「市民が日々遭遇する可能性の高い危機の実態把握と、その最適な問題解決策」を確かなものとするための調査・研究、それに基づく様々な提案を行う研究所です。安全なまちづくり人づくりのための環境設計・教育プログラムの開発・地域ボランティアやPTA、警察への研修等を行っています。
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生活・しつけ
小学1年生 2018年8月28日の記事
通学路での不審者対策、親子で気を付けたいことは?
もうすぐ2学期が始まります。小学校にも慣れてきた子どもたちですが、行動範囲が広がるにつれて親としての心配も増える一方ですよね。新学期を迎えるにあたって、登下校中の安全対策を親子で話し合ってみませんか? そこで今回は、全国で体験型安全教室などを行うステップ総合研究所・主任研究員の堤紘子さんに通学路での不審者対策で気をつけたいことを聞きました。
●狙われやすい通学路。あやしい場所の4つの特徴は『ひ・ま・わ・り』
毎日決まった時間に決まった場所を通るのが通学路。それゆえ、犯罪者にとっては下調べがしやすく、子どもに目をつけやすい場所でもあるのだそう。
「犯罪者の目標は『誰にも見とがめられないままに確実に目的(犯罪)達成し、捕まらない』ことです。なので、できるだけリスクを犯さずに目的を達成しようと、入念に下調べをします。ターゲットの子どもが何時頃その場所を通り、どこで友達と別れてひとりになるのか、どの家に入るのか、事前に調べて待ち伏せしていることもあります。
誰にも見とがめられたくない犯罪者は、特に人の目と声を嫌います。通学路の中でも、人目につきにくい道や逃走しやすい分かれ道など、犯罪者が好む場所には特徴があるので、親子で一緒に歩いて確認してみるといいでしょう」(堤さん)
犯罪が起きやすい場所の傾向として覚えておきたいのが、次の4つの特徴。『ひ・ま・わ・り』の合言葉で覚えておくといいそうです。
【あやしい場所の4つの特徴】
ひとりだけになるところ
まわりから見えない(見えにくい)ところ
わかれ道・わき道やうら道の多いところ
りようされていない家(空き家)や公園など
「また、落書きや放置自転車、不法投棄されたゴミなどが多い環境も犯罪者を呼び寄せる要因になります。違法な状態や汚れている状態を放置していても地域の人が気にしないということは、子どもに声をかけても気にする人がいないだろうという視点につながるのです。犯罪が起こりやすい環境をできるだけなくしていくことが大切です」(同)
通学路上のあやしい場所はどこなのか、安全に通学できる環境なのか、親子で一緒にチェックしておきたいですね。
●あやしい人の5つの特徴は『は・ち・み・つ・じま・ん』
不審者対策を子どもに教えるにしても、どんな人に気をつけたらいいのか説明するのは難しいですよね。そこで覚えておきたいのが次の5つの特徴です。
【あやしい人の5つの特徴】
はなしかけてくる人
ちかづいてくる人
みつめてくる人
ついてくる人
じっとまってる人
ん?とちゅうい!
「犯罪には前兆行動があります。それがこちらの5つの特徴で、子どもたちには『は・ち・み・つ・じま』の人がいたら、『ん? と注意しよう!』と教えています。中でもしつこく話しかけてくる、見つめてくるケースは非常に多いです。これらはターゲットに対してコミュニケーションを求めている行動ですので、あやしいと思ったら近寄らない(相手の身長×0.8は間隔をあける)、視線をそらす、キッパリ断るなどしてすぐにその場から離れましょう」(同)
どんな子どもが狙われやすいのでしょうか?
