志澤 彰(しざわ あきら)
国士舘大学文学部教育学科初等教育専攻准教授。神奈川県合唱連盟副理事長。30年以上にわたり平塚少年少女合唱団の指導に携わる。
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学校・まなび
小学1年生 2016年2月17日の記事
前回は、歌うときの音はずれが遺伝ではないというお話や音域の発達などについて、国士舘大学の志澤彰先生にうかがいました。今回は、歌が上達するための環境の整え方についてお聞きします。
●「歌心」は、すべての音楽教育に必要なもの
1年生で歌が苦手な子や音がはずれてしまう子でも、上達することは可能だそうですが、具体的には、どんなことをすればいいのでしょう?
志澤 「単純かもしれませんが、とにかく、いい音楽をたくさん聞かせることです。常にいいものを聞いていれば、自然にそのマネができるようになります。子ども用の童謡のCDなど、歌の上手な人のものを選んで与えてください。お父さんやお母さんが聞くポップス系もいいのですが、歌唱力という点でバラツキがあることが多いので注意が必要です。
歌を楽しめる環境も大切です。『ヘタね』などと言われてしまうと、子どもは歌が嫌いになるでしょう。歌を歌わなければ、ますます音程をコントロールすることができなくなってしまいます。音程が多少外れていても、とにかく歌うことを楽しみ、歌が好きになってほしいと思います。
それから、これは誰でもできるというわけではないのですが、児童合唱団が活動している地域であれば入団してみるのもよいと思います。今は一時期に比べて数が少なくなりましたが、地域の同好会として活動しているところもたくさんあります。団体によって条件は違いますが、低学年でもオーディションなしで入団できるところも多いですし、楽器を習う場合は楽器を買わなければなりませんが、歌はその必要がないので、お金もあまりかかりません」
楽器などを習わせるのはどうでしょうか?
志澤 「音感を養うという点では楽器も有効だと思います。ただし、耳がいい、つまり音感がいいからといって必ずしも歌がうまくなるとは限りません。例えば音大でピアノを学んでいる人は、歌が苦手という人が意外に多いのです。ピアノというのは、きちんと調律されていれば、つねに一定の音程を保っている楽器なので、ピアノを学ぶことで、ちょっとの音程のズレも聞き分けられるようになりえます。
しかし、人間の声帯はどんな微妙な音程でも出せるため、自分の歌声がちょっとでもずれているのがわかると歌うのがイヤになってしまう人がいるのです。歌わないから、声帯のコントロールもうまくいかなくなり、ますますうまく歌えなくなってしまうというわけです。
もし何か子どもに音楽をさせたいと考えているのであれば、楽器もおすすめなのですが、その前にぜひ歌を楽しんで歌える機会を作ってほしいと思います。歌は自分の体が楽器ですから、いつ、どこに行ってもすぐに歌えます。自分の身体で音楽を表現できることはとても素晴らしいことですよね。
バイオリンやピアノを習うのもよいのですが、どんな楽器を習うにしても重要なのは、音をうまく並べる技術ではなく、楽器を通してどういうふうに『音楽を歌う』かということです。それには自分の中に『歌心』がないと表現できません。やはり自分自身が歌うことがとても大切であり、音楽にとって一番大事なことだと思います」
音楽教育というとピアノなどの楽器をイメージしがちですが、たしかに歌うことは音楽の基本でもありますね。
●リズム感を育てるには、ダンスやゲームもおすすめ
ところで歌で音程がはずれる子は、リズム感も悪い子が多いように感じます。リズム感をよくするにはどうすればいいですか?
志澤 「リズム感というのは体の運動感覚です。体の感覚という意味では、音程などの音感とリズム感は、多少つながりはあるかもしれません。リズム感は、音程以上に成長してから身につけるのは難しいので、小さいうちに体に、よいリズム感を身につけておきたいですね。
リズム感を養うためには、音楽に限らず、体でリズムを表現できるダンスもおすすめです。ダンスは常にいいリズムの音楽を聞きながら体を動かすことになるので、聴覚と運動神経の両方を育てることにもなります。何より子どもが楽しんでできるのがいいですね。私自身も子どもが赤ちゃんのときに、『1、2、3、4』とリズムを刻みながら、『4』のタイミングで高い高いをして遊んだりしました。小学生の家庭であれば、リズムを刻みながら遊べるゲームなどを取り入れていってもいいのではないでしょうか」
ダンスやゲームなら親子でも楽しみながらできそうですね。
志澤先生、ありがとうございました。
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志澤 彰(しざわ あきら)
国士舘大学文学部教育学科初等教育専攻准教授。神奈川県合唱連盟副理事長。30年以上にわたり平塚少年少女合唱団の指導に携わる。
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