竹内謙彰(たけうち よしあき)
立命館大学産業社会学部現代社会学科教授。
子どもを含む自閉症スペクトラム障害の人たちへの支援、9、10歳ころの子どもの発達的特徴などの研究とともに、方向感覚の個人差についての研究も長年行っている。
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生活・しつけ
年長 2016年12月7日の記事
お子さんが来春から通う小学校の通学路の距離は、どのくらいありますか? 学校と自宅が離れていて「うちの子、学校までの道順、覚えられるかな?」と、心配な方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、入学前後の子どもの方向感覚について、空間認知発達の専門家である立命館大学教授の竹内謙彰先生にうかがいました。
●6〜7歳の子は、「目印」で道順を覚える
子どもに限らず、方向音痴で道が覚えられないという人は多いですが、そもそも道に迷わずに、目的地にたどりつくようにするには、どんな力が必要なのでしょうか?
竹内 「方向感覚とは何かというところから考えると、ひとつは全体を俯瞰して、方角や方向をとらえる力、もうひとつは、空間行動における記憶、つまり目印を特定して覚える力の2つがあると思います。この2つの力を使えるようになると、道に迷うこと少なくなります。
では、何歳くらいからこの力が身につくかというと、前者の方位に関する力は、幼児や小学校低学年の子には難しく、だいたい小学校高学年以降と考えられます。
一方、目印に基づいて方向を認識する力については、かなり小さいころから身についていて、自力で移動を始めるようになったくらいの赤ちゃんも、目印を覚えて動いていることがわかっています。
また、幼児期の終わりから小学校低学年の年代の子に、知っている場所の地図を描かせてみると、いわゆる『地図』というよりも、記憶にあるポイントを線で結んだ『ルート』だけか、それに分岐(交差点)をいくつか付け加えたものを描きます。
3〜4年生くらいになると、ルートをネットワークとして描くことができ始めます。3年生ごろから、学校で地図を使った学習が始まることで、俯瞰した視点からの地図空間理解もできるようになっていきます。たくさんの経路のどことどこがつながっていて、どこを通ると近道ができる経路だということなどもわかってくるようになります。
これらのことから、6〜7歳くらいの子は、いわゆる目印記憶が基本で、まだ方向や方角といった概念はありませんが、ルートをたどるという形で道順を覚えることができると考えられています」
●通学路は、1度ではなく何度か歩いてみる
なるほど。では、入学前に、通学路を教えるときなどのポイントなどはありますか?
竹内 「大切なのは実際に歩いてみること。それも1度でなく、複数回歩くことです。実際に歩いた感覚と、そのときどきに記憶された目印が結びついて、目的地までのルートが頭に入ります。ただ、1回では覚えきれないので、何回か歩いておいたほうがいいでしょう。
最も重要なのは、子どもが『連れて行ってもらう』という意識ではなく、『自分で行く』という主体性を持つということです。これは大人でもそうですが、旅行のときなどに先導役がいて、その人についていくだけだと、要所要所の観光スポットは覚えていても、道順というのはなかなか覚えられないものです。
ですから、1回目は親が教えながら歩いて『次は自分で歩くんだよ』と伝えましょう。そして2回目以降は、ときどき親が『ここからどう行くんだっけ?』などと言葉がけをしながらも、基本的に子どもが自身自分で道をたどって歩くようするとよいでしょう」
道順も、自分で「やる気」にならないと覚えられないということですね。
竹内先生、ありがとうございました。
次回は、方向感覚を養うためにはどうすればよいかについてうかがいます。
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竹内謙彰(たけうち よしあき)
立命館大学産業社会学部現代社会学科教授。
子どもを含む自閉症スペクトラム障害の人たちへの支援、9、10歳ころの子どもの発達的特徴などの研究とともに、方向感覚の個人差についての研究も長年行っている。
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