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週末・その他
年長 2017年9月15日の記事
ランドセルができて今年で130年。改めて歴史を振り返ってみた
今では小学生の登校に欠かせないランドセルですが、そもそもいつ頃から使われるようになったのでしょうか? またランドセルがこの形になった起源は? ランドセルの歴史について、ランドセル工業会会長で株式会社村瀬鞄行代表の林州代さんにお話を伺いました。
明治時代は、セレブな家庭の子どもが持っていた!
ランドセルが使われだしたのは明治20年で、今年でちょうど130年。当時の総理大臣であった伊藤博文が、学習院小学校に入学した大正天皇(当時は皇太子)に、箱型の通学かばんを献上したことが、ランドセルの始まりと言われています。
「当時学習院に通っていたのは、裕福な家庭の子どもたちでした。送り迎えをしてもらい、お付きの人が荷物持ちをしていましたが、それではいけないと『自分の勉強道具は自分で持つ』という方針が学校から打ち出されたそうです。そこで、背中に背負い両手が空くほうが安心だろうと通学かばんとして注目されたのが、当時ヨーロッパの軍隊で軍人が持っていた背嚢(はいのう)という箱型のかばん。背嚢がオランダ語で『ランセル』ということが、名前の由来です」(林さん)
昭和の初め頃までは、木炭屋、お米屋、呉服屋など当時の上流家庭、今で言う『セレブ家庭の子』が持っていたかばんだったそうで、その使用率は1割程度。一般家庭の子は、風呂敷や、白い帆布の斜めがけのバッグで登校することが多かったようです。
「一般的に広まったのは戦後の昭和20〜30年。名古屋では江戸時代の馬具職人がかばん作りを始めたりと、各地で時代の移り変わりとともにかばん職人が増えて、ランドセルが多く作られ始めました」
昭和20年代には、今と同じ牛革のランドセルが作られ、写真のように野球やお花の絵が入ったおしゃれなデザインも登場。この形は「学習院型ランドセル」と呼ばれ、100年以上経過しても、基本的なスタイルは変わらず受け継がれているというから驚きです。
クラリーノの登場にサイズ論争。どんどん使いやすさがアップ
「学習院型ランドセル」という箱型の形状は変わらないものの、素材は進化を続けるランドセル。昭和39年には、クラレから人工皮革クラリーノが誕生。昭和42年頃から、ランドセルの素材として取り入れられます。
「革に比べると、とにかく軽くて丈夫なクラリーノは、子供が背負うランドセルにぴったりでした。ランドセルの素材は試行錯誤が繰り返されていて、ブリキのランドセルや、戦争で物が不足した時代は紙のランドセルが作られたことも。丈夫で長持ちするという点で牛革が定着したのですが、現在ではクラリーノの割合が高くなっています。クラリーノの誕生は大きな進化でしたね」
また、ランドセルのサイズも、時代によって大きく変化しています。
「昔の教科書はA5判ぐらいの小さなサイズだったんです。その教科書が入れば十分だったので、昭和の前半までのランドセルは今の3分の2ぐらいのサイズで、厚みもありませんでした。ところが昭和52年、突然教科書のサイズが大きくなることに。今のように情報が早くないので、メーカーがその年度のランドセルを作ってから教科書のサイズ変更が分かったこともあり、ランドセル業界にとっては一大事でした。
平成元年頃には、教科書に加えて、音楽のワークブックや地図帳などの副教材のサイズが大きくなることが判明。ランドセルはさらに大きくなり、平成10年には、ランドセル工業会がいわゆるA4サイズを標準サイズと定めました。現在はほぼすべてのランドセルがA4サイズになり、マチもたっぷり。昔と比べてかなりの大容量になりましたね」
素材、サイズとどんどん進化を続け、今では多少乱暴に扱っても壊れにくく、6年間しっかり型くずれしない丈夫なランドセルが一般的に。革も1枚コーティングがされているような状態なので、雨に濡れてもさっと拭くだけでOK、しわになることもありません。長い歴史の中で改良されて、使いやすさがどんどんアップしているんですね。
イオンの24色ランドセルから、カラーランドセル時代が到来!
そして、最近の大きな転換期といえば、カラーランドセルの登場。平成13年に
イオンが24色ランドセルを始めてから、各メーカーがこぞってカラーランドセルを作り始めました。
「これまで黒か赤の2択だったのが、カラーの選択肢が大きく増えました。ピンクやエメラルドなどこれまでにない色や、刺繍、キラキラの装飾なども付いてどんどん華やかに。ランドセル選びが盛り上がるようになりましたね。
特に女の子はおしゃれ感覚でランドセルを選ぶようになり、人気の色やデザインも、その年ごとに変わるようになりました。例えばディズニープリンセスの影響で突然、水色やパープルが人気カラーになった年も。一方、男の子は黒を選ぶ方が多いです。ステッチの色などで差別化したデザインが増えています」(同)
カラーバリエーションや種類が増えたことで、「他人とは違うものを」「この子の一番を選んであげたい」と意気込む親御さんや、おじいちゃん・おばあちゃんが多いからか、いわゆる「ラン活」も激化。10〜20年前は、1月の成人の日と、2月の建国記念日が1年でランドセルが一番売れる日と言われていたそうですが、今年のピークは8月のお盆辺り、さらに5月の連休には決めてしまう人もいて、購入時期はどんどん早まっているそうです。
今では当たり前のように目にするランドセルですが、今に至るにはさまざまな歴史が。日本の文化として世界から注目を集めるのも納得ですね。
(取材・執筆:野々山幸)
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