子育ての当事者が直面するさまざまな社会問題の解決を目指すNPO法人。おもな事業に防災コンサルティングや女性のキャリア支援、被災地支援など。防災に関してはクリエイティブな視点から簡単で楽しいアイデアを数多く提供している。編集著作に『子連れ防災手帖』『子連れ防災実践ノート』『防災ピクニックが子どもを守る!』など。
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生活・しつけ
小学1年生 2018年8月29日の記事
年長・小1の親子防災、チェックしておきたいことは?
親子で防災を考えよう【その1】
毎年のように大きな災害が発生している近年の日本。子どもがいると防災まで気が回らないという人も多いかもしれませんが、子どもを守るためにも備えはとても大切です。今回は親子の防災に詳しいNPO法人「ママプラグ」の宮丸みゆきさんに、幼児~小学校低学年の子どもがいる家庭の防災対策について教えていただきました。
●家族防災は「各自の安全確保」を一番に考えて
「防災」というと非常用持ち出し袋の準備や、家具の配置の工夫、転倒防止対策などが思い浮かびますが、子どものいる家庭の場合、それ以外にやっておくべき備えはありますか?
「大前提として頭に入れておきたいのが『災害は、自宅に家族が揃っているときに発生するとは限らない』ということです。東日本大震災では発生時に離れた場所にいた親子や、東京近郊で帰宅難民となって長時間、家族に会えなかった人もいました。
そんな状況でもまずは家族全員がそれぞれ自分の身を守り、元気で家族と合流できることを目標に、ふだんから備えることが大切です」(宮丸さん)
この前提に立つと、備えるべきポイントも見えてくるといいます。
「小学生になると登下校で1人になる場面も増えますし、大地震の際は激しい揺れで隣の部屋の子どものところへの移動も難しい…といった状況もあります。
小学生以上であれば避難所や避難経路、未就学児でも『テーブルの下に入る』『体を丸めて頭を守る』など、最低限の手段は教えておく必要があります。また、家族が離れた状況で被災した場合を想定し、連絡手段の共有や、1人ずつの非常用持ち出し袋の準備も必要です」(同)
●家族全員で、避難経路の「危険ポイント」「安全ポイント」をチェック!
具体的にはどんな備えが必要なのでしょうか。まずは避難所や避難経路の把握の仕方について教えてください。
「まずは家族の集合場所となる避難所がどこかを全員で確認しましょう。その上で、家や学校、職場などから自力で行けるか、ルートは安全か…などを各自について確認します。いつも通っている道が倒れた家屋などで危険になる場合もありますから、ぜひ家族で一緒に歩いて確認しましょう。歩く際には下記の『危険ポイント』と、『安全ポイント』をチェックします。
◆危険ポイント
・ブロック塀・・・新しくても施工状態によっては崩れる。大人の腰程度の高さでも子どもにとっては危険な場合も
・屋根瓦、2階以上のベランダの植木鉢・・・落ちてくる
・ガラス張りの建物・・・ガラスが割れて飛んでくる
・電柱・・・傾いたものが倒れる
・看板・・・外れて落ちてくる
◆安全ポイント
・コンビニ・・・大人に頼れる。「災害時帰宅支援ステーション」に指定されているコンビニではトイレや水などを提供してもらえることもある。
・「津波避難場所」「津波避難ビル」などの防災マーク(※)つきの建物・・・水害などの際に避難できる高い建物。中に入れないと意味がないのであらかじめ確認を。
※防災マークとは:(参照)国民生活センター『国民生活 2012年9月号』
・公園や平置きの駐車場・・・物が落ちてくる危険が少ない。避難行動中の一時的な安全確保に便利
小学生の場合は通学路も一緒に歩き、通学中に被災したら家と学校どちらに戻るのか判断する地点も決めておくとよいですね」(同)
●学校や園とも非常時の対応をしっかり共有
子どもが学校や幼稚園・保育園に通っている場合は、家族間だけでなく、学校・園側とも意識や対策を確認・共有しておく必要があります。
「特に以下の3点については、ふだん送り迎えを担当していない家族にも、しっかり情報共有しておきましょう。
・送迎バスや通学の経路・・・ルートを把握しておけば、万一のときにも『この時刻ならこのあたりにいるはず』と推測でき、親が勤務先や外出先にいる場合も、最初に向かう場所を決めやすくなる
・園・学校で被災した時に避難する場所・・・施設や所定の避難場所だけでなく、そこが危険になった場合の対応も
・引き渡しや連絡の方法・・・施設からの一斉連絡の有無や迎えに行けない場合の対応など
3.11では被災時の対応をめぐって裁判になった事例もありますが、双方にとって辛いこと。『こうしてくれるはず』という思い込みや遠慮はやめて、少しでも不安に思ったことはしっかり確認しましょう。施設側への課題提起にもなります」(同)
また、災害時は一刻も早く子どもをお迎えに行きたくなるのが親心ですが、冷静な判断が明暗を分けるケースもあるそう。
「3.11では引き渡し後に津波に呑まれて命を落とされたケースもあり、各自がその場に留まっていれば助かった可能性も検証されています。避難中や移動中も正しい情報を常に入手し、ベストな行動を取れるようにしましょう」(同)
●毎日の生活の中で確認・実践・アップデートを繰り返して
上記のような家族での防災訓練は、どれくらいの頻度で行うのが理想でしょうか。
「基本的には、『1年に1回』などあらかじめ決めておくよりも、何かに気づくたびに話し合い、軌道修正するのがおすすめです。学校や幼稚園・保育園の避難訓練も一つのキッカケになりますが、その場合は想定されなかったパターンについて考えさせるとよいですね。
例えば『授業中に地震が来た』という想定で訓練があったなら、給食中や放課後に校庭で遊んでいるときだったらどうする?下校途中だったら?と、別のシチュエーションで本人に考えさせたあと、安全かどうか一緒に検証しましょう。最初から『この場合はこうしなさい』と教えるよりも心に残ります。
また、携帯電話などを持たない小学生なら、公衆電話などから無料で伝言が残せる『災害用伝言ダイヤル』の使い方もふだんから練習しておきたいところ。体験利用できる日が月に数回あるので、活用しましょう」(同)
★『災害用伝言ダイヤル』
毎月1日・15日やお正月、防災週間などに体験利用が可能です。
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171s/howto.html
また、インターネットで動画公開されている『じしんだんごむし体操』のように、小さな子どもが身を守る方法を楽しく学べるコンテンツもあるとのこと。ぜひ親子で確認してみてください。
「どんなに備えても”想定外”は生まれますが、想定を積み重ねることでとっさの判断力や冷静さが育っていきます」と宮丸さん。今すぐ、できることから始めていきたいですね。次回は非常用持ち出し袋の備え方について、くわしく教えていただきます。
(取材・執筆:高柳涼子)
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