前橋 明 まえはし あきら
早稲田大学人間科学学術院 健康福祉科学科教授
睡眠時間や体温、運動量などの調査・測定を通して、子どもの心身の問題とその原因を明らかにする研究を行っている。
著書に、「生活リズム向上大作戦」(大学教育出版)、「子どもにもママにも優しい ふれあい体操」(かんき出版)など多数。
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小学1年生 2015年4月14日の記事
みなさん、ふだんから子どもの体温を測っていますか?
実は今、体温が低すぎたり、高すぎたりする子どもが多く見られるようになっており、それが学校生活にも影響を与えているのだそうです。いったいどういうことなのでしょうか。
子どものからだや健康に詳しい早稲田大学教授の前橋明先生にお話をうかがいました。
●体温調節がうまくいかないと、集中力に影響が出る
体温に異常のある子が増えているというのは本当でしょうか?
前橋 「私は、以前、保育園の5歳児クラスで、登園してきた子どもたちの体温を測って調査をしたことがあります。ふつう朝の9時前後の体温というのは、36℃半ばくらいなのですが、そのときの結果では、約15%の子が36℃未満、そして、病気でもないのに体温が37.5℃近くある子も約15%もいたのです。
また、一度体温を測定したあと、2時間後に再度測ってみたところ、その差が1℃以上ある子が12%、ほとんど変動のない子も7%ほどみられました。人間の体温は、1日のうちで変動するのですが、その変動の幅はふつう1℃前後です。
通常でも、体温が低い・高い、または1日の体温の変動の幅が大きいとか、ほとんど変動がないという子どもはいるものですが、それはせいぜい全体の5%くらいです。この調査の結果をみても、体温調節がうまくいっていない子がいかに多いかがわかります」
体温調節がうまくいかないと、どんな問題が起きるのでしょう?
前橋 「例えば、朝、無気力でやる気が出ず、学校でいろいろな活動をしても、授業で教えてもらった内容を理解したり覚えることができなかったりします。実際、調査した子どもたちの保護者や保育者からも、集中力の欠如やイライラ、カーッとしやすいといった声が多く聞かれました」
●生活リズムの乱れが体温調節の乱れを招く
勉強が頭に入らないと聞くと、親としては不安になりますね。何が原因なのでしょう?
前橋 「一番にあげられるのは、生活リズムの乱れです。
体温は、一般に午前3時頃にもっとも低くなり、朝、目覚めてから徐々に高くなり、午後4時頃にピークを迎え、また次第に下がっていくというサイクルを繰り返しています。
これは、人が長い年月、太陽とともに生活しながらできてきた生体のリズムで、人のからだは太陽が上がっている時間帯に活発に活動できるようになっているのです。
ところが、最近のように夜の10時とか11時くらいまで起きている夜型生活をしていると、体温リズムが数時間後ろにずれてしまうのです。本来は、まだからだが寝ているのに起こされてしまうため、朝の体温は当然低く、ボーッとしています。
そんな状態で学校に来て、午前中をぼんやりと過ごして、昼くらいからやっと上がり始めます。すると、今度は夜になってもまだ体温が下がらないので、なかなか眠れなくなってしまうという悪循環に陥ってしまいます。
朝、遅く起きると、時間のゆとりがなく朝食を抜いたり、遅刻するからと親に車で送ってもらったりすることも多くなりますが、それも体温が上がらない原因になっています。朝に自分の足で歩いて園や学校に行ったり、食事をしてエネルギーの消化・吸収が行われたりすると、体温が上昇し、園や学校で元気に過ごすことができます。
しかし、睡眠や栄養、運動が不足したままでは、園や学校に行っても低体温のままで活動力が下がり、ほかの元気な子どもたちのあそびや学習についていけなくなってしまいます。
さらに、体温変動の異常や高体温については、赤ちゃんのときから、冷暖房の効いた部屋で過ごすという恵まれた環境も、その原因の1つと考えられます。
そもそも子どもは、生まれたばかりの頃の体温は高く、生後100日くらいからだんだん低くなり、37℃台以下になっていきます。2歳くらいには36℃台になり、3歳くらいで1日の体温の変動がみられるようになってきます。
この時期、とくに夏場にエアコンのきいた部屋で過ごしているために、からだの中にこもった熱を放散できず、体温が高いままで成長してしまうというわけです」
低体温といっても、からだのどこかが悪くなっているわけではないのですね。では、正常な体温にするにはどうしたらいいのでしょうか。次回は、その方法についてうかがいます。
前橋先生、ありがとうございました。
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前橋 明 まえはし あきら
早稲田大学人間科学学術院 健康福祉科学科教授
睡眠時間や体温、運動量などの調査・測定を通して、子どもの心身の問題とその原因を明らかにする研究を行っている。
著書に、「生活リズム向上大作戦」(大学教育出版)、「子どもにもママにも優しい ふれあい体操」(かんき出版)など多数。
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