杉江松恋
1968年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。文芸評論家、書評家、作家。わが子が小学4~6年生の3年間PTA会長を務め、そのときの体験をまとめた『ある日うっかりPTA』(KADOKAWA)を2017年に上梓する。集団行動が苦手なヒゲで巨漢の著者が、PTAの組織に飛び込み感じたこととは…。作家ならではの客観的な視点と、細微に及ぶ下調べでPTAについてレポートしている。
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学校・まなび
小学1年生 2018年4月9日の記事
わが子の小学校入学と同時に、多くの保護者が加入することになるPTA。入学式の後や保護者会で大まかな説明はされたものの、自分がどんなふうに関わったらいいか、いまいちピンと来ていない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「PTAって何なの?」「どのように関わっていったらいいの?」ということを『ある日うっかりPTA』の著者である杉江松恋さんに聞きました。杉江さん自身、PTAとはまったく無縁のところから、ひょんなきっかけで3年間PTA会長を務めた人物。前編では「PTAってそもそも何なの?」という基本的なところをお伺いします。
そもそもPTAは、何のためにあるのでしょうか。
「PTAというのは“Parent Teacher Association”の略であるとおり、保護者と教職員が学校のために活動する組織です。勉強を教えることは先生方の仕事ですが、PTAではそれ以外で、学校生活を送るために必要なことをサポートします。分かりやすい例では通学路の防犯パトロールや、運動会などの行事のお手伝いがありますね。
こうした“先生の職務ではないけれど、誰かがやった方がいい。でも個人ではできない”ということを引き受けるのがPTAの役割です。ただ、一人ひとりがバラバラにやっても統率が取れないので、まとめ役としていわゆる“役員”と呼ばれる役職が置かれることになります」(杉江さん)
PTAにもいろいろな役職があるようですが、全貌がよく分かりません。どういった組織で、どのように運営されているのでしょうか。
<PTAの一般的な組織> ※学校ごとに異なる
・執行部(運営役員とも呼ばれる)(会長、副会長、会計、書記)
・各委員会(~部と表記する学校もある。例…校外部、広報部など)
―学級委員会 … クラスへの情報伝達や、保護者会後の茶話会の準備を担当
―校外活動委員会 … 通学路の安全パトロールや地域との連携を担当
―広報委員会 … 『PTAだより』などと呼ばれるお便りの制作・発行を担当
―家庭教育研究委員会 … 保護者勉強会の主催を担当
―体育保健委員会 … 運動会の準備や運営補助を担当
―給食委員会 … 給食試食会の主催を担当
―役員推薦委員会 … 時期役員選出の準備を担当
・一般会員
「組織図や運営方法は学校によって違いがありますが、一般的な例として、上記の組織で見てみましょう。まず、PTA活動の要を担うのが各委員会です。『校外活動委員会』は通学路の見守りや地域との連携を担当。『広報委員会』はPTAだよりの制作・発行を担当…というように、PTAの具体的な活動は委員会を通して行われます。
それぞれの委員会は、委員長・副委員長などの役員と呼ばれる人と、各クラスから数名ずつ選ばれる、いわゆるヒラの委員とで構成されます。また、例えば『校外活動委員会』の安全パトロールのように、一般会員(委員会に入っていない人)に協力してもらう活動もあります。委員は、そのための持ち回りリストの作成や、急な用事などで参加できなくなった会員の代わりを探すなど、運営がスムーズに行くための準備や調整を行います。
各委員会で決まったことは運営委員会(役員会とも呼ぶ)で共有され、各クラスの学級委員を通じて保護者に周知されます。この運営委員会に出席する人たち(執行部、各委員会の委員長、各クラスの学級委員)を『役員』と呼んで、通常の委員と区別することも。運営委員会には先生方の代表も立ち会い、学校側や地域からの意見や要望が出されたりします」(同)
執行部というのは何をする人たちなのでしょうか?
「『執行部』は、各委員会に割り振れないPTAの仕事全般を受け持つことが多いです。前出の運営委員会の招集や、地域や近隣校PTAとの連携会議の参加などがあります。執行部の仕事で一番大きいのはPTA総会の招集で、一般会員に対して前年度の決算を報告したり、その年の予算の承認を取ったりします」(同)
よく「役員がなかなか決まらなくて…」という話を聞きますが、役員決めはどんな方法でやるのでしょうか?
「一年生の場合、入学式の後や保護者会の最後に、先生から『どなたかやりませんか?』と話を振られることが多いようです。学校によってはそのタイミングで前年のPTA役員が各クラスを周り、PTAについて簡単に説明することもあります。もし委員や役員をやってみたいと思っているなら、その場で挙手すればいいだけです。
ただ、なかなか手が挙がらないことも多く、先生の方から『上にお兄さんのいる、○○君のお母さん、どうですか?』などとお声がけがあることも。特に学級委員は負担も大きいので、毎年決まりにくいようです。
PTA会長などの執行部の役職は、『役員推薦委員会』によって事前にリクルーティングが行われる学校が多いと思います。私の場合、『自由業で、日中自由になる時間が作りやすかったこと』、『学童の父母会委員をやっていて、熱心な人だと思われたこと』がスカウトの要件を満たし、会長職へのお声がかかったのかな?と思っています。執行部はとにかく仕事量も多く、平日昼間の集まりも多い。会長や副会長は、その学校のPTAの代表として地域のイベントの来賓となることもあるので、そういった『リクルーティング』の手法が取られるのでしょう。その後、PTA総会や委任状によるPTA会員の総意を得て、晴れて執行部就任となります」(同)
最近はPTAに「ポイント制」を導入しているところが多いと聞きます。ポイント制とはいったいどんな仕組みなのでしょうか。
「PTAのポイント制は『PTA活動の負担の不平等をなくそう』という目的で生み出された制度です。例えば、学級委員などの役員をやったら50ポイント、ヒラの委員をやったら30ポイント、一般会員として防犯パトロールに協力したら1回5ポイント…というように、負担の大きさでポイント数を決めておいて、卒業までに何ポイント貯めましょうという仕組みです。
従来の委員・役員の決め方だと、責任感が強い人や、同調圧力に弱い人に負担が偏ってしまうので、それを平等にしようと考えられたのだと思います」(同)
卒業までにポイントを貯められないと、ペナルティがあったりするのでしょうか。
「そもそもPTAへの加入自体が任意で、強制力はありません。なので、いろいろな理由でPTA活動に参加できず、卒業までにポイントが貯まらなかったからといって、何か罰則が生じるというのはおかしいですよね。
参加できない人がいることで他の人の負担が増えるというのなら、活動内容を見直して、不要なもの、時代に合っていないものは削る。その上で、できる人が、自分のできる分だけやるのがいいのではないかと、私は思っています。実際、そういったPTAの省エネ化も、多くの学校で進んでいるようです」(同)
PTAについての基本的なしくみや役割が分かったところで、次回は「一年生のうちにやるなら、どの委員がオススメ?」「平日の集まりが多いって本当?」など、より実践的なことについて、引き続き杉江さんにお聞きしたいと思います。
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杉江松恋
1968年東京都生まれ。慶應義塾大学卒業。文芸評論家、書評家、作家。わが子が小学4~6年生の3年間PTA会長を務め、そのときの体験をまとめた『ある日うっかりPTA』(KADOKAWA)を2017年に上梓する。集団行動が苦手なヒゲで巨漢の著者が、PTAの組織に飛び込み感じたこととは…。作家ならではの客観的な視点と、細微に及ぶ下調べでPTAについてレポートしている。
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