子育ての当事者が直面するさまざまな社会問題の解決を目指すNPO法人。おもな事業に防災コンサルティングや女性のキャリア支援、被災地支援など。防災に関してはクリエイティブな視点から簡単で楽しいアイデアを数多く提供している。編集著作に『子連れ防災手帖』『子連れ防災実践ノート』『防災ピクニックが子どもを守る!』など。
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生活・しつけ
小学1年生 2018年8月30日の記事
大人用・子ども用、それぞれの非常用持ち出し袋の中身は?
親子で防災を考えよう【その2】
防災の大きな柱のひとつである「非常用持ち出し袋」の準備。子どものいる家庭の場合、どのようなポイントに気をつけて準備したらよいのでしょうか? 親子の防災に詳しいNPO法人「ママプラグ」の宮丸みゆきさんに教えていただきました。
●市販のキットを揃えれば安心…とは限らない!
前回のお話では、非常用持ち出し袋は、家族それぞれに1つずつ用意しようということでした。被災時に必要なものがひとまとめになって袋に入ったタイプも多くありますが、これを人数分揃えればいいのでしょうか?
「中身を考える際の前提としてほしいのが、被災時には『個別のニーズに合わせた支援を最初から受けるのは難しい』『子どもも大人も強いストレスにさらされる』という2点です。家族が揃っているときに災害が起きるとは限らないため、1人に1つずつ準備するのは基本ですが、持病やアレルギーの有無、性別・年齢、ライフスタイルなどによって必要な準備は大きく変わるもの。中身は家族それぞれに合わせる必要があります」(宮丸さん)
市販のセットや一般的なチェックリストなどではどうしても過不足が出てきてしまうのですね。
「それらはあくまでも“一般的に必要なもの”なので、自分や家族に必要なのか見極めることが大切です。毎日の生活を思い浮かべて『いつも使っているもの』や『自分には必要、でも支援を受けるのが難しいもの』を足していきます。
たとえばアレルギー対応食や持病の薬、メガネの予備といったもの。これらがないと『アレルギーの子どもが一日目から食事に困る』『体調が一気に悪化して命に関わる』『メガネが割れてしまって避難所まで安全に歩けない』といったことが起きます。逆に不要なものが入っていると荷物が重くなりますので、入れっぱなしにせずに外しておきましょう」(同)
●大人と子ども、それぞれ何を入れたらいい?
個人のニーズに合わせることは前提として、入れるのを忘れがちなもの、ぜひ入れておきたいものはありますか?
「大人と子ども、それぞれ以下のようなものが挙げられます。
◆大人・子ども共通
・パーソナルカード・・・名前や家族の連絡先、アレルギーの有無などを書いたもの。幼くてうまく説明できない、ケガをしていて話せないなどの状況でも自分の情報や必要なケアを伝えられる
・家族写真・・・はぐれてしまったときに周囲の協力を得て探しやすくなる。裏に名前も書いておくとよい
・マスク・・・粉じん、感染症対策。家屋が倒壊したような場合だけでなく、水害で地表に残ったヘドロが乾燥して舞い、空気中の有害物質が増すような場合にも有効
・ホイッスル・・・助けを呼ぶときに使う。叫ぶより体力の消耗が少なく、耳に届きやすい。子どもは吹き方がわからない場合もあるので事前に練習を
・母子手帳、おくすり手帳・・・コピーでOK。スマホに写真を残しても
・食料、水・・・避難先で2~3日を過ごせる量。子どもはお菓子でもOK
・着替え、下着・・・季節に合ったものを用意。子どもはサイズにも注意
・ハンドタオル、ティッシュ、ウエットティッシュ
◆大人
・持病の薬、生理用品、メガネの予備など・・・「コンタクトは粉じんがひどくてつけられなかった」という声も多いので、メガネがおすすめ
・ライト・・・照明として使うほか、夜間にトイレに行くときの安全対策にもなる。ヘッドライトタイプと据え置き型の両方を準備をするとベスト
・非常用トイレ・携帯トイレ・・・1回分のコンパクトタイプや便座に取りつけるタイプなど
・レインポンチョ・・・雨風よけという本来の目的のほか、非常用トイレを使うとき、着替えや授乳の目隠しに使える。色が濃いめで長いものだと中が見えにくい
◆子ども
・おもちゃ(音が出ないもの)
・お菓子
・キーホルダー、絵本など・・・かさばらなくてメモにも使える折り紙や、ひもだけで遊べるあやとりなど、昔ながらの遊び道具も重宝する
子どもの場合はとくに、避難という非日常が強いストレスとなり、普段とは違う言動や不眠などが見られることも多くあります。お気に入りのおもちゃや絵本、お菓子などの慣れたものが、日常の生活感覚を取り戻す大きな助けになります。避難バッグに入れるものを一緒に選んでもいいですね」(同)
●避難バッグの作り方:被災~避難生活の3つの場面を想定して備える
1人分ずつに分けるとはいえ、それなりの重さや大きさになりますよね。
「もちろん、上記すべてを常に持ち歩くのは現実的ではありません。私たちは総じて『避難バッグ』と呼んでいますが、緊急避難時/避難生活中/常時携帯用の3つの場面に合わせて揃えましょう。
1)第一次避難バッグ(緊急避難時)
ここまでに紹介したいわゆる「非常用持ち出し袋」。避難所などで2~3日分過ごせる備えを、すぐ持ち出せる場所に置いておく。よくあるひもつきの巾着袋は肩や腕に負担がかかるので、リュックがおすすめ
2)第二次避難バッグ(避難生活中)
避難の長期化に備えた水や食料など。家族分をまとめて1週間分ほど、備蓄と兼用でOK。『避難所で生活するがときどき家に取りに戻る』『自宅で避難生活を送る』といったケースを想定し、安全で取り出しやすい場所にまとめて置いておく。必ずしもバッグにまとめておく必要はないが、キャリーケースなどに入れておくと運びやすい
3)常時携帯用
外出中に被災することを想定した備え。携帯食(お菓子でもよい)、水、ホイッスル、携帯電話用モバイルバッテリー、マスク、ラジオなど。普段から持ち歩いているものは兼用でOK
中身の見直しは年に2回ほど行います。季節が変わると服装も変わりますし、とくに子どもは服のサイズやおむつの使用状況などもどんどん変わるためです。頻度は高いほどよいですが、2回にするなら冬の始まりと夏の始まりがおすすめです」(同)
一般的なチェックリストなどは項目も多くて気が遠くなりますが、毎日の生活の延長で考えるのであれば難しくないですね。まずは“マイリスト”づくりから始めてみてはいかがでしょうか。次回はこの「避難バッグ」を楽しくチェックできる「防災ピクニック」について伺います。
(取材・執筆:高柳涼子)
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