渡辺弥生(わたなべやよい)
法政大学文学部心理学科教授
社会性や道徳性の発達、いじめなどの対人関係の問題予防を研究。
著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗り越えるための発達心理学』(光文社)などがある。
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生活・しつけ
小学1年生 2014年3月28日の記事
★泣き虫っていじめられる?
《よく泣く子、小学校でやっていける? 1 》 泣かないための方法を、子どもに教えましょう
小学生になっても、忘れ物をしてはめそめそ、ちょっと友だちにからかわれただけで大泣きなど、すぐに泣いてしまう子。
あまりに泣き虫だと、友だちにいじめられたりしないか心配です。
どうしてそんなに泣くの?
泣かないようにするには、どうしたらいいの?
子どもの社会性や道徳性の発達を研究する渡辺弥生先生にうかがいました。
●泣きやすい原因は、発達よりも気質が関係する
小学生になると幼児期ほどには泣かなくなるものだと思うのですが、小学生になってもいまだにちょっとしたことですぐに泣く子というのは、何か問題があるのですか?
渡辺 「子どもがすぐに泣くとか、涙が出やすいという場合、発達的な問題というよりも、いわゆる生まれつきの気質というものが関係していると思います。
こういう子は赤ちゃんのときから、感情が喚起されやすく生理的に涙が出やすい、あるいは環境が変わることに敏感で不安になりやすく、一度泣くとなかなか気分を変えるのが難しいといった傾向があります。
これは、ある面ではよい傾向とも言え、繊細で、環境の変化に気づきやすいといった良さがあります。
もちろん、大げさな泣きは、あくまで子どものときだけのことで、普通は大人になっても大声で泣きわめいたり、床に転がってかんしゃくを起こすような人がいないように、環境や教育の影響を受けてバランスがとれてくるので、あまり心配する必要はないでしょう。
ただ、周囲からからかわれたり、友だちから敬遠される可能性を予防していくために、ささいなことで大泣きしないように親が何かしらの対応をしていくことは必要だと思います」
●性格のせいにせずに、子どもにしっかりかかわって
よく泣く子の親は、小さいときから子どもに振り回されているので、うちの子はこういう性格だからしょうがないとあきらめている人も多いのですが、どのように対応すればいいのでしょう。
渡辺 「親はともすると性格論をふりかざしがちですが、ほとんどの場合それは主観的なものであることが多いので注意が必要です。
性格のせいにして『泣き虫な性格ね』と決めつけた対応をしていると、子どもはだんだん『自分は泣き虫だ』と、自分自身でも思い込み、よけいにその性格を変えることができずに悩むでしょう。悪い性格のせいにされることは、子どもにとっては何のメリットもありません。
親としては、一生懸命育てているのに子どもが言うことをきかないので、子どもの性格に責任転嫁してしまいたくなるのでしょうが、これはある意味、すべてを子どものせいにしてしまうということ。その結果、親や先生はかかわりを減らしてしまうことになってしまいます。
子どもが泣くたびに、親が子どもにかかわろうとせず『また泣いているの? もう小学生なのにダメじゃない』などと言うだけでは、よい方向に変わっていくことはできません。それよりも『なぜ泣くのか』を考え、具体的な問題解決の方法を教えてあげてほしいと思います」
どんなに泣き虫でも、よい方向に変わっていける可能性あるということですね。
渡辺先生、ありがとうございました。
次回は、子どもとの具体的な関わり方について、さらに詳しくうかがいます。