子どもが安心して小学生になるための応援ブック。子どもが自身の身の安全を守る方法、そして幼児をもつ家庭、保育者、地域住民という見守り役の大人が身につけておくべきスキルがまとめてある。世田谷区のホームページ「子どもの危機回避プログラムを実施しています」より、冊子をダウンロードできる。
- トップページ >
- 生活・しつけ >
- 犯罪に巻き込まれやすい子とは? 再確認したい“子どもの危険”
生活・しつけ
年長 2019年5月14日の記事
犯罪に巻き込まれやすい子とは? 再確認したい“子どもの危険”
年長になったら教えたい、”防犯”の基本【第2回】
小学校に入学すると、登下校を始め、子どもだけで行動するタイミングが増えます。そのとき、子どもはどんな危険に接触する可能性があるのでしょうか? 保護者が知っておくべき、狙われやすい子、狙われやすい場所の特徴とは?『初めてのいってきます! 応援ブック』というパンフレットで子どもの危機回避について啓蒙している、世田谷区に取材しました。
●犯罪に巻き込まれやすい子どもの特徴とは?
子どもが一人で行動できるようになると、連れ去りなどの事件に巻き込まれないかという心配が出てきます。実は、犯罪者に狙われやすい子には特徴があるそう。担当者のコメントとともにまとめました。
■狙われやすい子の特徴
(1)一人歩き、一人遊びの子
「犯罪者がもっとも目を向けるのが、一人きりの子ども。道、公園、お店…。どんな場所でも、保護者がちょっとでも目を離せば、犯罪者にとっては『一人だけでいる子ども』なのです。基本的には、保護者は子どもを一人にしないこと、子どもから目を離さないこと、子どもに声がけをすること。逆に、子どもが二人以上いれば、犯罪者は『嫌だな』と思うもの。歩くとき、遊ぶときはだれかと一緒が大切です」
(2)周囲への注意力が散漫な子
「周囲への注意力が散漫な子どもは、自分の興味・関心に熱中するあまり周りが見えず、何かが仕掛けられていても避けきる力が弱いと見なされます。前後左右に気を配っていること、何かが起きたらきちんと向き合えることが大切です。保護者は、いつでも周囲を見て行動することを言い聞かせましょう。たとえお友だちと二人で歩いていても、ふざけあって周りに注意を払わなければ危険なのです」
(3)ボンヤリしている子ども
「同様にボンヤリしている子どもも、何かが起きたときに、素早く気づいて向き合う力が弱いと見なされます。心ここにあらずの子どもは、犯罪者に話しかけられやすいのです。お子さんに、周囲をしっかり見回す力をつけさせましょう。同時に、このタイプの子は、周囲の誰かがしっかり見守ることも大切。特に一人きりになってしまうときは、その行動範囲にどんな見守り役がいるか、保護者も考えてみてください」
(4)ハッキリしない子ども
「犯罪者は、自分できっちり何かを決められない子どもにも関心を向けます。そうした子は、人の言うことに動かされやすい子どもと考えられるからです。子どもに突然、何も言わずに襲いかかる犯罪者はほとんどいません。犯罪者と子どもの間には、何らかの『言葉』のやりとりがあります。その際、犯罪者は子どものあいまいな言葉や態度に巧みに入り込みます。嫌なことは嫌だと言える『キッパリした態度』を取れることが大事です」
●子どもが犯罪者に狙われやすい場所の特徴とは?
