札幌市立屯田小学校 校長。
北海道教育大学札幌分校卒業。札幌市立小学校教諭、北海道教育大学附属札幌小学校教諭を経て、現職。文部科学省「次世代学校支援モデル構築事業」事業推進委員(2017~)の他、北海道社会科教育連盟委員長等を務める。
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学校・まなび
小学1年生 2018年7月11日の記事
入学して初めての夏休み。子どもがたくさんの宿題を持ち帰る中、気がかりなのは「自由研究」ではないでしょうか? 自由と言われても、どんなことをすればいいの? 子どもに任せておいてもいいの……? など、頭に浮かぶ疑問はさまざま。札幌市立屯田小学校 校長の新保元康先生に、その目的や考え方などをお伺いしました。
親世代が子どもの頃から聞き慣れている「自由研究」だけに、改めて考えると説明が難しいもの。そもそも「自由研究」とはどんなものなのでしょうか?
「自由研究とは文字通り、子どもが自由に研究することです。子ども向けに付け足すなら『先生に与えられた夏休みの宿題に取り組むだけでは不十分。なぜ? どうして? と思っている問題を自分で研究しましょう!』という説明になるでしょうか。社会の変化は加速度を増し、複雑で予測困難になりつつあります。子どもたちが未来を生き抜く力を獲得するには、与えられた宿題や課題を黙々とこなすだけでは足りないのです。自ら問題を発見し、自ら学ぶ力が求められています。その力を伸ばすために、自由研究がますます重要性を高めています」
これからの時代を担う「自ら学ぶ力」を養うものなのですね。ただ、親の世代が子どもの頃からあったような……。
「そうです。自由研究は最近登場したわけではありません。自由研究の歴史は、大正時代にさかのぼるといわれています。戦後最初に出された学習指導要領には、国語や算数に並ぶ教科として自由研究がありました。その学習指導要領には、『児童の個性の赴くところに従って、それを伸ばして行くことに、この時間を用いて行きたい』との記載があり、4年生以上で週2~4時間の授業が行われることになっていました。
日本での自由研究への関心は、昔から強かったのです。それが今でも学校、ご家庭に綿々と受け継がれているのではないでしょうか。今の学校では、当時の学習指導要領に載っていたような『子どもたちの問題意識に基づく学習』は、総合的な学習の時間で展開されています」
大正時代から「自由研究」の言葉があったとは! それが、夏休みの宿題として定着していったのでしょう。
自由研究は、どんなことをやればいいのでしょう。「自由に」と言われるだけで、子どもの頃に毎年困っていた方も多いのではないでしょうか。
「何をするかはまさに自由です。テーマを決めた研究はもちろん、工作や裁縫といった手作り系など、いろいろな方法が考えられます。さまざまなキットや児童向け書籍はもとより、昨今は、Web上にたくさんの事例が紹介されています」
昔と違って、今はテーマや事例が探しやすくなっているのかもしれませんね。それらの事例を分析すると、次のように分けられるそうです。
①調査型自由研究 例)スイカの値段・味・産地調べ
②実験型自由研究 例)塩の結晶を作る
③観察型自由研究 例)天気、雲、動植物の観察
④工作型自由研究 例)マイ貯金箱、アクセサリー作成
⑤芸術型自由研究 例)絵を描く、焼き物を作る
⑥旅行型自由研究 例)家族旅行の記録
⑦作文型自由研究 例)日記や小説を書く
⑧料理型自由研究 例)夏休みのお昼ご飯は自力で作る
これらをミックスしても面白そうですね。
また、近頃はたくさんの企業や団体が子ども向けのイベントを実施しています。内容は年々工夫され、とても充実しているとのこと。これらを活用すると、親の手伝いが難しいテーマでもチャンレンジできるかもしれません。
テーマを決める際、大切なことがあると新保先生は言います。
「ひとつは、子ども任せにしないこと。子どもの『なぜ?』『どうして?』が原点となりますが、自由研究には大人のサポートが欠かせないのです。自由研究は『親子の知的な探険』と考えるといいでしょう。親子で一緒にワクワクドキドキしながら、『なぜ?』『どうして?』を追究していくのです。夏休みが終わると、『子どもより私の方が熱中しちゃって……』と笑うお母さんもいらっしゃいます。それでいいのです。子どもはちゃんと大人が熱中する姿を見ていて、そこからも学びを得ています」
さらに、テーマ決めにもうひとつ欠かせないことがあります。
「いろいろ話したり相談したりするのはもちろん、迷っていたら選択肢を示してあげるのもよいでしょう。ただし、最後は子どもに決めさせてください。『自分で決めた』ことで、その研究は子どものものになります。そして、その決断と努力を家族みんなで認め、喜び合いたいですね。それが、ご家庭での夏の大きな思い出になるでしょう」
自由研究は通常、教科の成績や通知表には関係がありません。「だから、安心して思い切った研究に取り組んでみてください」と新保先生。面倒な宿題ととらえず、その夏を思い返せるような研究ができたら、こんなに嬉しいことはありません。
後編は、自由研究のテーマを具体的に決める方法やヒントを紹介します。
(取材・文:栃尾江美)
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札幌市立屯田小学校 校長。
北海道教育大学札幌分校卒業。札幌市立小学校教諭、北海道教育大学附属札幌小学校教諭を経て、現職。文部科学省「次世代学校支援モデル構築事業」事業推進委員(2017~)の他、北海道社会科教育連盟委員長等を務める。
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