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生活・しつけ
小学1年生 2015年10月27日の記事
小学生になっても、けんかは必要?[10/27]
《小1のけんか、どう対応すればいい? 前編》 けんかを含めた友だちとのやり取りが大切です
子どもの友だち関係にけんかはつきもの。とはいえ、小学生になると周囲に大人がいない場でのけんかも多いので、どこまで親が気にかけて、どんなときに介入すればよいか迷います。子どものけんかへの対応について、臨床発達心理士で現役のスクールカウンセラーでもある山崎浩一さんにうかがいました。
●葛藤を乗り越える経験が成長につながる
よく「けんかは子どもが育つうえで重要な経験」などと言われますが、小学生になってもけんかは必要なものなのでしょうか?
山崎 「けんかというのは、相手との間で葛藤が起こるということです。その状況は、決して快いものではないので、なんとかその状況を克服しようとします。それを乗り越えることで友だちと新しい関係をつくることができ、自分に対する自信にもつながります。社会性の発達、つまり人との関わり方を学んでいくという点で、この『なんとか乗り越えよう』とする経験は欠かせません。それは、子どもでも、大人でも同じと言えます。
子ども同士のかかわりの中で、けんかは必要なものというよりは起きて当然のもの。けしかけてまでやらせる必要はありませんが、大きなケガや深い心の傷にならなければ、特別にけんかすることを心配したり、問題視する必要はないと思います」
●いろいろな子が集まる学校では、けんかが起きて当然
幼稚園や保育園では、あまりけんかの経験がなかった子が、小学校ではちょくちょくけんかをするようになって、心配する親御さんもいるようです。
山崎 「幼稚園や保育園には、同じような家庭環境の子が集まっています。でも小学校、とくに公立校の場合は、いろいろな家庭環境の子が1クラスに40人近く集まってきます。子どもはそれまでの環境との違いに戸惑いつつも、お父さんやお母さんに教えられてきた自分のやりかたで行動するわけです。そうなると、当然『なんだ、あいつ?』とか『なんであの子、あんなことしているの?』などという、カルチャーショック(文化の違いへの戸惑い)も生まれやすくなります。これでは、けんかが起きないわけがありません。
幼稚園や保育園までの、ものの取り合いや誰かが遊びのルールを乱したなど、単純な理由からけんかが起きていた頃と比べると、文化・習慣の違いとか、行動の違いによって葛藤が起きるという意味では、けんかの内容も質も、とても高度になっていると言えるでしょう。
このような葛藤の中、子どもは相手と自分をすりあわせていくために、相手がどう思うか、相手の立場になって考え、今の状況をどうやって解決したらいいかを深く考えるようになっていきます。それによって徐々に『自分』と『他人』を区別して考えることができるようになり、『相手のことを考える自分がいる』ということもわかってきて、自分を自分自身として意識することができるようになります。
こうした成長は10歳以降になると、困っている相手に対して『助けてあげたい』という養護性の発達につながりますし、さらに高学年以降になると、よい意味で人と距離を置くなど、人との多様な関係性が結べるようになるためにとても重要な役割を果たすんです」
友だちとの関わりを通して、本当にいろいろなことを学んでいるんですね。
●けんかがこじれたときは、先生が介入することも
幼稚園や保育園では、保育士さんがけんかを把握して、必要があれば仲裁してくれることも多いですが、学校の先生は学校での子ども同士のけんかを、どこまで把握しているんでしょう?
山崎 「幼稚園や保育園などと違って、学校の先生は、子ども同士のけんかに積極的に介入することはしません。
ただし、クラスでけんかが起きると、必ず誰かが『先生、○○さんと○○くんがけんかしています』と、職員室に報告に来るものです。だから先生は、すべてとは言わないまでも、意外に状況を把握していると考えていいと思います。
もっとも、けんかが起きたという報告を受けたとしても、先生がそれらをすべてフォローするというわけではありません。クラスの子の報告を聞いて、ちょっとしたとっくみあいなど、内容的に出て行かなくても大丈夫そうだと判断したら、けんかしている本人たちに任せることがほとんどといっていいでしょう。
だからといって放りっぱなしというわけではなく、何度も同じ子同士でけんかしているときや、何人かの子が報告に来ているなど、けんかが長引いていたり、子ども同士ではおさまらずエスカレートすると思われる場合には出て行くなど、状況を見ながら介入するタイミングを判断しているのです」
先生方も、ただの放任というわけではなく、ちゃんと考えて仲裁しているのですね。
山崎さん、ありがとうございました。
次回は、けんかの見守り方や子どもへのフォローについて取り上げます。
次回の記事はこちら
子どものけんかに関する記事はこちら
プロフィール
臨床発達心理士。教育相談オフィス「オフィス紫陽花」スタッフ。
「新しい学校適応支援相談員」を経て、現在、東京都スクールカウンセラーとして勤務中。
オフィス紫陽花HP http://www.maroon.dti.ne.jp/office-ajisai
メール:office.ajisai@gmail.com