竹内謙彰(たけうち よしあき)
立命館大学産業社会学部現代社会学科教授。
子どもを含む自閉症スペクトラム障害の人たちへの支援、9、10歳ころの子どもの発達的特徴などの研究とともに、方向感覚の個人差についての研究も長年行っている。
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生活・しつけ
年長 2016年12月8日の記事
子どもの方向感覚を育てるには、どんなことをすればよいのでしょう? 今回も引き続き、立命館大学教授の竹内謙彰先生にうかがいます。
●方向音痴は、男女差よりも個人差が大きい
よく、方向音痴は女性が多いと言いますが、男女差などはあるのでしょうか?
竹内 「例えば、方向感覚がよいか悪いかという質問に、『よくない』と答える割合は女性のほうが高いですが、実際に道順を間違えたりするのかどうかは、いろいろなシチュエーションで試してみないとわかりません。でも、そこまで調べているデータは、実はほとんどないのです。
例えば、三次元の物体を回転させたり、別の視点から見て正確に認識するテストなどは男性のほうが若干成績がよいのですが、空間にある配置や目印を覚えるのは女性のほうが得意だったりします。
また実生活の中で、道に迷わずに目的地にたどり着くには、方向や目印を把握する力だけでなく、街中で誰かに聞くといった『社会性』も、大事なスキルになります。これはむしろ女性のほうが得意です。男性のほうが知ったかぶりして、かえって迷うことが多かったりします。
このように考えると、方向感覚については男女どちらが優れているということは言えません。性差よりもむしろ個人差のほうが大きいのではないかと考えられます。ですから、お子さんに対しても『あなたは女の子だから、方向音痴なのよね』などと決めつけないようにしてほしいですね」
●方向感覚を育てるには外遊びがおすすめ
では、方向感覚がよい人とそうでない人の差はどこにあるのでしょう?
竹内 「いくつか原因はあると思いますが、大きいのは自分が主体になって経路をたどった経験がどれくらいあるかということです。
前回、通学路の道順の教え方の際にもお話ししましたが、人は誰かについていくだけの『フォロワー』を続けていると、ずっとフォロワーのままなんです。
自分で経路をたどる経験を積んでいくうちに、目印の捉え方、方向の見定め方などが身についてきます。ときには、迷う経験も大切です。おかしいなと気づいたり、どういうときに迷いやすいかがわかるようになるからです。
迷ったことに気づいたら、立ち止まって振り返ったり、戻ったり、人に聞いたり、スマホで確認することもできます。迷っていることに気づかないと、どんどん目的地からそれていってしまい、大変な事になるでしょう」
子どものうちから、経路をたどるという経験が大切なんですね。
竹内 「その通りだと思います。今は防犯や交通面などの事情から、入学までに子どもが自分だけで外を歩く機会が減っています。自分で経路をたどる経験をつめるよう、大人が意識的にサポートをする必要があると思います。
この場合の経験というのは、経路をたどるということに限らず、『子どもが自発的に動ける経験』も含まれます。その意味でおすすめなのが、外遊びです。なぜなら、遊びは自分が楽しくなるためにする主体的な活動だからです。
あそこに行ったら何があるんだろうと自分で考えて動いていく中で、方位や方角、経路を覚える必要性が出てきます。こうした経験が、のちのちの方向感覚を養う基礎になると言えるでしょう。遊びの中であれば、楽しみながら、自然にその基礎が身につくというわけです。
遊具や原っぱ、球技場など、いろいろな要素のある大きな公園などもいいのではないでしょうか。
そして子どもがいろいろな場所を探検して、帰ってきたら『あっちに何があった?』などと聞いてみるといいでしょう。『あそこに、○○があったよ』と言葉に置き換えることで、より整理がつき、目印や位置、道順などの情報が頭の中に定着していきます。
だからといって、無理やり公園に連れて行ったり、テストのように『何があったの?』などと問いただす必要はありません。あくまで自然に子どもが行きたがったり、話をする流れの中で、ということが基本です。
地図のお勉強などは、あまり急いで始める必要はありません。地図を使うと役に立つとか、楽しいという経験をすることは大切ですが、実は地図というのは記号のかたまりで、お約束事が多く、まずはそれを読み取るための学習が必要です。6〜7歳の子には、とても難しい教材なのです。この時期はまだ『好き』『楽しい』という活動が一番です」
「好きこそものの……」というのは、方向感覚にもあてはまるのですね。
竹内先生、ありがとうございました。
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立命館大学産業社会学部現代社会学科教授。
子どもを含む自閉症スペクトラム障害の人たちへの支援、9、10歳ころの子どもの発達的特徴などの研究とともに、方向感覚の個人差についての研究も長年行っている。
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