1958年生まれ。本名 杉山 桂一。
公立小学校で23年間教師を務め、退職後は、全国各地のPTAや市町村の教育講演、本の執筆に精力的に取り組んでいる。
メールマガジン「親力で決まる子供の将来」は新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛され、教育系メルマガとしては最大規模を誇る。
著書多数。
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生活・しつけ
小学1年生 2016年9月12日の記事
●オリンピックの感動の陰で気がかりなこと
この夏はリオデジャネイロ・オリンピックが大いに盛り上がりました。
勝っても負けても全力でがんばる選手たちの姿は本当にすばらしかったですね。
私も「自分の生活と仕事で、自分のオリンピックをがんばろう」と大きなエネルギーをもらいました。
ということで、オリンピックに感動しつつも、私の立場から一つ気がかりなことがあるので指摘しておきたいと思います。
3歳のときから親子で約束して、オリンピックを目指してがんばった…
親子で毎日5時間の猛練習を続けた。どんなに泣いてもやめさせなかった…
その競技の経験者だった父親がマンツーマンで厳しく鍛えた…
若い頃に挫折した親の願いを引き継いで、夢を託された子どもが幾多の試練を乗り越えて…
●実は失敗例の方がはるかに多い
期間中、このような美しい物語がメディアに溢れました。
それを見た人々はこう思ったはずです。
やはり、これくらいのことをしないと、オリンピックには出られないんだ。
小さいときからひとつの道を究め続けることが必要なんだ。
子どもが何と言おうとも、親が強い気持ちで引っ張っていかないといけないんだ。
でも、これはある意味とても危険な考え方でもあります。
美しい物語に魅せられているときは、その危険性が見えないのですが。
はっきり言いますが、これによって成功した人たちはごく一部であり、これらの人たちは非常に希なケースなのです。
その陰にどれほどの失敗例があるかわかりませんが、それらはメディアに取りあげられることはありません。
●ある勘違いお父さんの例
私もいくつか知っていますが、典型的なのは次のAさんの例です。
Aさんは若い頃にサッカーが得意で地元ではかなり有名でした。
でも、全国的な一流選手というほどではなくプロにもなれませんでした。
それで、「子どもはプロスポーツ選手にしたい。できたらプロサッカー選手に」とずっと思っていたそうです。
それで、息子が幼稚園の年少のころから、自宅の庭でウサギ飛びや片足飛びをやらせるなどして鍛え始めました。
小学生になってからは、当然のごとく息子をサッカースポーツ少年団に入れましたし、休日には父と子の特訓もおこないました。
ところが、息子は絵を描いたり工作をしたりするのが好きで、サッカーをがんばろうという気はありませんでした。
お父さんはそんな息子が不満で、怒ってばかりいました。
●親子関係の崩壊
あるとき息子の図工作品が大きな賞を受賞しました。
ところが、Aさんは「絵や工作ばかりしているから軟弱になるんだ!」と言って、その賞状を破いてしまいました。
その後もいろいろあり……。
息子はもう大人になっていますが、お父さんとは口もききません。
お父さんのことは「一緒の空気を吸うのもイヤ」というほど大嫌いです。
今は回復していますが、精神的に病んでいた時期もあり、非常に苦しい青春を生きてきました。
自分の子育てを振り返り、今そのお父さんは反省しています。
息子の好きなことや得意なことは認めようとせず、自分の気持ちだけを押しつけた結果がこれなのです。
●親による過干渉が子どもの人生に与える悪影響
Aさん親子だけではありません。
子どもの頃に、スポーツ、習い事、勉強などにおいて親による過干渉を受けた結果、成人してからも精神的なダメージを引きずるケースがたくさんあります。
自分の人生が親によって奪われた、自分の人生の意味が見いだせない、自分が何をすればいいかわからない、何のために生きるのかわからない、何もやる気になれない、こういった状態に陥っている人たちがたくさんいるのです。
引きこもり、リストカット、過食、摂食障害、鬱病などになる人たちもいます。
●勘違いお父さん・お母さんにならないで
この夏、このAさんのような勘違いお父さん・お母さんが増えないかと心配です。
最近見たテレビ番組でも、ある町の卓球教室が急に満員になったとか、バドミントンを習う人が増えたとか、いろいろ紹介していました。
大人が自分の意思でやり始めるのなら何も問題はありません。
でも、親が子どもにやらせるという場合は気をつけて欲しいと思います。
○○がブームだからとか、オリンピックで興味を持ったからなどではなく、子ども本人の気持ちと資質を大事にしてください。
子ども本人の気持ちや資質を考えず、一方的に自分の夢を子どもに託すなどというのは特にいけません。
それは子どもの人生を奪うことです。
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