「犯罪者は巧みに「隙間」を狙ってきます。子どもの中でも、とくに『ぼんやり』『フラフラ』『ウロウロ』『キョロキョロ』している子どもは隙があるように見られターゲットにされやすいです。また、大人っぽい服装が自身と釣り合っていない「アンバランスな子」も狙われやすいです」(同)
とくにひとりで歩いている状況は狙われやすいそうなので、できれば同じ方向の友達と一緒に登下校できるといいですね。
●徐々に距離を縮めてくるケースも。子どもへの声かけ事例
子どもへの声かけ事件にはどんなものがあるのでしょうか? 実際にあった声かけのパターンを教えてもらいました。
・チョイ声がけ型 「ちょっとちょっと」「すいませーん」
・権威誇示型 「おわまりさんだけど、少し話を聞かせてくれる?」
・恐怖心あおり型 「言うことを聞かなければ痛い目にあわすぞ!」
・親切心要求型 「お腹が痛いんだけどトイレに連れていってくれないかな?」
・緊急事態発生型 「お母さんが事故で入院したんだ! 車で病院に連れて行ってあげる」
・緊急行動要請型 「早く早く! 早くしないと間に合わない!!」
・利益供与型 「お菓子あげるから、おじさんのお願い聞いてくれるかな」
・魅惑誘導型 「キミかわいいね、ちょっと写真撮らせてくれないかな?」
・好奇心触発型 「かわいい猫がいるんだけど見に来ない?」
・身の上相談型 「どうしたの?話聞いてあげるよ、困ってないかな?」
「このほかにも、数日かけて徐々に仲良くなり、犯行に及ぶケースもあります。子どもにとって仲良くなった人はみんな『知り合い』です。だから『知らない人にはついていかない』という約束では不十分。知っている人でも、保護者が許可をしていない人には絶対についていかないと約束しましょう。とくに「案内して」「こっちに来て」といった、その場から身体を動かそうとする声かけには絶対に乗ってはいけません」(同)
声をかけられてもきっぱりと断れるように、具体的な声かけのパターンを想定して子どもとやりとりしてみるとよさそうです。
●安全確保のアクションは日頃からの練習が大事
いざというとき、怖くて身体が動かないこともあると思います。そうならないためにできることはありますか?
「きっぱり断る、大声で叫ぶ、走って逃げるといった基本的なアクションを日頃から練習しておきましょう。練習したことがないのにいきなり適切な行動をとれる子どもは多くありません。私たちの調査では、危機に遭遇した子どものうち、走って逃げられた子どもはおよそ半数にとどまり、5人に1人は「何もできなかった」ということがわかっています。一方で、体を使って練習すると、きちんと対応できるようになるということもわかっています。
とくに大声は小さな子でもできる護身術。いかなる犯罪者も犯行時はビクビクしています。もし声をあげて周りから助けが来なくても、犯人がびっくりして逃げてしまうケースもありました。
そして、危ないと思ったら全力で“20m”走って逃げることも覚えておいてください。犯罪者は追いかけるうちにやる気が下がり、20m追いかけても追いつくことができなければあきらめるということが実験からわかっています。近くの家に『ただいま!』といって駆け込むのも有効です」(同)
ランドセルに防犯ブザーをつけている子も多いですが、これも犯罪者の撃退に効果があるのでしょうか?
「もちろん、大きな音が出る防犯ブザーは有効ですが、私たちが調査した結果、実際に危機に遭遇した時に鳴らせる子は1%しかいなかったんです。ですから防犯ブザーを使うのも日頃の練習が必要です。後ろから羽交い締めにされても鳴らせる位置にあるか、紐が短すぎて手が届かないことはないか、電池は切れていないか、日頃から防犯ブザーを鳴らす練習と作動チェックをしておきましょう」(同)
安全確保のアクションを練習するほかに、普段から親子でなんでも話せる関係を作ることも大切だといいます。たとえば『今日帰り道にこんな人に会ったんだよ!』なんて話が日常会話で出てきたら、子ども自身が問題だと思ってなかったとしても、早い段階で親が異変を察知することができるかもしれません。
「そして『あなたは家族にとっても地域にとってもすごく大切な存在なんだよ』ということを繰り返し伝えてあげてください。そのためにも、まずは親が隣近所や通学路の商店の人たちと挨拶しあえる関係になって、いざというときに助けてくれる大人を増やしておきたいですね。安心感がベースになければ、犯罪者に遭遇した時、周囲の大人が信用できず助けを求めることもできなくなってしまいます。自分は大事に思われているんだという自己肯定感が、危機と対峙した時に乗り越える勇気になっていきます」(同)
子どもを狙う犯罪者がいることを教える一方で、周囲には自分が困った時に助けてくれる大人がたくさんいるということも伝えていかなければならないのですね。新学期に向けて、親子で防犯への意識を高めていきたいですね。
(取材・執筆:宇都宮薫)
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