子どもが安心して小学生になるための応援ブック。子どもが自身の身の安全を守る方法、そして幼児をもつ家庭、保育者、地域住民という見守り役の大人が身につけておくべきスキルがまとめてある。世田谷区のホームページ「子どもの危機回避プログラムを実施しています」より、冊子をダウンロードできる。
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生活・しつけ
年長 2019年5月16日の記事
公園やエレベーターに注意! 子どもを犯罪から守るには?
年長になったら教えたい”防犯”の基本【第3回】
小学校入学後は、登下校を始め、子どもだけでの行動が増えます。いざというときに危険から自分を守れるよう、年長児期には何を・どう教えたらいいのでしょうか? 第3回では、教えておきたい日頃の心がけについて、引き続き『初めてのいってきます! 応援ブック』というパンフレットで子どもの危機回避について啓蒙している、世田谷区に取材します。
●子どもが家の外で行動するときの心がけ
子どもだけでの行動が多くなる小学校生活に備えて、第1回では年長児と交わす基本の約束を、第2回では狙われやすい子どもや場所の特徴を取材しました。最終回では、子どもの生活シーンに合わせた具体的な防犯対策について教えていただきます。
はじめに、家の外での心がけについて。
■子どもが家の外で心がけること
(1)公園では
・一人で夕方まで遊ばない。保護者、またはお友だちと遊ぶ。
・普段から防犯ブザーを持ち歩く。使えるようにしておく。
・知らない人が大切そうなことを言ってきても、「いやだ」「おうちの人と相談する」とハッキリ言う。
・公園のトイレに一人で行かない。保護者、またはお友だちと行く。
(2)駐車場では
・車のそばで遊ばない。
・知らない人の車に乗らない。
(3)通りでは
・前後に注意してしっかり歩く。
・夕方や夜は暗い道を避ける。遠回りでも、道幅が広く街灯があり、人気のある道を選ぶ。
・近所の人に会ったらあいさつをする。
(4)繁華街では
・一人で繁華街には行かない。
・知らない人に話しかけられたら、必ず保護者に言う。
・歩くときは、必ず保護者と手をつなぐ。つなげないときでも離れない。
・家族で繁華街に行く際は、誰と誰が手をつなぐか決めておく。
・万が一、大きなお店で迷子になった場合はどうするか、保護者と一緒に決めておく。
毎日の行動に合わせて、それぞれの項目を日々、言い聞かせたいですね。
●子どもが自宅や集合住宅内で行動するときの心がけ
次に、自宅や集合住宅内で子どもが行動するときの心がけを教えていただきました。
■子どもが自宅や集合住宅内で心がけること
(1)自宅では
・子どもだけでの留守番は最低限にする。
・子どもだけで留守番するときは、インターホンに出ない。
(2)家から出入りするときは
・家の鍵を開け閉めするときは、周囲に人影がないことを確認する。
・ドアや窓の施錠を忘れない。
・道路と接している(簡単に外から出入りできる)車庫や駐車場で一人遊びをしない。
(3)エレベーターでは
・エレベーターに乗ったら、必ずボタンの前に立つ。
・知らない人と二人きりでエレベーターに乗らない。
・エレベーターに乗って、後から乗って来る人が怪しいと思ったら、すぐに「閉じる」ボタンを押す。
・知らない人と一緒に乗ってしまったら、いつでも停止ボタンを押せるよう、ボタンに手をかけやすい位置に立つ。
・エレベーター内で危険を感じたら、手のひらを開いてパーの形にし、押せるだけのボタンを押す。エレベーターが止まったらすぐに下りて、大声で大人に知らせる。
・エレベーターホールでは遊ばない。
・エレベーターホールで見知らぬ人を見つけたら、必ずあいさつをするようにする。
(4)非常階段では
・必要のないときは非常階段を使わない。
・知らない人が非常階段を利用したり、付近をうろうろしていたりしたら、必ず保護者に知らせる。
・階段で怪しい人が近寄ってきたら、大声をあげながら階段を下に逃げる。絶対に上に上らない。
(5)駐輪場では
・知らない人が駐輪場を利用したり、付近をうろうろしていたりしたら、必ず保護者に知らせる。
