おkayu
栄養教諭・給食の専門家がつくる同名の学校給食サイトを運営するメンバー。3名全員が学校栄養職員として東京都の公立小・ 中学校に勤務した経験を持つ。サイトは、給食作りについての情報や意見の交換、悩み相談やレシピ公開など、内容も多岐に渡り、学校給食関係者から高い支持 を得ている。
「おkayu」
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学校・まなび
小学1年生 2016年2月12日の記事
こんにちは、学校給食の現役管理栄養士&経験者のグループ「おkayu」がつづるママノート版「給食室だより」です。今回は、給食の食べ残しについて考えます。
●給食の食べ残しは、年間1人当たり約7.1㎏
給食の食べ残しが、ここ数年問題となっています。平成25年度に全国の小中学校で給食を調理したり食べたりする際に出た食品廃棄物は、環境省の試算では児童・生徒1人当たり17.2㎏だったとのこと。種類別では食べ残しが41%(7.1㎏)、野菜などの調理くずが33%(5.6㎏)と、まだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」のほうの割合が多かったと、全国の市区町村を対象としたアンケート結果をもとに初めて推計しました。
そもそも、「食べ残し」はどうして生まれるのでしょうか。
ひとつには、苦手な食材があるから、嫌いな料理だから、ということがあるでしょう。ほとんどの場合、これが一番当てはまる理由だと考えられます。しかし給食の場合は、ほかの原因が大きく影響することがあります。それは次の2つです。
まず、量の問題です。食べられる量より多く出されたら、当然食べきれず、残すことになります。では量はどのようにして決められのでしょう? 給食は栄養摂取量や食品構成が決まっているので、その基準量や所要量を満たすために献立を作成し、給食を作っているのです。つまり、低学年(1・2年生)、中学年(3・4年生)、高学年(5・6年生)ごとに、食べなければならない量があるのです。しかし、同じ年齢でも体格の違いや食習慣・食欲などによって食べられる量に違いがあるので、食べ足りなくなる子や食べきれない子が出てきてしまうのです。
2つ目は、時間の問題です。小学校の場合、給食時間は40~50分で、準備する時間や後片付けを除くと食事そのものに使える正味の時間は、せいぜい20~30分。4時間目の授業が体育や図工などの専科の場合は、着替えや片付け・移動が給食時間まで食い込むことがあり、ますます食べる時間が短くなってしまうことになります。
つまり、食べたくても時間が足りず、食べられないとうこともあるのです。平均的な給食時間における食べる時間は、小学校で15~25分、中学校で5~15分と言われています。
●味覚の土台を築く学童期にいろいろな食体験を!
食べ残しが1年で7.1㎏といっても、1年間に給食は約190回あります。これを1回あたり1人が残す量で計算してみると、なんと37.3gです。おひたし1人分ぐらいでしょうか。これを多いとみるか、少ないとみるかは人それぞれでしょう。
私が勤務していた自治体では、給食から出るゴミをリサイクル業者に委託していました。料金が発生するため、業者に引き渡す量(野菜ゴミと食べ残しの合計量)を計量して報告していました。翌月には、各学校の給食ゴミ(月合計)量が一覧で配布されます。学校によって児童数も違いますし、調理の際に出る野菜くずや果物の皮も含まれます。ですから数量が多いというだけでは必ずしも食べ残しが多いということにはならないのですが、その書類に一喜一憂することとなります。なかには、八百屋さんに野菜くずを引き取ってもらったり、タマネギやトウモロコシの皮をあらかじめむいてきてもらったり、また、残量が出ないように、子どもが好きな献立を多くするところもあると聞きました。これでは本末転倒ではないでしょうか。
学童期は味覚形成の時期です。味覚形成は、人間形成にもかかわると言われているくらい大事なことです。そのため給食では、食べ慣れない食品を使用したり、一度出して残ってきた料理も、また再チャレンジとして出すことが多いのです。たしかに食べ残しは、もったいないし問題です。しかし児童の嗜好に迎合して食べ残しを減らすという考えには「おkayu」としては同意できません。そして、給食の食べ残しの原因を再認識し、おいしく食べてもらう工夫することが重要だと思います。
●食べ残しについて、内面からアプローチ
学校給食の目標のひとつに、「感謝の気持ちを育てる」――命ある食べ物を大切にし、作ってくれた人に感謝する――というのがあります。このことを体現するために、学校では日々の給食で『残さず食べる』という指導を熱心にしています。とはいっても、昔のように全部食べ終わらないと昼休みまで居残り、などということは現在ではほとんど行なわれていません。代わりに個々に食べられる量を配膳するといった工夫をし、食育活動や授業などを通して偏食是正の取り組みをしています。
そこで、これまでに私たちが実践した食育の例をご紹介しましょう。
2年生対象の「野菜となかよしになろう」では、児童に野菜克服体験を発表してもらうことにより、まだ野菜嫌いがなくならない子どもに「私も食べてみようかな」「やってみよう」という気持ちを持たせることに成功しました。発達段階では、野菜の味になじめないのは当然のこと。いかに慣れるかということと、健康のため、成長のために何でも食べることが大事であると頭で考えて食べられるようにすることが大切です。
4年生とは交換ノートを毎年やってきました。この経験から、偏食是正のターニングポイントは4年生と感じています。ノートには、子どもたちが苦手な食べ物を克服していく様子や、給食を残さず食べられたということに喜びを感じている様子が書かれていて、とてもうれしく感動を覚えたものです。
子どもたちと栄養士の交換ノート
残さず食べられるようになることが多い
家庭でも食べ物の大切さを伝えると同時に、焦らず怠らずの精神でお子さんの苦手克服に協力してあげてください。
前回の記事はこちら
★第9回 3世代の話題にいかが? 昭和?平成の給食ストーリー その2
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