精神保健指定医。
筑波大学医学専門学群卒業。神奈川県立精神医療センター、国立精神・神経医療研究センター病院、東京都立多摩総合医療センター、東京都立中部総合精神保健福祉センターなどに勤務し、児童精神科医として数多くの臨床経験を持つ。
双子の二児の母。
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生活・しつけ
小学1年生 2019年1月29日の記事
幼稚園や保育園の頃に比べ、小学校では子ども同士の遊びの場に大人(先生)が介入する機会がグッと減ります。そのため、子ども自身がお友達とのやり取りに悩む場面も出てくるよう。小学1年生のお子さんをお持ちのママから寄せられた悩みを、児童精神科医の市田典子先生にお聞きする当連載。第2回では子どもの対人関係で生じた悩みについて伺います。
「小学校のクラスメイトとうまくやりとりができていないようです。気持ちを上手に伝えられず、集団生活にストレスを感じているようなのですが、なんとアドバイスしたらいいでしょうか?」(小一女児母)
保育園や幼稚園では先生から園生活について聞けていましたが、小学校に入ると学校での生活が見えづらくなるため、親としても事情がわからず不安になってしまいそうです…。
「大人にも子どもにも共通して言えるのですが、そもそも人とのコミュニケーションは、すごく精神的コストのかかる疲れるものです。大人は経験を積んでいくうちに人との距離の取り方などを覚えていきますが、子どもにはそれはまだできなくても当然です。そのため、まず親御さんに『その状況を不安がる必要はありませんよ』とお伝えしたいです」(市田先生)
親としてはつい、せっかくの集団生活だし、お友達と積極的に関わってほしいなと思ってしまいます…。
「学校や集団に苦労を感じない子ももちろんいます。けれど、自分のテリトリーで過ごすのを心地よく感じ、家で静かに過ごすのが好きな子もいる。それは、背が高い子もいれば背が低い子もいるのと同じように、それぞれの子が持つ特性でオリジナリティとも言えますね。どちらが良い悪いという性質の問題ではないと思っています」(同)
友達とうまくやりとりができないのは問題だ、という前提を親自身がはずし、ひとつの個性として受け止めることが大切なのですね。
読者の方から、「友達から嫌なことを言われたから学校に行きたくないと言われ困っている」というお悩みもありました。そんな時には親としてどう答えたらいいでしょうか?
「私は小学校というのは、『すり合わない世界』を覚える場だと考えています。私たち大人は、一見すり合っている世界に暮らしていると思いがちですが、価値観や思考がちょっとずつずれて、重なってできているのが「社会」ではないかと思うんですね。
人の考えは見えません。その見えない人の考えを、コミュニケーションや対話などを通して『自分の考えとは違うんだな』と知っていくことが大切です。ただし、大人であっても、違う考え方を受け入れるというのは大変な行為です。なので、ご家庭こそが、他人との考え方の違いに戸惑う気持ちの受け皿になってあげられると良いと思います」(同)
具体的には、どのような声がけがいいですか?
「『そんなこと言われたのは嫌だったね。その子はそう思ったのかもしれないけど、ママはそうは思わないよ。いろいろな考え方があるね』のように伝えられたらいいですね。まずは嫌だという気持ちを受け止めてあげるのが一番。徐々に、自分と違う考え方や感じ方の子がいるということを教えてあげられるといいですね。
また、子どもにとって嫌だった行為を伝えてくれた際には、『教えてくれてありがとう』や『知れてよかったよ』、『また嫌なことがあったら教えてね』と伝えてあげると、お子さんは安心すると思います」(同)
そのような声がけにより、子どもは「家というのは困ったことや嫌な気持ちをSOSとして発信していける場所なんだ」、「また嫌なことがあったら聞いてもらおう!」と思いやすくなるそうです。
それでも学校に行きたくないと言われた場合、答えに行き詰まってしまいそうですが…。
「そんな時には、もしも状況が許すならば実際に1日休んでみるのもありだと思います。気持ちにはエネルギーのタンクのようなものがあり、『行きたくない』という時はそのエネルギーが減ってきている時です。その中身が減っている時に無理をするとさらに中身を減らしてしまい、ストレス状況が長引いてしまうことがあります。その無理が小さなうちに一度心の休憩をすると、エネルギーは充電され、回復にかかる時間も短くなります」(同)
学校を休んでもいい、と考えると親のほうも張り詰めていた気が緩む気がしますね。ただ、いざ小学校を休むとなると、この子はズルを覚えてしまうのではないか…と不安に感じる方もいるかと思うのですが…。
「小学校高学年や中学生になると、だんだんとズルをすることを覚えたり、自分の考え方が出てきたりします。ですが、小学校低学年というのは、基本的にはまだ親が思っている以上に真面目な年頃です。そこを親が追い詰めてしまうと、『誰も自分をわかってくれない』という気持ちが湧いてきてしまいます。SOSを出していたら、それを一度は汲み取ってあげることを心がけていただきたいです」(同)
あれこれ不安に感じたり、変化が気になったりするのは、親御さんがお子さんをよく見れている証拠だそうです。不安になるのは大切なことであると同時に、なり過ぎてしまうと親も子も苦しくなってしまいます。心配はしてもし過ぎない、と念頭に置いて子育てに臨みたいですね。
次回は、入学後に感情を爆発させやすくなった子どもに対して、親として何ができるのかを引き続き市田先生にお聞きします。
(取材・執筆:代 麻理子)
精神保健指定医。
筑波大学医学専門学群卒業。神奈川県立精神医療センター、国立精神・神経医療研究センター病院、東京都立多摩総合医療センター、東京都立中部総合精神保健福祉センターなどに勤務し、児童精神科医として数多くの臨床経験を持つ。
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