1958年生まれ。本名 杉山 桂一。
公立小学校で23年間教師を務め、退職後は、全国各地のPTAや市町村の教育講演、本の執筆に精力的に取り組んでいる。
メールマガジン「親力で決まる子供の将来」は新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛され、教育系メルマガとしては最大規模を誇る。
著書多数。
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生活・しつけ
小学1年生 2017年3月6日の記事
歯科医の待合い室でこういう情景を見ました。
あるお母さんが2人の女の子を連れて来ていました。
上の子が3,4歳で下の子が2,3歳です。
お母さんは絵本を2人に読み聞かせていました。
でも、読み聞かせをしながら叱っているのです。
「○○ちゃん、モゾモゾしないで聞かないとダメでしょ」
「ほらほら、お姉ちゃんの方に寄っちゃダメでしょ」
「□□ちゃん、そこを持っちゃうと○○ちゃんに見えないでしょ」
「○○ちゃん、ちゃんと座らなきゃダメでしょ。なんでちゃんと座ってられないの!」
こういう感じで、読み聞かせをしながらずっと叱っているものですから、近くにいた私までも落ち着かない気持ちになりました。
これでは、せっかくの絵本が楽しめないと思います。
それどころか、絵本自体が嫌いになってしまうのではないかと心配になります。
また、あるときは、新幹線の中でお母さんが小学3年生くらいの男の子をずっと叱っているのを見ました。
「なんで、バッグを締めないの。ちゃんと締めなきゃダメでしょ。中の物が落ちちゃうでしょ」
「静かに座ってなきゃダメでしょ」
「お行儀よくするって言ったよね。○○君、もう新幹線乗れないね。かわいそうだね」
そして、子どもが「喉乾いた~」と言ったとき、「もう連れてこないよ!」ときつい口調で言いました。
そうしたら、子どもが床をドンと踏み鳴らしました。
それで、また、お母さんが「なにやってんの!」と叱りました。
私は近くで見ていて切なくなりました。
子どもが床を踏み鳴らす気持ちが痛いほどわかったからです。
どの例でも、親たちは子どもをしつけるつもりで言っているのです。
でも、「また○○してない」「○○しなきゃダメでしょ」「なんで○○しないの」などの否定的かつ感情的な言い方で言われると、誰でも決していい気持ちはしません。
それは大人でも子どもでも同じことです。
こういう言い方をされると、ひとは素直に相手の言うことを聞くことができなくなります。
たとえ頭では正しいとわかっても、素直に受け入れることができないのです。
それどころか、かえって反発したくなってしまうものなのです。
そして、ことはそれだけで終わりません。
「また片づけてない。片づけなきゃダメでしょ」など、日常的に否定的な言い方で叱られることが多いと、子どもにとって非常に大きな弊害が生じてきます。
その弊害はざっと数えても10種類はあります。
中でも一番問題なのは、子どもが自分に自信を持てなくなることです。
言い換えると自己肯定感が持てなくなるということです。
ぼくってダメだな
私ってダメな子だ
どうせオレなんかダメだよ
何をやってもダメだよ
できないよ
がんばれないよ
こういう気持ちが出てきてしまうのです。
もちろん、親は「あなたはダメだ」と言っているつもりはありません。
その子の人格や能力を否定するような言い方をしているつもりはないのです。
ただ、1つ1つの物事や行動について言っているだけです。
いろいろな本にも、「子どもの人格を否定してはいけません。1つ1つの物事や行動について叱りなさい」などと書いてあります。
だから、そうしているのです。
でも、いくら物事や行動についてでも、それが度重なれば結果は同じなのです。
いくら物事や行動についてでも、「また○○してない」「○○しなきゃダメでしょ」「なんで○○しないの」などと否定的に言われ続けていれば、結論は「ぼくはダメだな」ということになってしまうのです。
これは当たり前のことです。
なぜなら、そう言われ続けているのは自分以外の何者でもないのですから。
人格否定の言葉はボクシングで言えばメガトンパンチです。
ひとは、これを1回浴びただけでも深く傷つき、立ち上がれなくなってしまいます。
そして、物事や行動についての否定的な言い方はボクシングで言えばジャブです。
1回2回ならともかく、これを繰り返し浴びていれば、浴びるほどに傷は深くなり最後には立ち上がれなくなってしまうものなのです。
さすがに、子どもの人格否定をする親は少ないと言えます。
でも、物事や行動についての否定的な言い方は、かなりの親が平気で日常的に使っています。
中には口癖になっている親もいます。
ほとんどの親が、その弊害について無自覚なのです。
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