松尾七重(まつお ななえ)
千葉大学教育学部教授・副学部長。
専門は数学教育学。図形の概念形成や幼児期からの算数教育についての研究を長年行っている。
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学校・まなび
年長 2017年2月10日の記事
前回は、図形の感覚を育てるためには、小さいころから図形を体験できる遊びをたくさん経験することが大切だということを、千葉大学教育学部の松尾七重先生にうかがいました。では、実際に家庭で図形遊びをさせるとき、親はどう関わればよいのでしょう。
●平面や立体など、様々な遊びを体験しましょう
図形の感覚を育てるためには、まずどのような遊びを体験するといいのでしょう。おすすめの道具などはありますか?
松尾 「パズルのようにいろいろな図形を組み合わせる遊びは、比較的取り組みやすいのではないでしょうか。道具は市販のものでも何でもいいでしょう。
ただ、わざわざ購入しなくても、前回例に挙げたような三角形のピースで、いろいろな形を作るという遊びは、色画用紙やカラー方眼紙などを切って直角二等辺三角形を半分に切り、そのまた半分に……と切っていき、様々な大きさのピースを作っていってもよいでしょう。
また、積み木・ブロックなど、立体での遊びもたくさん経験させてください」
積み木というと、もっと小さい子の遊ぶものというイメージがありますが……。
松尾 「年長くらいの子は、ただ積んで遊ぶだけだと飽きてきてしまうでしょう。その場合『できるだけ高く積もう』とか『同じ高さにしてみよう』などと、課題を与えるとよいと思います。
高く積むときは、なるべく下の部分に面積の広いピースを積み重ねていかなくては倒れてしまいます。そんなことを学ぶのも、とても重要です。
また、年長さんになると、ただ紙を切って単純な形を作るだけでは物足りなくなってきます。同じ形で、大きさの違う三角形や四角形を狭い順につなぎ合わせて七夕飾りを作るといったように、図形を使った作品づくりを楽しむのもよいと思います」
●遊んだ後の片づけも、図形体験のひとつ
松尾 「遊ぶだけでなく、片づけも図形を体験するうえで有効です。例えば積み木やパズルで遊んだ後は、ケースにきちんとしまうことをするとよいでしょう。同じ形をまとめたり、空いたスペースにどの形がはまるか考えたりする力が身につきます。
食事の支度の際に材料を切ることも、立体の断面図をイメージするという図形の体験につながります。『こういうふうに切ったら、どんな形になると思う?』などと問いかけて、子どもと一緒に料理をするのもひとつの方法です。
このように、毎日の生活の中でできる図形体験はほかにもあると思います。ぜひ、探してみてください」
料理や片づけが、算数の図形につながるなんて、今まであまり考えませんでした。生活体験も重要なのですね。
●「できる」という気持ちが興味につながる
今までパズルや積み木など、図形に関する遊びをやってこなかった子や、あまり興味のない子は、どうすればいいでしょう?
松尾 「その場合は親御さんも一緒に遊んであげてください。例えばパズルなどを『一緒にやってみようか?』『どっちが早くできるか競争しよう』などと誘って楽しみましょう。
自由に形を作る遊びは、慣れないうちは、『何を作ってもいいよ』と言われても、意外に難しくてできないものです。最初は『まね』でいいんです。あまり経験のない子や苦手意識のある子の場合、初めのうちは親御さんやお手本のまねをして作り、できるんだという気持ちを持たせることが大事です。
そして『よくできたね。じゃあ、今度はこうしてみたら?』と、ヒントを与えてアレンジできるようにしましょう。そこからまた形を変えていくことで、どんどん遊びが広がっていきます。
いずれにしても、お勉強のように無理にやらせるのでは本末転倒になります。まずは楽しく『遊ぶ』ことが第一です。楽しみながら考えて、図形に興味を持てるようにしてください」
お話をうかがっていると、図形は楽しそうだなと親自身も思えるようになりました。子どもにもその楽しさを伝えたいと思います。
松尾先生、ありがとうございました。
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松尾七重(まつお ななえ)
千葉大学教育学部教授・副学部長。
専門は数学教育学。図形の概念形成や幼児期からの算数教育についての研究を長年行っている。
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