1958年生まれ。本名 杉山 桂一。
公立小学校で23年間教師を務め、退職後は、全国各地のPTAや市町村の教育講演、本の執筆に精力的に取り組んでいる。
メールマガジン「親力で決まる子供の将来」は新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛され、教育系メルマガとしては最大規模を誇る。
著書多数。
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生活・しつけ
小学1年生 2016年10月31日の記事
●パワハラ、ドクハラ
世の中にはいろいろな形のハラスメントがあります。
ハラスメントとは、つまりいじめです。
嫌がらせとも言います。
パワハラ(パワーハラスメント)とは、職場におけるパワー、つまり権力的な立場を利用したいじめです。
例えば、上司が部下に対して「なんだ、お前、こんな仕事もできないのか?何度教えたらできるんだ?他の人はちゃんとできてるぞ。こんなこともできないようじゃ、一人前の大人って言えないんじゃないの?」などといじめることです。
ドクハラ(ドクターハラスメント)とは、医者が患者をいじめることです。
例えば、医者が患者に対して「あんた、年いくつ? 89歳? じゃあ、もう日本人の平均寿命は越えてるね。もうそんなにがんばって健康診断なんかしなくてもいいんじゃない?
どうせ、老い先短いんだから」などといじめることです。
●アカハラ、マタハラ
アカハラ(アカデミックハラスメント)とは、大学などの教員が学生をいじめることです。
例えば、教授が学生に対して「こんな実験も満足にできないの? 今まで何を学んできたんだ? 役に立たないやつだな。せめて実験器具を全部きれいに洗っておくこと。何、用事がある?お前、単位が要らないの?」などといじめることです。
マタハラ(マタニティハラスメント)は、職場などにおいて、妊娠・出産・育児をする女性をいじめることです。
例えば、上司が女性社員に対して「なんだって? 妊娠したぁ? 何考えてるのお前は?このプロジェクトが今どういう状況か考えてみた? それ知ってて妊娠してるの?どういうつもり? 妊娠したからって、周りに迷惑をかけるんじゃないよ」などといじめることです。
●モラハラ、子ども同士のいじめ
モラハラ(モラルハラスメント)とは、相手の意思に反して自分の価値観やモラルを押しつけ、できないからといってとがめることです。
例えば、旦那が奥さんに対して「濡れてる茶碗をそのままテーブルに並べるなよ。しっかり拭いてからだろ。何度言ったらわかる? お前、そういうの平気なの?」などといじめることです。
ここまで、ハラスメントを5つ挙げましたが、子どもの間にあるいじめもハラスメントです。
子ども同士の場合、ハラスメントとは呼ばれていませんが、中身はハラスメントです。
これらはすべて、いじめであり、嫌がらせであり、ハラスメントなのです。
●「あっても仕方のないことだ」から「許されないことだ」に変わった
昔はこういうことがおこなわれても特に問題になりませんでした。
部下が上司に言われるのは仕方がない、患者が医者に言われるのは仕方がない、学生が教授に言われるのは仕方がない、奥さんが旦那に言われるのは仕方がない、子ども同士の間にいじめがあるのも仕方がない、というような受け止め方をされていました。
でも、最近は人々の人権意識が高まってきて、こういうことはすべて許されないことだという認識が広がってきました。
立場の違いや権力の有る無しにかかわらず、お互い一人の人間同士として、ハラスメントは許されないという認識が広がってきたのです。
これはとても良いことだと思います。
もちろん、こういったことはすぐになくなるものではありませんし、完全になくすというのは不可能かも知れません。
でも、「あっても仕方のないことだ」から「許されないことだ」に変わったのは大きな進歩です。
●親による子どもへのハラスメント
しかしながら、私が不思議に思うのは、これらのハラスメント以上に日々あちらこちらでたくさんおこなわれているハラスメントがあるのに、それは未だに「あっても仕方のないことだ」という認識にとどまっていることです。
それは、親による子どもへのハラスメントです。
「また○○してない。ちゃんとやらなきゃダメでしょ。何度言ったらできるの?もっとしっかりしなさいよ」
「そういうだらしがないとこ、誰に似たの?妹はちゃんとできてるよ。あんた、それでもお兄ちゃんなの?」
「なんでこんなこともできないの?何度教えたらできるの?まったくなさけない。こんなこともできないようじゃ、ろくな大人にならないよ」
「宿題やらないまま遊んじゃダメでしょ。遊びは勉強やってからでしょ。何度言ったらわかるの?そういうずるい性格を直しなさい」
「いつまで食べてるの?もう時間がないでしょ!そんなこともわからないの?ほらほら、はやくしなさい、はやく!もう、連れて行かないよ」
●親によるハラスメントが子どもの健全な成長を阻害する
こういうひどい言葉が、毎日あちらこちらの家庭で子どもたちに浴びせられています。
こういう親によるハラスメントは「未だにあっても仕方のないことだ」「子どものためを思って言っているのだから多少は仕方がない」などと思われています。
とんでもない間違いです。
こんな言い方は一切子どものためになりません。
それどころか、子どもの心は傷つき、自己肯定感が持てなくなり、親に対する愛情不足感も出てきます。
子どものためになるどころか、健全な成長を阻害するだけの罵詈雑言、言葉の暴力、親によるいじめ、嫌がらせ、ハラスメントでしかありません。
子どもを一人の人間としてリスペクトしていれば、こういうひどい言葉など出るはずがありません。
●「ママハラ」「パパハラ」「親ハラ」
でも、こういう親によるハラスメントは許されないことなのだという認識が広がっていません。
なぜなら、子どもたちは無力でそういう声を上げることができないからです。
他のハラスメントはすべて、被害者が声を上げたことから認識されるようになったのです。
認識が広がっていない証拠として、この種のハラスメントに対する名前もありません。
敢えて名前をつけるとしたら、「ママハラ」「パパハラ」「親ハラ」などになるのでしょうか?
これをお読みのみなさんには、ぜひ、こういう言葉がハラスメントであることを認識して欲しいと思います。
世の中の認識も、「あっても仕方のないことだ」「子どものためを思って言っているのだから多少は仕方がない」から「許されないことだ」に変わって欲しいと思います。
親も先生も、そして全ての大人たちがみんな、子どもを一人の人間としてリスペクトする、そういう世の中になって欲しいものです。
いずれはそうなると思いますが、一日でも早くなって欲しいです。
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