「水辺の事故ゼロ」を目指してさまざまな活動を行う協会。監視・救助のほか、ライフセービングに関する人材育成、広報・啓蒙、子どもや青少年への安全教育、環境保全など、水辺の安全や安心に関する事業を幅広く手がけている。
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週末・その他
小学1年生 2018年8月3日の記事
夏休みの海のレジャー、家族で安全に楽しむには?
夏ならではの楽しみのひとつが海水浴。毎日暑い日が続くなか、夏休みに海に行く計画立てているご家庭も多いのではないでしょうか。今回は海のレジャーを家族で安全に楽しむために気をつけたいポイントについて、「日本ライフセービング協会(JLA)」に教えていただきました。
●水難事故防止のため、海についてしっかり予習しよう
はじめに、海での事故の現状を教えてください。
「警察庁が発表した2017年の統計によると、昨年の水難による死者・行方不明者数は679人で、その約15%が海で起きています。行為別で見ると、全体では魚採りや釣りでの事故が32.3%を占め最も多いですが、中学生以下の子どもの場合、水遊び中の事故が46.2%でトップです」
水難事故を未然に防ぐためにできることはなんでしょうか。
「理想的なのは、海ならではの潮の流れや満ち引き、それによる危険などをしっかり頭に入れておくこと。今回は特に気をつけてほしいポイントを5つ、ご紹介します。
【1】リップカレント(離岸流)…沖に向かう水の流れ。どんどん沖に流される秒速2mくらいの速さのものもあり、多くの溺水事故の原因となっている
(イラスト提供/日本ライフセービング協会)
【2】サイドカレント…海岸沿いの横方向の流れ。サイドカレントがリップカレントに向かっている場合、横に流されたあと沖に流される
【3】逆潜流…波打ち際が急に深くなる海岸で発生する、海底に沿って沖に向かう流れ。子どもは足を取られやすい
(イラスト提供/日本ライフセービング協会)
【4】干潮と満潮…海の潮位が上がるのが満潮、下がるのが干潮。それぞれ1日に2回ずつ、6時間ごと交互に繰り返す
【5】インショアホール…砂浜の所々に波の作用などで生まれる深い穴。潮が満ちると見えなくなり、「浅瀬のはずが急に足がつかなくなる場所」になる。子どもが溺れる大きな原因のひとつ
(イラスト提供/日本ライフセービング協会)
たとえば離岸流なら、まずは横に泳いで離岸流から脱してから、陸に向かって泳ぐといった適切な対処法があります。こうした事前知識があれば、危険に直面したとき、より冷静に行動できるようになるのではないでしょうか」
●浮き輪やライフジャケットを着けても、油断できないのが海
やはり、浮き輪やライフジャケットを着けさせるべきでしょうか?
「浮き輪やライフジャケットは安全確保の手段のひとつですが、浮力を確保できて呼吸がしやすくなるメリットの一方で、着けていることで波や風、潮の流れの影響を受けやすくなり、進みたい方向とは違う方に流されてしまう場合があるというデメリットもあります。これがパニックにつながり、溺れの一因になることも。また、きちんと体に密着するものを選んで着用させないと、顔を覆って呼吸や泳ぎを妨げるなど、逆に事故を招いてしまうことにもなりかねません。
浮き輪やライフジャケットがあるからと安心してしまう保護者が多いと感じますが、それだけで“絶対安全”というものではないので、装着しても子どもから絶対に目を離さず、なるべく手の届く距離で一緒に遊泳してください。また、時には浮き輪から落ちる場合もありますから、浅く安全なところで一緒にいろいろな状況を試しておき、どんな時も落ち着いて対応できるようにしましょう」
●安全のために海水浴当日に気をつけたい3つのこと
海水浴当日、海に行ってから気をつけたほうがいいことを3つ教えてもらいました。
【1】台風や雷など天候の情報、遊泳状況をチェック
「まずは台風や雷の情報をしっかりチェックして、国内に接近している場合は海に近づかないようにしましょう。現地に着いてからも遊泳状況や天候をつねにチェックします。海水浴場であれば、旗の色(青=遊泳可、黄=遊泳注意、赤=遊泳禁止)で確認できます。遊泳注意の場合は理由を確認したうえで判断しましょう」
【2】お盆時期など、混雑時には迷子対策を
「海水浴客が増えると迷子も増えます。対策としては現地に着いたらパラソルや荷物などを置いた場所の目印を決めておくこと。子どもには、迷子になったらライフセーバーのところや監視本部に行くように伝え、場所も教えておきましょう。子どもの水着には名前を書いておくことや、水着の特徴をライフセーバーに伝えていただけると、早期発見につながります」
【3】海に入ったら陸上の目印を決めておく
「海に入ったら必ず遊泳エリア(赤と黄色のエリアフラッグの間、ロープで囲まれた中など)で遊びます。入ってすぐに陸上の目印を決め、流されていないかマメに確認するよう子どもに言い聞かせましょう」
ライフセーバーは救助のプロというイメージがありますが、その他にも当日の海の状況や安全に遊べる場所、離岸流などの危険な場所を教えてくれたり、迷子など困った際に助けてくれる存在だそう。ライフセーバーがいる海水浴場を行き先に選ぶことも、安全に楽しむカギになりそうですね。JLA認定ライフセーバーがいる海水浴場は以下のサイトで紹介されています。
https://jla-lifesaving.or.jp/watersafety/lifesaver/
●他にも気を付けたい! 海での危険は?
さらに、夏の海ならではの危険には、以下3つのことがあるそう。
・クラゲによる被害・砂浜を裸足で歩いてのケガ
・やけど
・日焼け/熱中症
「クラゲによる被害はとても多く、過去6年間で76,000件以上発生。海水浴期間はどうしてもクラゲの発生時期とかぶります。訪れた海にクラゲが発生している場合には、ラッシュガードなど体に密着した衣類を着用し、できるだけ肌の露出を抑えて海に入るようにしましょう。クラゲの発生状況は現地のライフセーバーに確認すると教えてくれますよ。
もし、クラゲに刺されたかな?と思ったら、痛みの度合いに関わらず、すぐに海から上がりましょう。体質等によってはアナフィラキシーショックを引き起こし、呼吸困難などの症状が発生することも。このような場合には、すぐに119番通報して救急車を呼んでください。
アナフィラキシーショックでなくても、痛みを軽減させるために次のような処置を行いましょう。
1.触手をピンセット等で取り除く
2.1で取り除けない場合は、海水で触手を洗い流す
3.40度以上のお湯で温めるか、氷水や氷嚢等で冷やす
最終的には医療機関での受診をお勧めします」
「また、つい解放的な気分で裸足になってしまう気持ちもわかりますが、砂浜には細かいゴミやガラスの破片、木片などがあちこちに落ちています。高温の砂浜で足をヤケドするケースも多いので、サンダルは必ず履きましょう。
日焼けや熱中症が怖いのは、街中でも海でも同じ。特に海は、海や砂浜からの照り返しもあり、日差しを遮る場所や涼める施設が近くにありません。また、すぐに海水に入れるため、汗をかいていることに気づいていないケースが多く、脱水による熱中症にも注意が必要です。過度な日焼けはそのとき大丈夫でもあとになって皮膚がただれることもありますから、『気づいたらヤケド状態』とならないよう気を付けましょう」
とても楽しいけれど危険も多い海。親子でしっかり予習・準備して安全に楽しみましょう。
(取材・執筆:高柳涼子)
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