塩谷 京子(しおや きょうこ)
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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生活・しつけ
小学1年生 2018年6月11日の記事
「うちの子、本をまったく読まないんです」と悩むママは多いもの。前回は、子どもに本を親しませるための環境づくりについてお伝えしました。今回は、具体的にどのようなジャンルの本を勧めていけばよいか、読書から得られる子どもの成長についても含めて、引き続き元小学校の教員であり大学の客員准教授として活躍されている塩谷京子先生にお話を伺います。
親自身が読書している姿を見せるなど、本が日常的にある環境づくりを意識したら、次はどんな本を子どもに勧めたらいいかが気になるところ。でもその前に、「読書がもたらす効果について、ちょっと考えてみましょう」と塩谷先生。
「世の中には、実際に自分で動いて体験できることと、現実には体験できないことの両方があります。たとえば、キャンプに行って魚をつかまえた体験からは、岩陰に魚がいるという知識を得ることができます。でも、ほかの魚はどこにいる? どんな種類がいる?といったことを、すべての川に行って確かめることはできませんよね。そこで、図鑑を見たり科学館に行ったりすることで、実際の体験では得ることができない多くの知識が補完できるのです」(塩谷先生)
さらに、知識的なことだけでなく感情の疑似体験も、読書を通じてできるのだと塩谷先生。
「日常生活の中で体験できる感情にはある程度限りがありますが、本の世界でなら、感情もさまざまなものを擬似体験できます。
うれしい、悲しい、怖いといった感情だけでなく、『友達とケンカをしたとき、こんな言い方をすると相手はこう思う』といった言葉の言い回しや複雑な感情の抱き方も、物語での疑似体験を通して得ることができるのです」(同)
そして、子どもにより多くの知識を得させたいか、さまざまな感情を疑似体験させたいかによって、勧めるジャンルや、やるべき声がけが変わってくるのだと塩谷先生は続けます。
「もしも『うちの子は感情的な部分が足りないな』と思ったら、ストーリー性のある物語を読み聞かせする、またはドラマや映画を一緒に観ることから始めても構いません。一緒に本を読んだり映画を見たりすると、感情が動きますよね。ママが涙ぐんでいる姿を見たら、『ママどうして泣いてるの?』と子どもは聞くでしょう。それに対して、ママの感想や思いを伝えて感情を共有しましょう。
『知識的な部分を増やしてあげたいな』と思うならば、まずは夜空を一緒に見上げたり、道で小石を拾い集めてみましょう。そして、図鑑を広げて『この間見たのはコレだね!』と確認し合うところからはじめてみてはどうでしょうか。新たな知識が増えると、子どももさらに自分で掘り下げて調べたくなるかもしれません。
そして、疑似体験した感情を現実とつなげることや、体験で得た知識と本の中の知識をつなげることが、とても大切です。本で得たものといま自分がいる現実とをつなげることで、感情や知識がしっかりと子どもの中に刻まれていくのです」(同)
読書を通じて疑似体験したことが現実とうまくリンクすると、子どもの言動にも変化が見られるのだそうです。
「たとえば、初めて子どもがお友達を助けてあげたとしたら、その行動の前に、子ども自身の心の動きがありますよね。そして、それは過去にママが人を助けるのを見た、そういった物語を読んだなど、何かきっかけとなる出来事が背景にあるはずなんです。読書での疑似体験が子どもの心を育むと、現実での新しい行動にもつながっていきます」(同)
そう考えると改めて、読書を通じて得るものはとても大きいのだなと感じます。
「『向上心を持ちなさい』と言ったって、『よし、向上心を持とう!』とはなりません。でも、頑張っている親の姿を見たり、先生や友達に感化されたり、過去に活躍した偉人たちの伝記を読んだりすることで、『よし、自分も頑張ろう』と思えませんか? そんな子どもの心を動かす原動力のひとつに読書があってほしいなと思います。成長の土台になっていきますよ」(同)
2回に分けて子どもの本嫌いを改善させるための方法を教えてもらいましたが、本当に大丈夫かな、本を手に取るようになるかな、と不安な人もいるかもしれません。
「今回お伝えしたことは、いずれも今日明日で効果が出てくるものではありません。嫌いなものを好きにするのは難しいものです。たとえ親が強制的に読書を勧めて、その瞬間はイヤイヤ読んだとしても、きっと長くは続かないでしょう。
けれども、少しずつ環境を整えて時間をかけて育んだことは、子どもの中にしっかりと残ります。アニメを観るのが好きな子なら、次は演劇を観せたり、原作のコミックを勧めてみたりと、メディアを変えて少しずつ本に近づけていくのもいいですね。だから、焦らなくても大丈夫です!」(同)
実際に筆者の息子も、これまで家ではほとんど本を読まなかったのですが、先日恐竜博物館に行ったことで、本棚に置きっぱなしだった恐竜の図鑑を読むようになり、隣に置いてあった人体の図鑑も手に取るようになりました。最近は、毎晩いろいろな図鑑を開いています。本がある環境と小さなきっかけ次第で、自分から本を手に取って読む姿が見られるのも夢ではないかも! ぜひ塩谷先生のアドバイスを、じっくりゆっくりと取り組んでみてはいかがでしょうか。
(取材・執筆:水谷映美)
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塩谷 京子(しおや きょうこ)
現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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