現在放送大学客員准教授/関西大学・昭和女子大学非常勤講師、博士(情報学)。静岡県の公立小学校教諭、関西大学初等部教諭/中等部兼務を経て現職。図書館教育、情報教育に取り組み、著書を多数執筆。教育用情報システムの開発・研究にも複数参加している。現在大学では「司書教諭資格取得科目」を担当。
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学校・まなび
小学1年生 2018年7月5日の記事
夏休みの宿題の大きな課題といえば「読書感想文」。前回は、読書感想文用の本の選び方と、選んだ本をまずは親が音読してあげることで理解が深まるということを教えてもらいました。今回は、具体的な感想文の書き方と親ができるサポートについて、引き続き、元小学校の教員であり、大学の客員准教授として活躍されている塩谷先生に教えていただきます。
読書感想文用の本が決まり、親が読み聞かせをしたら、子どもにはじめの感想を聞き出しましょうと塩谷先生。
「『どうしてこの本を選んだの?』『気に入ったところは?』など、お母さんが子どもに質問してみましょう。大切なのはどのような質問をするかではなく、返ってきた内容をすべてメモしておくことです。このメモが、後でとっても生きてきます」(塩谷先生)
いよいよ子どもが自分で読む番ですね。
「そうです。最初から自分では読めないけれど、一度耳で聞いて内容を理解したものなら、子どもは読んでいくことができます。『次は自分でも読んでみようか』と声をかけると、指を添えながら、声に出しながら、たどたどしくても自分で読んでいくでしょう。この体験が重要です」(同)
これで「読書感想文の本を読んだ」ところまで進んだわけですね。
自分で本を読み終えた子どもからは、きっといろいろな感想が出てきますね。
「『物語』であれば、おそらく『おもしろかった』とか『ちょっと怖かった』といった感情の言葉が出てくるでしょう。『説明的な文章』であれば、『このページのことは知ってたよ』とか『これは初めて知った』などと自分の知識の話題が出てくるかもしれません。
そのような言葉が出てきたら、『本当だね、そういえば◯◯が幼稚園の頃にも同じようなことがあったよね』とか『前に一緒にセミを捕まえにいったとき、こんな失敗したよね』というように、子ども自身に関係する体験と本の内容を繋げてあげること。これをぜひやってみてください」(同)
本の内容について、子どもとたくさんやりとりをするのですね。
「最初に好きなジャンルの本を選ばせた理由は、好きなことであれば本の内容が自分の体験に結びつきやすいからです。とはいえ、なかなか感想が出てこないこともあります。本を読んで感じたことはたくさんあるのですが、子どもはまだまだ語彙が少ないので、感情を言語化することが難しいのです。そんな言葉にはできない部分を、親が引き出してあげることがポイントです。
『誰が出てきた?』『どんなことが起きた?』『この本の中で、初めて知ったことはなに?』というように、親御さんからいろいろ尋ねてみてください。そして、子どもが言ったことは、すべてそのままメモしておきます」(同)
なるほど、たくさん溜まったメモをつなげていけば、読書感想文になるということでしょうか!
「その通りです。メモがたくさん溜まるほど、感想文の内容が色濃くなります」(同)
いよいよ感想文の作成に入るわけですが、親御さん自身も作文が苦手で子どもにどう教えたらいいのかわからないというケースも多いと思います。具体的にはどのように進めていけばいいのでしょうか?
「読書感想文は、大きくわけて次の3つのまとまりから構成されます。
・この本を選んだ理由(動機)
・本の感想(読んだときに感じたこと、どんな点がうれしかったか、初めて知ったことなど)
・自分の体験に絡めた感想
おそらく、分量でいうと800文字くらいだと思います。原稿用紙2枚分。1年生の段階で800字なんて書いたことがないですよね。だからこそ、お母さんがとったメモを元に3つのまとまりに分類し、文章にしてあげればいいのです。ただし、親の言葉に変換してしまってはダメですよ。あくまでも、子どもから出てきた言葉そのものを組み立ててあげることです」(同)
子どもがどんなことを言ったか忘れていたら、最初のメモを読んで思い出させてあげたらいいですね。
「大事なのは、親の思うとおりに書かせようとしないこと。できあがった文章を読み上げてみると、少し詰まる箇所やおかしいなという点もあると思います。そこを再びお母さんと一緒に考えながら、手直ししていきます。
ここでワンポイントです。メモの中でコレ!というとってもいい言葉を選んで、感想文の最後に書いてあげると、文の終わりがしっかりと締まります」(同)
こうしてできあがった感想文を声に出して読むと、まるで自分が教科書に載っているような文章を作ったようですごく感動しますね!
こうしてお話を伺うと、読書感想文はすぐにできる宿題ではないなと感じました。何日も時間をかけて仕上げていくと、より内容の濃いものが書けるのですね。
「図書館に行って本を選ぶのに1日、おうちの人が音読するのに1日、子どもが音読するのに1日というように、ゆっくりでいいので楽しみながら取り組んでほしいですね。読書感想文の宿題を通して、本を読んで感じたことを文章にすることってなんて楽しいんだろう!と感じてほしいです。それから、作文の文章は日常会話とはちょっと違いますよね。話し言葉と読み書きの言葉は違うという点に気づいてほしいという狙いもあります」(同)
具体的にはどういうことでしょうか?
「たとえば『僕この本読んで、すっごくおもしろかった!』ではなく『僕はこの本を読んで、とてもおもしろかったです』というように、話し言葉から書き言葉に変えて文章にするということです。今後、みんなの前で発表する際にも必要な力となります。もちろん最初からはうまく直せないので、親子でのやり取りを通して、習得していけたらいいと思います。
文章が完成したら、最後に清書をして完成です。この清書をするという行為も、文章を推敲するという大切な経験となりますよ」(同)
小学校によっては、一年生では読書感想文が宿題に出されないところもあるようです。現に、筆者の息子は2年生ですが、昨年は読書感想文の宿題はありませんでした。けれど、塩谷先生にアドバイスしてもらった方法が、毎週末の「あのね帳」という作文の宿題にとても役立ちました。
「いきなり文章を書くことは大人でも難しいです。まずは感想や自分の想いを口に出して、親がメモをし、少しずつ組み立てていくという手順で練習していくと、次第に自分だけの力で文章が書けるようになります。もしも、夏休みの宿題に読書感想文がない場合も、今回お伝えした文章の書き方を覚えておいて子どもと一緒に取り組んでいけば、この先の文章力向上につながりますよ」(同)
読書感想文は、単に本を読んで感想を書くだけではない、それ以上の大きな意味を持つ大切な宿題であることがわかりました。この夏休みは、ぜひゆっくりと時間をかけて、親子で楽しみながら読書感想文の宿題に取り組んでみてはいかがですか?
(取材・執筆:水谷映美)
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