志澤 彰(しざわ あきら)
国士舘大学文学部教育学科初等教育専攻准教授。神奈川県合唱連盟副理事長。30年以上にわたり平塚少年少女合唱団の指導に携わる。
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学校・まなび
小学1年生 2016年2月16日の記事
卒園・卒業式シーズンは歌を練習する機会も多い時期。小さいうちから歌がうまい子はいないというけれど、子どもが歌を歌っているのを聴いて、「なんだか音がはずれているみたい」「リズム感がよくない?」と思った方、「学校でからかわれたりしないかな」と、ちょっと心配になりますよね。子どもの音はずれやリズム感をよくすることはできないのでしょうか。長年児童合唱団の指導を行なってきた国士舘大学の志澤 彰先生に伺いました。
●小学校低学年までは音域が狭く音程が不安定な子が多い
小さいうちは、音程がはずれてうまく歌が歌えない子が多いようですが、それはなぜでしょう?
志澤 「私は以前、小学1年生の入学時の音域について調べたことがあるのですが、この時期の子どもの音域は意外に狭くて、しかも個人差が大きいのです。
ピアノの真ん中の位置にあるドの音を基準にして、ドレミファソまで唄える子は、完ぺきでなくてもある程度というレベルを入れても半数ちょっと。音域が低く、その下のソラシドレしか出ない子もいれば、オクターブ高いほうのソラシドレしか出ない子もいました。
園では朝の集まりのときなど、先生がピアノを弾き、子どもがいっせいに歌う機会がたくさんありますが、これだけ音域が狭く個人差があると曲にキーが合わない子もたくさん出てきます。園児の音楽発表会などを聞いていると、音がはずれている子が多いように聞こえるのもそのためです。
そもそも歌を歌うという行為は、耳で聞き取った音の音程に合わせて声を出すということです。声帯も筋肉ですから、小学校低学年くらいまでの体全体の発達が十分でない子どもでは、声帯のコントロールがきかず、音程も不安定になりがちです。そういう意味では、この時期はほとんどの子どもがオンチといってもよいでしょう」
成長するとよくなるのでしょうか?
志澤 「多くの場合は、体の機能が発達するに従って音域が広がり、音を聞き分ける力も備わってきます。小学校中学年くらいになれば徐々に音程を調節しながら歌えるようになってくるでしょう。しかしなかには、音がはずれていても気にせず、音に合わせることをせずに、そのまま歌ってしまう子がいます。こうした子がいわゆるオンチと言われるのではないかと思います。
音はずれが気にならない理由を作るひとつの原因が、先ほど言った幼稚園や保育園での歌の時間にあると考えています。園では、とにかくみんなで元気に歌うことを第一にしている場合が多く、一人ひとりに音を合わせて歌うということはしていないでしょう。だから音がはずれていても気にせず、音に合わせることをあまりせずに歌うようになってしまうのでしょう。
楽曲自体にも原因があります。以前、小学校低学年の音楽の教科書の音域を調べたところ、その年齢の子どもが出せる音域よりも広い曲が多く取り入れられていることがわかりました。これでは、歌うときに音がはずれてもしまう子どもがいるのも仕方がないといえるでしょう。
また、男の子の場合は、高学年以降に変声期を迎えますが、成長の過程で周囲に『音が外れている』とからかわれるなど、恥ずかしい経験をしたために歌うことがイヤになって、ほとんど歌わなくなってしまう子もいるでしょう。歌も運動と同じで訓練が重要です。歌を歌わなければ声帯のコントロールもうまくできなくなり、ますます歌うのが苦手になってしまうのです」
●どんな子でも、正しい音程で歌えるようになる
歌のうまいヘタは遺伝だと思っていました。
志澤 「私は長年にわたり児童合唱団の指導をしてきましたが、音楽的によい環境や正しい指導がされていれば、耳の病気など特別な事情がない限り、ほとんどすべての子が正しい音程で歌うことができるようになると考えています。よく音楽家の子どもは音感がいいと言われますが、それは遺伝ではなく環境によるところが大きいといえます。音楽家の家庭であれば生まれたときからよい音楽、正しい音程を耳にしながら育つからです。
もちろん音楽家の家庭でなくても、小さいうちから環境を整えてあげれば音程をよくすることは十分に可能です。とくに1年生のうちは体や音感も発達段階ですから、今はうまく歌えなくても、まだまだ間に合います」
そう聞けば、歌に自信のない親御さんは安心すると思います。
次回 は歌がうまく歌えるようになるための具体的な方法についてうかがいます。
志澤先生、ありがとうございました。
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志澤 彰(しざわ あきら)
国士舘大学文学部教育学科初等教育専攻准教授。神奈川県合唱連盟副理事長。30年以上にわたり平塚少年少女合唱団の指導に携わる。
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