野井真吾(のい しんご)
日本体育大学教授。「子どものからだと心・連絡会議」議長。子どもの体の変化や問題について、教育や保育の現場の声から発せられる実感・実態を重視しながら、調査・研究を行なっている。中学生と小学生の2人の娘さんの父でもある。
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生活・しつけ
小学1年生 2017年4月26日の記事
前回、子どもの姿勢の悪さが、実は筋力以外に、脳の前頭葉の発達とも関係していることを日本体育大学の野井真吾先生からうかがいました。では、姿勢を改善するためにはどうしたらいいのでしょうか? 具体的な方法をうかがいます。
正しい姿勢は「光・暗闇・外遊び」から
脳の発達や生活習慣の改善が、姿勢を良くするために大切なのはわかりましたが、具体的にはどうすればいいのでしょう?
「ふつうなら『早寝・早起き・朝ご飯』なのでしょうが、これは昔からさんざん言われていながら、世の中はどんどん逆の方向に進んでいます。現実に実行しにくいのでしょうね。
そこでわたしが提案するのが『光・暗闇・外遊び』です」(野井先生)
「早寝・早起き・朝ご飯」は理想的ですが、ひょっとすると毎日はできないというご家庭もあるかもしれません。「光・暗闇・外遊び」は、すぐにできるものなのでしょうか?
「まずはとにかく朝起きたらカーテンを開け、日の光を目で感じるようにしましょう。セロトニンが増加し、すっきり目覚められます。そしてできるだけ外遊びをすることを目標にするといいでしょう。体もほどよく疲れ、日光を浴びてセロトニンの分泌を活発にします。
そして夜は部屋を暗くすることで、メラトニンの分泌が始まり、自然に眠りに入ることができます。日中に分泌されたセロトニンの量が多いほどメラトニンも多くなり、睡眠の質がよくなります。夜遅い時間まで、明るい部屋でテレビを見たりゲームをしていると、目に光が入り、メラトニンの分泌を抑えてしまうことになるので避けましょう」(同)
たしかに、早寝・早起きは自信がなくても、光を浴びたり、部屋を暗くするのはすぐに始められそうですね。
では前頭葉の発達を促すためには、どんな方法があるのでしょうか?
「前頭葉への働きかけとしておすすめしたいのは『ワクワク・ドキドキ』の体験です。といっても特別なことをする必要はありません。
ある幼稚園では、朝の登園後、最低でも20〜30分間くらい、先生、子ども、親がいっしょになって、体を使って取っ組み合う『じゃれつき遊び』とよばれる遊びをしています。この園で調べたところ、就学前の子でも不活発(そわそわ)型の割合が非常に少ないことがわかりました。
小学校の場合でも、『ワクドキタイム』を作り、朝の集会やホームルームで鬼ごっこや手遊び、長縄などで遊ぶ時間を設けたところ、不活発(そわそわ)型が減っています」(同)
体を使って取っ組み合うだけなら、家庭でもすぐにできそうですね!
「前頭葉の発達には、子どものときに思いきり『興奮』する経験を積み重ねることが必要なのです。強い『興奮』の過程を経て、その後、それに見合うだけの強い『抑制』も育ち、しだいに成人らしい『活発型』になっていくというわけです。
つまり、厳しすぎるしつけや早期教育、おけいこ事を始める前に、単純な遊びを思い切り楽しむ、ワクワク・ドキドキ体験を繰り返し味わうことが一番ということ。それも大人が決めたルールのあるスポーツなどよりも、ごく単純な遊びで気分を高揚させることが何より大切なのです」(同)
子どもは体を使ってふざけあうのが好きですが、それにはこんな効果があったんですね!
また、最近はスマホやゲームについて心配する親の声も多く聞きますが、やはり、時間を決めて上手にコントロールすることが大事だそう。
「最近気になるのは、テレビやゲーム、スマートフォンといったスクリーンタイムの増加です。スクリーンタイムをゼロにするのは不可能かもしれませんが、放っておくとゲームやスマホ漬けの生活になってしまうことは必至です。そうなると、メラトニンの分泌が低下するだけでなく、体を使った遊びの時間も少なくなってしまうでしょう。時間を決めたり、親も一緒に楽しめる時間を作るなど、スクリーンタイムを上手にコントロールすることの重要性は、年々高まっていると言えます。
姿勢だけでなく、睡眠やイライラ、低体温など、現代の子どもの体に表れているさまざまな問題の多くは、これだけでずいぶん解消されていくのではないでしょうか」(同)
「ちゃんと背筋を伸ばしなさい!」と注意するだけでなく、生活全般を見直すことが重要だということがわかりました!
(取材・執筆:坂本洋子)
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