子どもが安心して小学生になるための応援ブック。子どもが自身の身の安全を守る方法、そして幼児をもつ家庭、保育者、地域住民という見守り役の大人が身につけておくべきスキルがまとめてある。世田谷区のホームページ「子どもの危機回避プログラムを実施しています」より、冊子をダウンロードできる。
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生活・しつけ
年長 2019年5月13日の記事
一人歩きに備えて“防犯力”を! 子と交わしたい9つの約束
年長になったら教えたい”防犯”の基本【第1回】
年長になると、園生活もあと1年。小学校入学が現実的になってくる時期です。世田谷区では、きたるべき小学校生活に備え、『初めてのいってきます! 応援ブック』というパンフレットを配布しています。これは、子どもの危険に対応できる能力を年長の1年間で身につけようというもの。そこで、家庭で子どもに教えたい“防犯”の基本について、世田谷区に取材しました。
●防犯は「自分が大切な存在である」と知るところから始まる
そもそも、なぜ年長で危険に対応できる能力をつける必要があるのでしょうか?
「小学校に上がると、通学をはじめ、一人、または子どもだけのグループで行動することが多くなります。そうなったときに毎日、笑顔で『いってきます』を言うためには、年長のうちに自分で自分の身を守る方法を身につけることが大切です。
特に犯罪に対する安全・安心は、無意識で行動できるように『体で覚える』ことが大切。年長のときから繰り返し、体を使って記憶していくと、小学校入学時にはしっかり身につけることができるでしょう」(世田谷区『初めてのいってきます! 応援ブック』担当者)
とっさに行動できるようになるためには、1年あまりの準備期間が必要というわけですね。子どもが自ら危機を回避する能力をつけるためには、まず3つのことを教えたいといいます。担当者のコメントとともにまとめました。
■「自分の身を守るマインド」を作るために必要なこと
(1)自分を大切にすること
「子どもはまだ、自分がどんなに大切な存在かがわかっていません。命という二つとないものを子ども自身が持っていて、それを失わないように自らを守ることの大切さを伝えましょう。同時に、保護者など周りの人たちが、その子を大切に思い、いつでも見守っていることも、じっくりと教えていってください」
(2)お友だちを大切にすること
「自分と同様に、周囲のお友だちも大切であると教えることで、周囲と共感しながら多くの人の安全・安心を考え、それを実行に移す能力を育みます」
(3)周りの人の言うことをしっかり聞く態度
「これは、安全に気を配る基本です。今後、防犯について教えていくためにも、あらためて心の通い合う大切で大好きな人の言うことはしっかり聞こうね、と言い聞かせてください」
子ども自身が自分を大切にするために、保護者もまた子どもに「あなたは守られるべき大切な存在である」と伝えていきたいですね。
●年長時代にクリアしたい8つの目標とは?
先ほどの3つの基礎を踏まえ、具体的に年長でできるようになりたい目標は8つあるそう。
■年長時代にできるようになりたい8つの目標
(1)心の通い合う大切で大好きな人がいる。
(2)近所の人、知っている人に自分からあいさつができる。
(3)ふざけずに、きちんと前を見て歩ける。
(4)とっさのときに身近な大人の言うことに従い、行動することができる。
※むやみに他人の言うことを信じてはいけないが、いざというときには素直に従えるように教えたい。
(5)とっさのときに、おうちの人の名前や電話番号が言える。
(6)先生やおうちの人に、その日の出来事をお話しできる。
(7)みんなで決めた約束を守ることができる。
(8)嫌なことは「いや!」と言えて、身振り手振りでも表せる。
目標をクリアする難易度は、下に行くほど高くなります。数の小さい項目から、保護者は折に触れて子どもに話していくといいかもしれません。
「教える側の保護者は、子どもは一人ひとりに違うものだと心得てください。子どもはそれぞれ、年齢、性別、体力、育ってきた環境などが異なります。他の子どもと比べるのではなく、その子の性格や性質に合わせて、何をどう教えるかを考えましょう」(同)
これらの目標を見るだけでも、一人ひとりつまずくポイントは違いそうですよね。集中して歩くことが苦手な子もいれば、気持ちを言語化するのが苦手な子もいるはず。わが子に寄り添いながら、自分の身を守る力をつけさせたいものですね。
●子どもと交わしたい「自分を守るための9つの約束」
最後に、日々の行動について子どもと交わしておきたい約束について教えていただきました。
■自分を守るための9つの約束
(1)「危ない!」と感じたらすぐに逃げよう。
(2)嫌なことをされそうになったら大きな声を出そう。
(3)公園などでは一人で遊ばない。暗くなる前に帰ろう。
(4)知らない人についていかない。知らない人の車に乗らない。
(5)心配なことがあったら家族や先生に話して相談しよう。
(6)普段から近所の人とあいさつをかわそう。
(7)出かけるときは必ず行先と帰る時間を家族に伝えておこう。
(8)自分の名前、住所、電話番号を言えるようにしよう。でも、知らない人にはむやみに教えないこと。
(9)困った時の親の連絡先(仕事場、携帯電話の番号)を知っておこう。
上記は、1年かけて必ず守れるようにしてほしいとのこと。とっさに行動できるよう、大きな声を出す練習、住所や親の連絡先の暗唱などは、日頃から取り組んだほうがよさそうです。
また保護者は、こんな点にも注意したいそう。
「5、6歳児は探検や冒険が大好きです。約束をしていても、つい何かに夢中になって忘れてしまうことも多いでしょう。ですから、無意識に約束が守れるよう、繰り返しお話ししてください。
また、犯罪に遭う危険性はありながらも、すべての大人が信用できないわけではないことも、あわせて伝えましょう。防犯について話をすると、子どもは他人と接することを怖がってしまいがち。過剰に不安にならないよう、心配りをしてください」(同)
これらの約束は、紙に書いて壁に貼ったり、定期的にいっしょに読み上げたりするのもいいかもしれません。子ども任せにするのではなく、保護者もともに学ぶ気持ちも大切なのかもしれませんね。
(取材・執筆:有馬ゆえ)