次に、子どもが犯罪者に狙われやすい場所の特徴を確認しましょう。こちらも、担当者の方のコメントとともにまとめました。
■犯罪者に狙われやすい場所の特徴
(1)車道と歩道が分かれていない、見通しの悪い道
「犯罪者が子どもを狙うのは、まちの“死角”です。その一つが、車道と歩道が分かれていなくて、しかも見通しの悪い場所。車道と歩道とが近ければ、車で子どもに近づきやすく、また、見通しが悪ければ、人目にもつきづらいからです」
(2)特に人気のない公園、人気のない駐車場
「公園や管理人のいない駐車場は、不特定の人が行き来しても許される空間。さらに、人の視線をさえぎる物に満ちてもいます。子どもを狙う犯罪者は、どこにどんな公園、駐車場があるのかを熟知しています。こうした場所での子どもの一人遊びは危ないと、子どもも保護者もしっかり気をつけておきましょう」
(3)人混みのあるまち
「実は、人混みのあるまちもまた、狙われやすい場所。これらの多くは繁華街ですが、犯罪者からすれば、人混みにまぎれて子どもに接近しやすく、同時に逃走しやすい空間です。彼らは巧みに言葉をかけて、その場で、あるいは都合の良い場所まで子どもの後をつけて、犯行に及びます。人と人とで混み合っているからこそ、保護者は子どもを見失わないようにしっかり目を配っておくことが大切です」
(4)灯りがあっても人気のない場所
「夜間は、灯りがあるかどうかよりも、人気があるかどうかがポイント。むしろ、灯りがなければ『犯罪者にとって都合の良い被害者』を見定めることができないので、少しの灯りは犯罪者にも好都合なのです。一方で、灯りがある場所は、一歩離れれば危険な『暗い場所』ということ。子どもの安全にとって望ましいのは、灯りも人気もある場所です。夜道を歩く際は、灯りがあって人気が絶えない道路、街並みを選びましょう」
(5)その他
「そのほかの注意したい場所は、以下の通り。子どもと歩く際は、少し遠回りでも、できるだけ避けて通りましょう」
・街路樹の手入れがなされていない
・曲がり角が多く、見通しの悪い道路が多い
・車がすれ違えないほど細い道が入り組んでいる
・道幅の違う道路が交差している
・脇道が多く、抜け道になるような道路が多い
・車や自転車が不法放置されている
・昼間に人気のないアパート、マンションが多い
樹木の手入れがなされていない、不法駐車が放置されているというのは、大人の関心が薄く、犯行に及びやすい場所だということ。また、見通しが悪かったり、細い道が入り組んでいたりする場所は、人目につきにくく、かつ犯罪者が逃げやすいという傾向があります。なぜ避けるべきなのかを合わせて考えると、覚えやすいですね。
●安全な地域にするため、周囲の大人が気に掛けるべきことは?
最後に、保護者が普段からできることがあれば、教えてください。
「多くの場合、危機には前兆があります。子どもの安全・安心を確保するためには、その前兆を見逃さないことが大切です。怪しい人、怪しい場所を見つけたら、周囲と情報共有しましょう。
例えば、犯罪者のほとんどは犯行までに3回以上の『下見』をすることが多いそうです。それは、実行の2~3日前かもしれませんし、1か月前かもしれません。時間帯もまちまちで、同じ人が下見をするとも限りません。
少なくとも、『ここ半年の間に3回以上、同じ人ではないけれど怪しい人、変なことを見かけた』というのは、立派な危機の“前兆”。園や学校の先生方、保護者の皆さんで情報を交換し、話しあいを持つことが大切です」
また、“怪しい場所”についても、気づいたらアクションを取ることが重要だそう。
「例えば、よく行く公園に、内部が見えにくい掃除用具入れがある、街路樹によって人目に付きづらい物陰ができているなど、防犯面で気になる箇所に気付いたら、ぜひ自治体の担当部署に相談してください。街灯が切れていたり、汚れて暗くなったりしている場合も同様です。
また、犯罪者は人の関心が薄い場所を巧みに見つけて利用します。そういった意味で、おうちの周りの清掃や整理整頓がなされていない家は狙われやすく、子どもの留守番中に空き巣が入り、たまたま子どもが被害にあってしまったというケースもあります。家の周りの整理整頓は、近隣住民に配慮しながら暮らしている証。犯罪抑制につながります」
こうした日々の積み重ねが、子どもの安全を作っていくのですね。一人ひとりの保護者が日々の「ちょっと変だな」に敏感になることで、子どもを取り囲む環境は変化していくのかもしれません。
(取材・執筆:有馬ゆえ)