伊藤真樹
関町こどもクリニック院長。国立小児病院(現国立成育医療センター)呼吸器科。都立清瀬小児科病院(現都立小児総合医療センター)呼吸器科を経て、2004年にクリニックを開設。
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生活・しつけ
年長 2016年10月20日の記事
風邪をきっかけに咳が始まり、そのうち治まるだろうと思っていたら、どんどんひどくなる一方。苦しくて夜も眠れない……これって何の病気? どうしたら咳が治まるの? 関町こどもクリニックの伊藤真樹先生にうかがいました。
●寝入りばなや起床前後の咳は、「程度の軽い喘息」の可能性が
咳が長く続いている場合、どんな病気が考えられますか?
伊藤 「診察に来る5〜7歳くらいのお子さんで最も多く見られるのは、季節の変わり目などに風邪をひいたのがきっかけで、いつまでも咳が出るというケースです。決してまれな状態ではなく、幼稚園・小学校のクラスではこのようなケースのお子さんは数名はおられると思います。
特徴的な症状は
・ 寝入りばなや明け方、起床前後に激しく咳が出る。
・ 昼間は比較的元気だが、運動したときや大笑いや大泣きするなど、興奮したときにも咳が出やすい。
・ 聴診器で胸の音を調べても、喘息のようなゼイゼイ、ヒューヒューといった音、いわゆる喘鳴が聞こえない。
というものです。
最近はこれらの症状の場合『咳喘息』という病名が使われることがあります。喘息とは違う病気のような印象を受けるかもしれませんが、『軽度の喘息』と考えていいでしょう。
喘鳴こそありませんが、咳が出やすい時間帯は喘息とまったく同じで、喘息の治療に使う薬がよく効ききます。普通の喘息に比べて程度が軽いので、喘鳴などが出ないだけなのです。
喘息の原因はハウスダストやダニなどのアレルギー物質と言われていますが、それはあくまできっかけのひとつに過ぎず、もともと体質的に気道が非常に過敏だったり、気道の慢性的な炎症をもっていることが根本にあります。
そのため風邪をひいたり、アレルギー物質を吸い込んだりすると、すぐに反応して気道が腫れて狭くなり、咳が止まらなくなったり、呼吸困難を起こすことになるわけです。
放置しておくと症状がひどくなり、幼稚園、小学校を休みがちになるなど生活に支障が出るため、きちんと治療をすることが重要です」
●市販の咳止めはむやみに使わない
どんな治療をするのですか?
伊藤 「主に気管支を広げる薬(気管支拡張薬)という薬を使います。飲み薬や貼り薬、吸入薬などがありますが、これを使うとかなり咳が楽になるはずです。
ど れくらいの期間使うかは、症状の程度によって違いますが、医師の指示に従って使用することが大切です。喘息というと、ずっと薬を使わなければならないのか と不安になる人もいるかもしれませんが、子どもの場合、成長とともに体質が変化してきて、数年後には症状が出なくなり、いずれ薬を使用しなくてすむように なることが多いので、あまり心配しなくても大丈夫です。
また、咳がひどいということで診察に連れてきた親御さんの中には、強力な咳止めを出してほしいという方もいますが、喘息の治療には咳止めは使いません。
咳というのは、気道の炎症などで痰が粘っこくなり、それが気道に詰まらないよう外に出そうとするために起きるものです。
ところが咳止めというのは、脳の『咳中枢』に直接働きかけて咳を止めるもので、気道の炎症などの根本的な原因治療にはなりません。むしろ咳止めを使うと、痰が出せなくなってしまうのでかえって危険な場合もあるのです」
市販の咳止めなどはむやみに使わないほうがいいんですね。
伊藤 「日ごろ診察に来る人の話を聞いていると、咳というのは喉に原因があって起きると思い込んでいる人が多いようなので、咳は気道部分に原因があるのだということを理解してもらいたいと思います。
誤解といえばもう1つ、痰と鼻水が同じものだと思っている人もいます。鼻水は鼻で分泌されるもの、それに対して痰は気管の奥のほうで分泌されるもので、まったく別物です。
ちなみに痰というのは、健康なときも分泌されているんです。透明のさらさらな状態で、気管支内の線毛によって下から上に運ばれながら、気管に入ってき たチリやゴミを丸め込んで掃除をしてくれます。
最後は食道から胃に入り、胃酸によって殺菌されます。つまり、痰のおかげで私たちの気管はつねにきれいに保 たれているわけで、ものすごく大切なものなんですよ」
痰は風邪などのときしか分泌されていないものだと思っていました。咳のメカニズムをきちんと知っておくことも大切ですね。伊藤先生、ありがとうございました。
次回も引き続き、咳が続く病気についてうかがいます。
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