埼玉県さいたま市にある小中高一貫校。4-4-4制の12年一貫教育や医学年齢学級など個性的なカリキュラムに特徴がある。
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学校・まなび
小学1年生 2018年10月9日の記事
成長とともに対人トラブルも複雑化。保護者はどう対処する?
子どもの心身の発達は4年単位で考えるとうまくいく【第3回】
第1回、第2回では、小・中・高の12年間、学習面、精神面、肉体面で子どもがどう成長していくのかを、4年単位で解説してきました。最終回となる今回は、それぞれの4年間で起こりやすい対人トラブル、そして子どもと接する際の親の心構えについて取り上げたいと思います。
引き続き、子どもの心身の発達に合わせた独自の4-4-4制を採用する開智学園総合部(埼玉県さいたま市)に取材。有田祐介先生にお話しを聞きました。
●小1~小4の対人トラブルは「その場の感情」が原因
第2回では精神面・肉体面について、子どもが4年ごとにどのような発達段階にあるのかをお聞きしました。集団行動のなかでは衝突がつきものですが、それぞれの時期に起こりやすい対人トラブルの特徴というのはあるのでしょうか。
「小1~小4の時期は心身が未熟な分、トラブルも単純です。例えば、嫌なことがあったらつい手が出てしまう、誰かが気に入らないことを言ったらその場で仲間外れにするというような、即時的なトラブルがほとんどです」(有田先生)
トラブルの原因は何なのでしょうか。
「この頃の衝突の多くは、その時々でうまく感情をコントロールできないことが原因。なので、その場その場できちんと話をして、都度、解決していけば大きな問題にはなりません。教員が間に入り、『なぜ叩いてしまったの?』『これが悪かったね、今度はこうしよう』とお互いに話をさせられれば、『ごめんね』と互いに謝りあって仲直りできるんです」(同)
小1~小4ぐらいの子どもは「けんかするほど仲がいい」を地で行くのだそう。「保護者の方から『いつも○○ちゃんとけんかして困るんですよ』と聞くけれど、教員からすると学校ではすごく仲が良かったりすることも多いんです」と有田先生。学校でトラブルが起きてしまったら、保護者は子どもにどんな態度を取ればいいのでしょう?
「そもそも、この時期の子どもは、事実を整理して話すことがまだ難しい面があります。また親に話すときには、自分に都合のいいようにごまかしたり、正直に言えなかったりすることもあるでしょう。
ですから、まずは本当のことをきちんと話せる親子関係を目指してほしいなと思います。そのうえで、どんなトラブルでも、なぜそのトラブルがあったのか、どうしてトラブルにつながる行動を取ったのか、どういう気持ちでそうしたのかなど、話を聞いてあげてください。そして、『今のことを学校の先生と話してごらん』と提案していただけると助かります」(同)
自分の感情をコントロールできない時期だからこそ、まずはトラブルという形で出てしまった感情について、受け止めるべきなのかもしれませんね。
●小5~中2の対人トラブルは『自我・自立心の揺らぎ』が引き起こす
思春期を迎える小5から中2の時期は、どんな対人トラブルが考えられますか?
「そもそも思春期は、友人同士の仲が良くなったり、悪くなったりと大きく揺れ動く時期。けんかひとつとっても、対人トラブルは複雑化しがち。当然、小4までのように『ごめんね』『いいよ』では解決しませんし、放置すれば仲がこじれてしまいます。
さらに万が一、いじめに発展してしまうと、メールやLINEなどで別の友人に『仲間外れにしよう』と言ったり、さらにその履歴を消去して証拠隠滅したりと、手段も巧妙になります」(同)
難しい時期ですね。トラブルが起きてしまう原因は何なのでしょう?
「この時期は、自我や自立心がまだ揺らいでいます。多感で自意識が強く、人の価値観に引っ張られたり、劣等感を抱いたりしがちなんです。『人は人、自分は自分』と考えられる子は、まだまだ少ない。他者と比べて気持ちが揺れるし、他者に頼りたくもなるんですよね。
また、自分を客観視しはじめるため、自分を取り巻く環境について理解したり、悩んだりもする時期。けんかや言い合いも、目の前の友達が原因ではなく、『友達と会う前に部活で嫌なことがあった』とか『ここ一週間、保護者と意見が衝突している』といったことが原因だったりもするんですよ」(同)
そのため、ときには教員がじっくり腰を据えて話を聞いたり、相談に乗ったりすることで解決につながるケースもあるそう。家庭での接し方については、「お子さんに信頼していることを伝え、見守ってあげてください。過干渉でもなく、放置でもなく、話を聞いてほしいと言われたら親身になって応じるような接し方がいいと思います」とアドバイスをいただきました。
●中3になると、人間関係も折り合いが付けられるように
さらに、中3~高3という年齢になるといかがでしょう。
「一般的には、人間関係について自分なりの折り合いのつけ方を学んでいく時期ですよね。中3ぐらいになると、ある程度は自我が確立し、自分と他人を切り離せるようになってきます。そこで、うまくいかない人とほどよい距離で付き合ったり、嫌な人の言葉を受け流したりができるようになるのです。ただ、それには中学時代までの人間関係の経験があってこそだと思います」(同)
この時期もやはり、保護者には信頼して見守ることが求められるとのこと。「干渉したくなる手を止め、大人として扱ってほしい」と話してくれました。
●4年ごとの発達段階に合わせ、保護者も接し方を変えていくべき
最後に、それぞれの世代の子どもに対し、保護者はどう関わっていけばいいのかを教えてください。
「前提として、どんな年齢であっても、子どもの主体性、興味・関心を受け止めてあげてほしいです。ときどき、幼少期からいろいろなことをやらされすぎている子がいますが、そういう子は物事に主体的に関わる楽しさを知らないことも多いです。授業にも身が入らないし、すべてを嫌々やっているように見えます」(同)
子どもに多くの経験をさせてあげたいと考える保護者には、耳の痛い話かもしれません。そのうえで、小1~小4の時期の心構えとは?
「特にこの時期は、スポーツでも芸術でも勉強でも、やりたいこと、得意なことを思いっきりやらせてあげることです。1つのことしかやりたがらないタイプもいれば、興味・関心がうつろいやすいタイプもいるでしょう。どちらにしても、それはそれで学びになると思って、子どもがやりたいことを体験させるというのが大事です」(同)
小5以降は、前述のような「見守る姿勢」が保護者に求められるそう。子どもを思い通りにしようとするのではなく、ある程度は突き放して責任を取らせるよう心がけてほしいとのことです。さらに中3を過ぎたら、自我が確立した一人の大人として尊重しはじめてあげてほしいとのこと。
大人になってしまった保護者にとって、子どもの12年間を体感することはできません。しかし、4年ごとの発達を知ることは、子どもとの適切な距離を知る手がかりになりそうです。4年ごとに保護者の方もうまくスイッチを切り替えることで、子どもののびやかな自立を後押しできるのかもしれません。
(取材・執筆:有馬ゆえ)
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