伊藤真樹
関町こどもクリニック院長。国立小児病院(現国立成育医療センター)呼吸器科。都立清瀬小児科病院(現都立小児総合医療センター)呼吸器科を経て、2004年にクリニックを開設。
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生活・しつけ
年長 2016年10月21日の記事
前回は、子どもの咳が長く続く場合、喘息の前段階である頻度が高いことや、その治療法についてうかがいました。
今回は、そのほかによく見られる咳の病気について、引き続き、関町こどもクリニック院長の伊藤真樹先生にうかがいます。
●成長の一過程で見られる心因性の咳
伊藤 「風邪の後に咳が長く続いてなかなか治らないという場合、風邪で起きた気管支の炎症を引きずり、治りきっていないことも考えられます。
症状は
・ 風邪の後に咳が続く
・ 昼夜の区別なく、1日中咳が出る
・ 気管支拡張薬がすぐには効かない
などで、前回ご紹介した軽度の喘息と似ているように思えますが、咳の出る時間や効果のある薬に大きな違いがあります。
風邪の治療が中途半端なままで終わってしまい、痰がたまったままになっているため、それを外に出そうと咳が起きるのですが、数週間から数か月くらい咳が続くこともあるため風邪をひいたらしっかり治すことが大切です。治療には抗生物質のほか痰を軟らかくする薬などを処方します。
それから意外に思われるかもしれませんが、心因性の咳というのも意外に見られます。私の外来クリニックにも、ずっと咳が出ているけれど、熱もないし、いろいろな医療機関でいろいろな治療を着けても治らないという訴えで来院されるお子さんが月に1、2人は来院します。
特徴としては
・ わざと咳を出しているように聞こえる
・ 咳は昼だけで、夜寝ているときは決して起きない
・ 痰などがたまっている様子が見られない
・ 咳以外の風邪症状が見られない
などがあります。
心因性というと、心の病気のように思えるかもしれませんが、わりあい元気な子が多く、不登校など、とくに何か大きな問題が起きるわけでもありません。不思議なことに特別な治療をしなくても、2〜3か月ほど様子を見ていると、けろっと治ってしまうので、成長過程で見られる通過点の1つだと考えています」
●咳の前に高い熱が出るマイコプラズマ肺炎
伊藤 「マイコプラズマ肺炎も咳が長引く代表的な病気です。マイコプラズマという細菌が原因で起きるもので、1歳から6歳前後の子どもを中心に、大人もかかることがあります。咳がひどくて非常に苦しいのですが、肺炎としては比較的症状は軽いほうだと言っていいでしょう。
・ 最初に高熱が出て、その後に咳が出始めてどんどんひどくなる
・ 最初は乾いた咳だが、だんだん痰のからんだ咳になる
・ 咳は夜出ることが多い
・ 鼻水はほとんど出ない
といった症状があれば、マイコプラズマ肺炎である可能性が高いと考えられます。治療には、抗生物質や気管支拡張薬などが使われます。潜伏期間が1〜3週間と長いため、幼稚園や保育園、小学校、家族内など周りにマイコプラズマ肺炎にかかった人がいた場合、しばらくの期間は注意が必要です。
この病気は今のところ、すぐに診断がつく精度の高い方法がないため、マイコプラズマ肺炎と気づかれない場合もあります。また、感染していても、肺炎までに至らず軽くすんでしまうことも多いので、実は意外に感染している人は多いのではないかと考えられます」
●気管支が弱い子は、喘息の予防薬を使う方法も
一度咳が出始めると止まりにくい子の場合、何か予防策はありますか?
伊藤 「咳は風邪をきっかけに出るようになることが多いので、やはりなるべく風邪をひかないようにするのが一番の対策だと思います。よく言われることではありますが、うがいや手洗い、それにきちんと食事や睡眠をとり、規則正しい生活を送ることが大切です。
あとはマスクがおススメですね。冬の乾燥する時期でも、マスクをすれば気管に湿気のある空気を送り込めるので、気管支内部の線毛が活発に動き、痰のキレがスムーズになります。
湿度を与えるということでは、加湿器もいいのですが、手入れをきちんとして、カビを生やさないようにする必要があります。
気管支が弱いという子には、季節の変わり目など、咳が出やすいとわかっている時期だけ喘息の予防薬を使うという方法もあります。
薬はなるべく使いたくないという親御さんもいらっしゃいますが、咳で夜眠れなくなり、学校を休むということも少なくなり、快適に過ごせるようになります。かかりつけの医師に相談してみてはいかがでしょう」
正しく薬を使って、咳の苦しみを取り除くことが大切ですね。伊藤先生、ありがとうございました。
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