自宅であっても、密室になる可能性はあちこちにあるとわかります。自分で鍵を使うようになるまで、じっくりゆっくり教えていきましょう。
●危険に直面したらどうする? 教えておくべき3つのポイント
最後にお聞きするのは、いざ危機に直面したらどうすればいいかについて。とっさの判断を促すためにポイントを絞るならば、どのように教えるのがいいでしょうか。「まずは『知らない人からの声がけ』への対処法を子どもに教えましょう」(世田谷区担当者)とのこと。
■もし知らない人から声をかけられたら…
(1)誘われてもおうちの人以外にはついて行かない。
(2)おうちの人か、あらかじめ決めておいた絶対に信用できる人に連絡を取る。
(3) (どんなに欲しいもの、したいことでも)知らない人からは受けない。
「子どもの危機の多くは、『声をかける』という接触から始まります。子どもを狙う犯罪者は、いくつもの声かけを巧妙に組み合わせて実行します。例えば『お母さんが病気だ。すぐに病院に行かなければならない。おじさんが車に乗せて、連れて行ってあげよう』といったようにです。
1つだけの声かけだったら、子どもは『車に乗らなくても自分で行きます』と応じられるでしょう。しかし、『すぐに』という声かけが一緒になされることで、子どもの心の動揺は深まり、驚くほど簡単に連れて行かれてしまうのです」(同)
また、「自分は怪しい人ではない」「時間もとらせない」「こういうことは普通のことだ」と言葉を重ねることで、子どもに安心感を与えることもあると言います。
では万が一、子どもが犯罪者と向かい合ってしまったらどうすればいいのでしょうか? その場合に取るべき行動は、3点に絞って教えるとよいそう。
■犯罪者と向かいあったときに取るべき行動
(1)防犯ブザーを鳴らす
「防犯ブザーを持った子どもに、犯罪者は『心のひるみ』を見せます。防犯ブザーは『持っている』とはっきり分かる位置に着けておきましょう。いざ使うときにサッと紐が引けるよう、手がすぐに届く低めの位置に、紐が大きく振れない取り付け方をすること。また、ベルを鳴らす練習、電池が入っているかの確認も定期的に実施して。ただし、ブザーを鳴らすことと『実際に犯罪被害を回避できる』ことは別です。防犯ブザーをつけて安心してはいけません」(同)
(2)大声を出す
「声は、体に備わった自然な防犯ブザーですが、子どもたちは、突然大きな声を出すことに慣れていません。年長児か否かにかかわらず、一度でいいので大声を出す練習をしておきましょう。言葉は『助けてー』でもいいですし『ウォー!』でもいいと思います。周囲の注意を引ければいいのです。
大声を出す際は、身振り手振りをつけると重大さが伝わります。ふざけていると勘違いされないためにも、犯罪者を驚かせるためにも『大声を出しながら、手足を振り回す』こと。幼児期に、身振り手振りを加えながら大声を出す訓練を実施していると、大きくなってもとっさの時に意識せずに再現されるといわれています。小学校に上がる年長さんの時に、ぜひとも複数回は練習しましょう」(同)
(3)ダッシュする
「犯罪者から自分を守る決め手は、『走って逃げろ』です。子どもが犯罪者に追いつかれずに逃げきるためには、小学校低学年の場合、相手の4~6メートル手前から逃げる体勢に入る必要があるそうです。子どもに4~6メートルの体感距離をつかませること、そして怪しい人や犯罪者に少しでも早く気づけるよう、きちんと前を見て歩くことを身につけさせることが大切です。
街を歩く際は、少なくとも4メートル先を視野に入れながら歩く練習をしましょう。また、鬼ごっこなどの遊びを通して、ダッシュで逃げたり、身をかわしたりする練習をしましょう。子どもの場合、訓練としてよりも、遊びから自然に身につけることが大切です」(同)
危機回避を考える際、もっとも危ないのは「まさか」の気持ち。「まさかそんなことに巻き込まれるまい」「まさかうちの子は大丈夫」といった気の緩みこそ、子どもを危機に近づけるのかもしれません。日々、子どもに言い聞かせるのは手間も時間もかかります。しかし、なるべく根気強く、子どもと一緒に学ぶ気持ちで取り組んでいきたいものですね。
(取材・執筆:有馬ゆえ)