大室産業医事務所 代表
産業医科大学医学部医学科卒業。産業医実務研修センター、ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医、医療法人社団同友会 産業保健部門を経て現職。専門は産業医学実務のほかメンタルヘルス対策、インフルエンザ対策、健康リスク低減など。
現在、日系大手企業や独立行政法人など約30社の産業医業務に従事。著書『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)。
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週末・その他
小学1年生 2019年4月5日の記事
4月は子どもにとってはもちろんのこと、ママにとっても変化の大きい時期。新たなママ友とSNSでつながる時期でもありますね。ストレスの負荷がかかりやすくなるこの時期を乗り切るための心得を、引き続き、メンタルヘルスの専門家でありSNSに詳しい産業医の大室正志先生に伺います。
第1回、第2回では、SNSはどうしてつい見たくなってしまうのか、また、SNSで気持ちをすり減らさないためにはどうすれば良いのかを伺いました。今回は、実際にママ友とSNSでつながるときの心得をお聞きしたいと思います。
まず、SNS上に溢れる、他人の素敵な投稿ついて。素直に「いいね」と思えるときもあれば、自分と比較してネガティブな感情を抱いてしまうときも、正直あると思います。これについてはどうとらえるのが正解なのでしょうか?
「ママ友が作ったかわいらしいお弁当や、子育て中とは思えないような綺麗でオシャレな部屋、コーディネートの数々…。つい見たくなってしまいますよね。それらの情報と程よく付き合うためには、『ああなりたい』と思うのはいいですが、『ああならなければいけない』とは思わないことが大切です。これはSNSだけでなく、実生活でも言えることです。
私は産業医という仕事柄、多くの社員の方と面談するのですが、その中にはママである方も多くいます。面談者ごとに相談事由はさまざまですが、『こうしなければならない』と考えることで悩んでしまう人が多い気がします。
特に仕事も家庭も両方優等生でないといけないと思ってしまいがちなのは、女性の方が多い印象です。そんなときに、キラキラした日常が綴られているSNSを見ると『私もこうしなくては』という思いがより強化され、辛くなってしまうのではないでしょうか」(大室先生)
SNSで他人の動向を知ることで「こうしなければ! こうならねば!」と自分を追い込んでしまうこともあるんですね…。そう思わないようにするために、具体的な有効策はありますか?
「今は、子育てに関しても科学的なエビデンスがある研究データが沢山あります。例えば、『親が仕事や子育てに費やす時間の長さは、子どものメンタルヘルスに影響を及ぼさない』や、『母親が休息やセルフケアのために時間を費やし、家事にさほど時間をとられていないことは、子どもにプラスの影響を及ぼす』など…。
今まで長いこと言われてきた、『母親は家にいるべき』『自分のことは我慢するべき』といったママ達に対する呪縛のような言葉に、根拠は無いとする研究データが数多くあるのです。
経済的負担がかかることなので、簡単には言えませんが、家事などアウトソース出来るものは上手にそれを活用したり、そもそも家事まで完璧にこなそうという固定概念を一旦捨てるなど、周りから言われてきた『こうあるべきだ』にとらわれ過ぎず、科学的データに基づいていろいろと試してみるといいのではないでしょうか?」(同)
お話を聞いて、ホッと肩の荷が下りるような気がします。呪縛が解かれ、心に余裕が生まれれば、他人のSNS投稿も客観的に見られるようになるかもしれませんね。
4月は特に環境の変化が大きい月ですが、そんな時だからこそ意識したほうがいいことはありますか?
「疲れが出てくると、ものの見方が一元的になってきます。認知のコストを下げるためにそのように脳が働いてしまうのですね。そのため、普段からものの見方・考え方が偏らないように意識しておくことと、4月は特に心が疲れやすい時期であると認識しておくといいのではないでしょうか」(同)
人間関係においても、一つ共通項があると仲良くなりやすいもの。ママ友をふくめ、人間関係は、いろいろなものの見方を知っておくとうまくいきやすいのですね。「全く別々の両方の意見を理解する必要はないですが、何がいいかは人によってそれぞれ違うため、どの視点に立てばいいのかを考えることが大切です」と大室先生。どちらがいいかではなく、バランス調整が大事だと頭に留めておきたいですね。
この時期は、ママ同士がSNSで新たにつながることもありますよね。過去に自分がした投稿を、新しくできたママ友に見られたくないな…ということもあると思うのですが、どうするのがいいでしょうか?
「過去の投稿を見られたくないという思いの根底には、過去の自分のキャラをこのコミュニティでは見せたくない、という思いがあるのではないでしょうか。それぞれの対人関係ごとにちょっとずつキャラが違うという側面は、多かれ少なかれ誰にでもあると思います。例えば、仕事先では非常に腰が低い人だけれど、友人の前では態度が大きいみたいなことってよくありますよね?
ただ、今やSNSは実社会と密接につながっています。Facebookでの私はこう、Instagramでの私はこう、とSNSのチャネルごとに完全に違うキャラになるのは、実際は無理があります。
本人にとっても、それぞれの場で見せる顔があまりに違い過ぎるのはしんどいもの。キャラを変えて使い分けるにしても、社会生活の中である程度許容できる範囲でしていったほうが辛くなりにくいですよ」(同)
さまざまな具体例を交えて、分かりやすくメンタルヘルスのバランスの取り方を教えてくださった大室先生。ご自身も俯瞰的視点を持つことを常に心がけているそうです。考え方が極端になってしまうと人は苦しくなりがちだと忘れずに、力を抜いて新生活を送りたいですね。
(取材・執筆:代 麻理子)
大室産業医事務所 代表
産業医科大学医学部医学科卒業。産業医実務研修センター、ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医、医療法人社団同友会 産業保健部門を経て現職。専門は産業医学実務のほかメンタルヘルス対策、インフルエンザ対策、健康リスク低減など。
現在、日系大手企業や独立行政法人など約30社の産業医業務に従事。著書『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)。
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