまさに五味太郎マジックです。収録された漢字は97種。熟語は1年生に難しいものもありますが、何よりも「眺めるだけで楽しい」のが本書の魅力! デザインも美しく、大人にも読み応えがありますよ。同じ作者の同様の本に『すてきなひらがな』『ステキナカタカナ』もあります。
この他、長年支持されているロングセラーに『漢字の本 小学1年生(下村式 となえておぼえる 漢字の本新版)』(偕成社)や、『漢字の絵本(五味太郎のことばとかずの絵本)』(岩崎書店)があります。この2冊は、小1向けの漢字の本として、発売以来親しまれてきた本です。合わせて参考にしてくださいね。
「漢字」と聞くだけでイヤになるお子さんにとって、何が苦手のポイントなのでしょうか。覚えられなかったり興味が持てなかったり、理由はそれぞれかもしれません。まずは文字に興味をもつことを目標に、こうした漢字の絵本を親子で読んでみてはいかがでしょう。ビジュアルや成り立ちなど、さまざまな方法で文字の魅力にアプローチした絵本は、漢字学習に最適です。まずはぜひ1冊手にとって、親自身が面白がる気持ちで、子どもと一緒に読んでくださいね!
(選書・執筆:大和田佳世)