原 光彦
東京都立広尾病院小児科部長。医学博士。
日本大学付属板橋病院勤務、都立広尾病院小児科医長を経て、2007年より現職。
日本肥満学会評議委員、日本臨床スポーツ医学会評議員などの他、2003年より日本大学医学部小児科非常勤講師を務める。専門は小児の生活習慣病、メタボリックシンドローム、循環器、運動生理。
著書:『「太らない」子に育てるために親ができること』(大泉書店)、『こどものメタボが危ない!』(主婦と生活社)
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生活・しつけ
小学1年生 2017年1月18日の記事
夜、おなかが空いて甘いものをたくさん食べる、動くのがおっくうで全く運動していない……。このような、不摂生のツケで体に脂肪がつくのは、大人も子どもも同じ。世界中で子どもの肥満が問題となっています。
肥満の子どもの生活指導や治療を行っている、東京都立広尾病院小児科部長の原光彦先生にお話を伺いました。
●小学校時代に太る子どもが多い
原 「小学校低学年は、太らない生活習慣を身につけたい時期です。日本では、小学校低学年から高学年にかけて肥満になる子どもが多いことがわかっています。
文部科学省の学校保健調査では、1970~2000年の30年で肥満傾向の子どもが2~3倍に増え、2000年以降は減少しているものの、11~12歳の男の子(小学校高学年)の10人に1人は肥満傾向児です。だから、小学生低学年からの肥満予防がとても大切なのです。
肥満はさまざまな原因で生じますが、日本人の生活スタイルが数十年で大きく変化したことが大きく影響しています。何らかの病気のために肥満になるケースもありますが、ほとんどが不適切な生活習慣(偏った食事、運動不足、不規則な生活など)による肥満です。
例えば……
・朝食を抜く
・夜遅くに甘いもの、脂っこいものを食べる
・おやつ(お菓子、ジュースなど)を好きなときに、無意識的に食べている
・運動習慣がなく、家で携帯型ゲームなどをしていることが多い
・就寝時刻が遅く、睡眠不足である
などが挙げられます。
これらは、もしかすると親御さんにも思い当たることがあるのではないでしょうか?
お子さんのお手本になり、親子で生活習慣を見直してください。子どもの頃に肥満だと、大人になっても肥満のままでいる確率が高くなります。望ましい生活習慣を身につけ、太りにくい健康的な体をつくりましょう」
●メタボ予備軍の子どもが増えている
原 「肥満にともない、動脈硬化危険因子が集積した病態を『メタボリックシンドローム』(以下:メタボ)といいます。私たちの研究グループは、2006年に学校健診を受けた小中学生(小学4年生・中学2年生:計217名)を対象に、メタボの割合を調査しました。
腹部肥満に加え、『血圧が高い』『空腹時血糖が高い』『血清脂質異常』の3つの心血管病危険因子のうち、2つ以上に該当した場合、メタボと診断されます。
この調査では、全体の1.4%(100人に1人以上)の子どもがメタボでした。さらに、何らかの動脈硬化危険因子を持つ子どもは4割もいました(危険因子2つ以上が8.8%、1つが31.8%)。
メタボの中核症状である腹部肥満(内臓脂肪蓄積)は生活習慣病を招き、心血管病のリスクを高めてしまいます。
実際に、当院の小児科生活習慣病外来を受診したお子さんには、脂肪肝が見つかるケースが多いです。
肥満を心配して連れてこられたあるお子さんは、診察中にイスに座っていられず、すぐにベッドに横になってしまいます。これは、肝臓に脂肪が溜まっていることで、だるさを感じているからなのですが、外見上は病気だとわからず、『だらしない』と思われてしまいます。これは、本人にとってつらいことです。
肥満の悪影響は、体の健康を損なうことだけではありません。
運動嫌いになったり、人から体型をからかわれたり、コンプレックスを持って消極的になってしまうこともあり、心の健康にも悪影響を及ぼします。
そうならないためにも、肥満が進行する前に予防してあげることが大切なのです」
●腹囲と身長から腹部肥満の有無をチェック!
原 「腹部肥満の程度は、体重だけで判断することはできません。大人では腹囲が使われますが、子どもでは腹囲身長比で、腹部肥満の有無をチェックすることができます。
《腹囲・身長比の求め方》
腹囲(cm)÷身長(cm)
※腹囲は、立って息を吐き、力を抜いた状態でへそ周囲長を測ります。肥満でへそが下がっている場合は、腰骨と肋骨の中間あたりで測ってください。
・0.4~0.5未満→腹部肥満なし
・0.5以上0.6未満→腹部肥満の疑い
・0.6以上→腹部肥満
0.6以上であれば、腹部肥満の可能性が高く、メタボになっていないか病院での検査をおすすめします。
※日本では、子どもの肥満の判定法として『肥満度法』が用いられています。肥満度は、性別・年齢別・身長別の標準体重に対し、実際の体重が重いか軽いかを示す指標で、+20%以上なら肥満傾向ありと判定します。
また、肥満の進行や糖尿病の病態は見た目にも現れます。以下に当てはまることはありませんか?
□おなか・太ももの皮膚に、赤っぽい色をした筋状のひび割れがある。
→これは皮膚線条といい、急に太ってきているサインです。
□首筋、わきの下、股など皮膚が擦れやすい部分が黒ずんでいる。
→この黒色表皮腫が見られる場合は、糖尿病やその予備軍になっている可能性があります。
子どもは成長しているので、ワンポイントで判断せず、定期的に身長・体重・腹囲を測定して成長曲線を描くことも大変参考になります(成長曲線は母子健康手帳に付いています)」
教えていただいたチェック項目は大人にも当てはまること。気になったら、ぜひチェックしてみて! 次回は、太らない生活習慣についてお伝えします。
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原 光彦
東京都立広尾病院小児科部長。医学博士。
日本大学付属板橋病院勤務、都立広尾病院小児科医長を経て、2007年より現職。
日本肥満学会評議委員、日本臨床スポーツ医学会評議員などの他、2003年より日本大学医学部小児科非常勤講師を務める。専門は小児の生活習慣病、メタボリックシンドローム、循環器、運動生理。
著書:『「太らない」子に育てるために親ができること』(大泉書店)、『こどものメタボが危ない!』(主婦と生活社)
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