大和田佳世(おおわだ かよ)
絵本・児童書のライター。出版社勤務を経て、絵本紹介サイトなどで執筆。作家へのインタビューも行う。9歳、5歳、1歳を子育て中です。毎回、この時期ならではのおすすめの絵本を紹介していきます。
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小学1年生 2018年2月14日の記事
自然災害が多い日本。地震や津波はいつ起こるかわかりません。「いざというとき、自分で自分の身を守る」と気持ちの備えをしておくために、親子でこんな絵本を読んでみるのはいかがでしょうか。
『じしんのえほん こんなときどうするの?』(国崎信江 作、福田岩緒 絵、目黒公郎 監修)は、1年生の子どもたちが主人公。「きょうは じしんが きたときの からだの まもりかたを おそわりました。」という最初のページからスタートします。黒板に先生が描いているのは、ダンゴムシのポーズ。丸くなって頭を守るポーズです。
ページをめくると、それぞれ下校途中の場面、家でひとりでゲームをしている場面、公園で遊んでいる場面、スーパーにおつかいに来た場面などで、「ぐらぐらぐら」と大きな揺れが襲い、物が落っこちてくる様子が描かれます。しおりちゃんは、ランドセルを頭にのせてブロック塀から離れ、ゆうすけくんはテレビや棚から離れて、クッションで頭をおさえて丸くなっています。スーパーのみきちゃんも棚から離れてかごを頭にかぶります。
「ぐらぐらぐら」と来たそのとき、まず、一番はじめにどうやって身を守ればよいのかが大きな絵で描かれ、ページの左下に子どもへの注意事項がひらがなで、右下に親への注意事項が記されています。身を守るための、最初のアクションを確認できると同時に、親子でコミュニケーションをとりながら、災害に遭う瞬間の、いろんな場面を想定することができる絵本です。
「ひとりでちゃんとみをまもれたね。えらかったね。」とほめてあげて終わる本書は、小1の子に、地震の瞬間の対応を伝えるのにぴったり。また、地震から火災になった場合をイメージするには、『地震がおきたら』(谷敏行 原案、畑中弘子 文、かなざわまゆこ 絵)をあわせて読むのもおすすめ。阪神淡路大震災の教訓をもとに、神戸市消防局の企画・協力によって作られた絵本です。どちらも災害時に必要な事柄がいっぱい詰まっているので、親子で読んでみてくださいね。
『はなちゃんのはやあるきはやあるき』(宇部京子 作、菅野博子 絵)は、のんびりやのはなちゃんが主人公。はなちゃんの通っている保育園では月1回避難訓練があります。園長先生の放送が流れたら、みんなでテーブルの下にかくれてから避難場所へ急ぎます。 でも、はなちゃんは早歩きが苦手。ニコニコちょうちょやお花を見て、遅~い。ある日本当に大地震がやってきて…。
本書は、東日本大震災の津波で園舎が流れたにもかかわらず、園児90名、職員14名全員が避難して奇跡的に無事だった、岩手県の野田村保育所の出来事がもとになっています。その背景には毎月の地道な訓練があったといわれます。
あの日、大きな揺れのあと、冷たい風が吹き、雪が残る戸外でふるえるはなちゃんたち。歩きはじめて、手も足も冷たく棒のようになって、息がきれて、のどがひいひいなって、涙や鼻水が出てきてほっぺにはりついて…。もうだめだ!というぐらいまで歩きつづけてようやく避難所にたどりついたはなちゃんたち。
あんなに大きな津波がくると想像もしなかったときから地道な訓練を続けてきた日常と、幼い子の非常時のがんばりが、あたたかいタッチで描かれています。保育園の子どもたちが、地道に訓練を続け、いざ地震がきたときには自分で自分を守るために歩き通した姿を読めば、子どもたちにも地震の怖さや、訓練の大切さが伝わるのではないでしょうか。「保育園の子たちでもこんなにがんばれたんだから、いざというときは、がんばって逃げようね!」と小学1年生の子に声をかければ、真剣に「うん」とうなずいてくれるでしょう。
「だれも泣かず、だれもぐずらず、それはそれはりっぱだったんですよ」と職員(じつは作者の義妹)から聞いた言葉が作者の心に残り、絵本になったそうです。ちいさな笑顔と必死さが、力強くやさしく迫ってくる絵本です。
「ぐらぐら」と来たとき身を守る方法を知っていること、何よりも「自分で自分を守る」という心構えが防災につながります。絵本を、親子で心の準備をするきっかけにしてくださいね。
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大和田佳世(おおわだ かよ)
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