東京衛生病院 小児科医。6歳、4歳、2歳の3人の子どものママ。
日本小児科学会専門医。「子どもの心」相談医。専門は小児科一般、小児循環器。
筑波大学を卒業後、国立国際医療研究センター、大阪市立総合医療センターを経て、東京女子医科大学大学院で博士号を取得。第一子を出産後、東京衛生病院小児科へ。日々の外来診療に加え、医学的に根拠のある子どもの健康の情報をブログ、セミナーなどを通して発信。育児、仕事などで忙しいママが安心し、子育てが幸せに感じられるようにサポートしている。
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生活・しつけ
年長 2018年11月12日の記事
年明けの1~3月は、インフルエンザにかかりやすくなる時期。家庭では、どんな対策をすればいいの? もしも、子どもがインフルエンザにかかってしまったときの対処法は? ご自身が3人のお子さんのママでもある、東京衛生病院・小児科医の保田典子先生にお話しをうかがいました。
「冬休みが終わり、小学校での集団生活がはじまるとインフルエンザにかかりやすくなります」と保田先生。ウイルスへの抵抗力をアップするには、どうすればいいのでしょうか?
「年末年始は、クリスマスやお正月などのイベントが続くこともあり、食べ過ぎたり、夜更かししたりしがちなのではないでしょうか。そこで、年が明けたら、新学期がスタートするまでの数日の間に、生活リズムをリセットして体調を整えましょう。
例えば…
・朝ごはんをしっかり食べて栄養をとる
・毎日の入浴で体温を上げ、寝つきをよくする
・早寝で睡眠を充分にとり、疲れを回復させる
・手洗い・うがいでウイルスを寄せつけない
・こまめに水分補給をして新陳代謝をよくする
この5つは、インフルエンザが流行する冬に限らず、一年中、意識してほしいことです。普段から栄養・水分・休養をしっかりとることが、体の抵抗力アップにつながります」(保田先生)
年末年始は年越しの特別感も相まって、特に“早寝”については甘くなってしまいそうです。
「睡眠が足りないと疲労が溜まって抵抗力が落ち、ウイルスに感染しやすくなります。体調を整えるためにも、普段から睡眠をしっかりとりましょう。入浴には体温を上げて体を温めるだけでなく、寝つきがスムーズになり、睡眠の質を良くする効果も。
わが家の子どもたちは未就学児ですが、21時に布団に入り、絵本を読み聞かせをして21時半には消灯するのが習慣です。私は、就寝時刻については、厳しく声をかけています(笑)。でも、それぐらい睡眠をしっかりとることが健康な体をつくるために大切なのです」(同)
小学生の場合は、何時に寝るのがよいのでしょうか?
「22時までに就寝するのが理想ですが、何時に寝て、何時間睡眠をとるのがよいのかは、子どもによって違います。21~22時に寝ないと疲れやすい子もいれば、22~23時に寝ても元気な子もいます。
睡眠が足りているかどうかは、お子さんの様子を見てください。たとえば、月曜日に元気があったのに、木曜日、金曜日と週末に向けて疲れやすくなるのであれば、睡眠時間が足りていない可能性があるので、寝る時間を早めたいですね」(同)
また、「インフルエンザウイルスは乾燥したところで増えやすい」と保田先生。
「帰宅時にうがいをすること、水分をこまめに摂ることで、喉の潤いを保つことができます。うがいは、20秒以上するのがいいといわれますが、毎回、そんなに長くするのは大変だと思いますので、普段からちょっと長めにうがいすることを意識できるといいですね」(同)
水分は、血液やリンパ液のなどの成分になり、栄養素を全身に届けるために欠かせないもの。水分をこまめにとる習慣をつけておくと、体調も整うそう。
「夏の熱中症対策のためだけではなく、1年を通して水分を意識的に摂るようにしてください。水分をしっかり摂り、おしっこで老廃物を排泄することで、新陳代謝をよくすることができます。わが家の子どもたちは、1年中、麦茶で水分補給をしていますよ」(同)
インフルエンザを防ぐための手洗いのポイントはどうでしょうか。
「手を水で洗うだけでは、ウイルスが残りやすいので、石けん、ハンドソープで手洗いをして、清潔なタオルでしっかり水分を拭きましょう。手についたウイルスが食事のときに口から入ることがあるので、帰宅時や食前は、より念入りに手洗いするといいですね」(同)
冬に流行するノロウイルスについても、手洗いが効果的とのこと。ノロウイルスは感染者の便、おう吐物にいるので、トイレ後もしっかりとした手洗いが重要だそうです。
子どものインフルエンザに早く気づくためには、どうすればいいのでしょうか? また、インフルエンザの検査を受けたい場合は、いつ病院に行くのがいいのでしょうか?
「インフルエンザは風邪よりも症状が重く、倦怠感が出ます。お子さんの様子を見て、だるそうにしている、咳や鼻水が出ている、食事や水分が摂れないなどの心配な症状があれば、体温を計り、熱が出た時刻を把握してください(38℃の熱が20時に出たなど)。
インフルエンザの検査を受ける場合、受診のタイミングは発症(発熱)してから半日(12時間)経ってからです。たとえば、朝6時に熱が出て3時間後の9時に受診して検査を受けても、陰性の結果が出ることがあります。
受診の際、何度の熱が、何時から出たかを医師に伝えることで、インフルエンザの検査をするかどうかを判断しやすくなります。また、抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に投与を開始するのが望ましいので、“熱が出てから12~24時間まで”に受診をし、医師に診断してもらうのがよいでしょう。
ただし、心配な症状(けいれん、異常行動、水分が摂れない、咳で眠れない、呼吸困難など)が出ていれば、早めに受診をしてください」(同)
子どもがインフルエンザになってしまった場合、家庭では何をすればいいでしょうか?
「まずは水分補給をすること、安静にして睡眠をとることが大切です。水分は水かお茶、脱水を防ぐためには、スポーツ飲料やドラッグストアなどでも売っている経口補水液を飲んでもいいでしょう。
子どもが嫌がらなければ、氷枕などで首の後ろや脇の下を冷やしてあげます。また、鼻水にウイルスがいるので、鼻水が出たらすすらずにティッシュでかみ、ゴミ箱にすぐ捨ててください。のどが乾燥しないよう、加湿器などで寝室の湿度を上げるのもいいですね。
まれに、インフルエンザによって異常行動(突然部屋を出ようとする、ベランダから飛び降りようとする、興奮状態になるなど)を起こすケースもあります。インフルエンザと診断されてから2日間は、お子さんを1人にしないで見守るようにしましょう」(同)
ちなみに、インフルエンザの出席停止期間について、学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」とされています。体を回復させて、周囲に感染を広げないためには、これをきちんと守りたいですね。
子どものインフルエンザを防ぐためには、まず普段から生活リズムを整えてウイルスへの抵抗力を上げておくこと。そして、もしもインフルエンザにかかってしまったら、安静にして早く回復できるようにしたいですね。
(取材・執筆:掛川ゆり)
東京衛生病院 小児科医。6歳、4歳、2歳の3人の子どものママ。
日本小児科学会専門医。「子どもの心」相談医。専門は小児科一般、小児循環器。
筑波大学を卒業後、国立国際医療研究センター、大阪市立総合医療センターを経て、東京女子医科大学大学院で博士号を取得。第一子を出産後、東京衛生病院小児科へ。日々の外来診療に加え、医学的に根拠のある子どもの健康の情報をブログ、セミナーなどを通して発信。育児、仕事などで忙しいママが安心し、子育てが幸せに感じられるようにサポートしている。
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