山崎浩一 やまざき こういち
臨床発達心理士。教育相談オフィス「オフィス紫陽花」スタッフ。
「新しい学校適応支援相談員」を経て、現在、東京都スクールカウンセラーとして勤務中。
メール:office.ajisai@gmail.com
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学校・まなび
小学1年生 2015年11月9日の記事
ある日、子どもの筆箱の中を見てみたら、見覚えのない消しゴムや鉛筆が入っていたということはありませんか? 1年生になると、子ども同士でお気に入りのものを交換し合うことがあります。トラブルに発展しないよう、あらかじめ禁止している学校も少なくありませんが、特に禁止されていない学校の場合、親はどう対応すればよいのでしょう。臨床発達心理士であり、スクールカウンセラーの山崎浩一さんにうかがいます。
●「交換」は、友だち関係の確認の儀式のようなもの
低学年の親御さんから、知らないうちに子どもが友だちと消しゴムや鉛筆を交換してきて驚いたという声を聞くことがあります。文房具の交換は、子どもにとってどういう意味があるのでしょう?
山崎 「学校に持って行く文房具は、1年生にとって、初めて自分の自由になるものなんです。幼稚園や保育園のときは園に好きなものを持って行くことはできないし、おもちゃなどはみんなと共有で、ひとり占めできるものはありません。でも、文具は自分ひとりで使えて、人にあげたり交換することもできる、そういうことに子ども自身が気づくんですね。そういった背景が交換のきっかけになるのでしょう。
では、なぜ友だちと文具などを交換したがるのかというと、目に見えるもので友だち関係を確認するためだと考えられます。ある意味、儀式のようなものと言ってもいいでしょう。
幼稚園や保育園のときの友だちは物理的に近い存在、つまり家が近いとか、母親同士の仲が良くて、いつも一緒に遊んでいるというものだったのが、小学生の友だちについては『ウマが合いそうだ』とか『おもしろそう』とか、いろいろな意味で『自分のためになりそう』など、関係性が複雑になってきます。そのため、自分の持っている大切なものをあげるからあなたもそれをちょうだいというように、交換によって関係性をより強くしようとするのではないかと思います。
親としては『せっかく買ってあげたのに』と思われるかもしれませんが、それまでより一歩進んだ友だち関係や社会性が生まれてきていることの表れとも言えるので、即座に禁止すべきかどうかは難しい問題です。人によっても意見の分かれるところだとは思いますが、まずは様子を見守ってみてはどうでしょう。
もし不安であれば、ふだんから宿題や翌日の準備をしているときなどに、やりすぎない範囲で筆箱の中をチェックするのも一つの方法です。何か変わったことがあれば早めに気づくことができるでしょう」
●「等価交換」ではなくても満足していることも
「うちの子は、自分があまり使っていない消しゴムをあげて、相手からはシール1枚とかペットボトルのフタとか、見合わないものをもらってくる」などということもあるようですが。
山崎 「大人は交換というと、基本的に同じくらいの価格のものをやりとりする等価交換が基本ですが、子どもは意外にそうではないんですよね。例えば親が買ってあげた新しいカードと友だちのボロボロのカードを取り替えてきても、むしろ本人から『ちょうだい』と言って換えてもらって、満足していたりすることも多いものです。
もちろん、そういうケースばかりでなく、友だちに無理やり交換させられたというケースがないとも限りません。でもそこで、親が『なんでこんなものと交換したの!』と否定してしまうと、子どもは本当のことを言いづらいし、場合によっては親の顔色をうかがって『○○ちゃんが換えてって言ったから』などと、事実と違うことを言ってしまうこともないとは限りません。
もし等価ではない交換をしたことがわかったとしたら、まずは『あ、○○(交換したもの)だね』と、交換したことを否定しないように切り出して、その後『これ、どうしたの?』と聞くようにするといいでしょう。表情がくもったり、言いづらそうにして引っかかるところがあったら、『これ、欲しかったの?』などと、少し詳しく聞いてみるといいと思います」
大人はどうしても損得で考えてしまいがちですが、子どもにとっての価値観はそれとは別のところにあったりするんですね。気をつけたいと思います。
とはいえ、好きでもないものと無理に交換させられたりする、といったトラブルが多く見られるのも事実です。
次回は問題が起きたとき、どうしたらいいかをうかがいます。
山崎先生、ありがとうございました。
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「新しい学校適応支援相談員」を経て、現在、東京都スクールカウンセラーとして勤務中。
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