子育ての当事者が直面するさまざまな社会問題の解決を目指すNPO法人。おもな事業に防災コンサルティングや女性のキャリア支援、被災地支援など。防災に関してはクリエイティブな視点から簡単で楽しいアイデアを数多く提供している。編集著作に『子連れ防災手帖』『子連れ防災実践ノート』『防災ピクニックが子どもを守る!』など。
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生活・しつけ
小学1年生 2018年9月3日の記事
レジャー感覚の「防災ピクニック」で備えをチェック!
親子で防災を考えよう【その3】
前回は「子育て世帯の避難バッグの作り方」について詳しくお話を伺いましたが、実は避難バッグ(非常用持ち出し袋)を準備しても、過不足や問題は発生するといいます。親子防災に詳しいNPO法人ママプラグが提唱する「防災ピクニック」という方法なら、楽しくチェックできるとのこと。引き続き同NPO法人の宮丸みゆきさんに詳しく伺いました。
●防災ピクニックって何? どんなメリットがあるの?
まずは「防災ピクニック」の概要とメリットを教えてください。
「『防災ピクニック』は避難バッグを持って出かけ、自宅以外で実際に使ってみる体験のこと。『足りない』『多すぎた』『入れ忘れた』『意外と使いにくい』などの事態はしっかり備えたつもりでも発生しますが、それらを楽しみながらチェックできる手段です。
自宅より不便な環境で試すことで、被災時に近い状態で過不足の検証や使い勝手のチェック、食料の試食などができます。また『防災ピクニック』ならレジャー感覚でできるので、備えをチェックする際のハードルや、義務感も解消できます」(宮丸さん)
非常食というと値段が高めで、家での食事代わりに試食するのはもったいない気がしますが、家族で出かけた際の外食と考えれば、ハードルは下がりますね。さらには、最近は味にこだわったものもたくさん市販されているので、美味しく食べることができるそう。試食を兼ね、賞味期限切れを防ぐためにも「防災ピクニック」は良い機会となりそうです。
●防災ピクニックって具体的にどうやるの?
具体的には、どこで・何をすればよいのでしょうか。
「難しく考える必要はありません。いちばん簡単なのは『避難バッグを持って近くの公園へ出かけ、非常食をお弁当の代わりに食べる』というもの。これだけでも必ず何か発見があります。道中の安全を確認したり、防災グッズを実際に使って、使用感を試してみたりしてください。防災ピクニックによる発見と、その後の対応の例としては、以下のようなものがあります。
・非常食が子どもに不評だった
→食べやすいもの、好きそうなものに変更
・非常用トイレを組み立てて座ってみたが、目隠しなしでは使えなそうだった
→レインポンチョを避難バッグに追加
・避難バッグの中身が多すぎて重く、着くまでに疲れてしまった
→中身を厳選して減らす
この段階で不足や不備があっても、本当の被災時ではないので最悪の事態にはなりません。このようなトライ&エラーと改善を繰り返すことで、避難バッグの完成度が上がっていきます。また、練習や試食をしておくことで被災時も慌てず対応でき、ストレスも大幅に軽減できます」(同)
●子どもとの防災ピクニックで気をつけるポイントは?
「防災」と名前はつくものの、気軽に挑戦できそうですね。子どもと実施する際にはどんなことに気をつけたらよいのでしょうか。
「進んで取り組みたくなる、再度挑戦したみたくなるよう、楽しんで行いましょう。必要以上に怖がらせないことも大切です。私たちの講座でも、パーソナルカードを書くだけで使う場面を想像して涙ぐんでしまうママがいますが、最悪の場面を想像すると怖くなり、考えるのをやめたくなるのは大人も子どもも一緒。何も備えないのがいちばん怖いこと、家族で安全に過ごすために必要なことなのだと教えた上で、防災ではなくピクニックをメインにしましょう」(同)
うまくいかなかったときの親の対応や声がけも、あくまで前向きなものを心がけるとよいそうです。
「『全部食べないと帰れないよ』『これができないと終わりにならないよ』といった無理強いはNG! たとえば『非常食がおいしくない』と不満が出たら、無理に最後まで食べさせるのではなく、『今度おいしいのを一緒にさがそうね』などと声がけして終わりにします。
非常用トイレなども最初からちゃんと使える必要はありません。まずは出かけた先(公園など)のトイレに行ければ十分。避難所などは和式トイレの場合が多いですが、公園のトイレがその練習になるケースも多いですよね。非常用トイレにもさまざまなタイプがあるので、もし失敗しても使い勝手のよい製品を探すきっかけになります」(同)
また、防災ピクニックは春や秋などの気持ちのよい季節に始めるのが良いそう。「年に1回でもよいので、気負わず続けてみて、子どもの意欲が出てきたらあえて真冬や真夏に開催しても。冬なら防寒や温かい食事の大切さ、夏なら暑さや虫への対策なども学べますよ」と宮丸さん。
その先は山や川などの自然に出かける「防災ハイキング」や、宿泊も含めた「防災キャンプ」などへのステップアップにチャレンジしてみてもいいでしょう。災害の備えはアウトドアの備えと共通点も多く、楽しみながら備えが身につくそうです。
シンプルな「防災ピクニック」なら安全さえ確保できれば、0歳の赤ちゃん連れでも始められるそう。暑さが少し落ち着いたらぜひ計画してみましょう。
(取材・執筆:高柳涼子)
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